ごみ処理施設管理費問題

【視点】ごみ処理施設の運営管理費、なぜ17年で3倍近くに膨れ上がったのか?

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屋久島町「人件費など諸費用の高騰」 日本の賃金、1991~2023年で「1.02倍」なのに?

町長選1年半~2年半後に大幅増額

2008年度 6900万円  2025年度 1億8900万円

屋久島町役場=屋久島ポスト撮影

屋久島町のごみ処理施設の運営管理費が、いつの間にか3倍近くに増額されていることが、屋久島ポストの取材でわかった。

2008年度は6900万円だったが、2025年度(11月~2026年10月)は1億8900円になり、その増加額は1億2000万円。この17年間で、実に2.7倍にも増えたことになる。

年1億2000万円の増額は、人口1万1000人の屋久島町にとっては大きな負担だ。10年で12億円になり、さらにもう10年で24億円に。新しい役場庁舎の総事業費が24億円だったことを考えると、なぜこんなに運営管理費が膨れ上がったのかと不思議でならない。

運営管理費の大半は人件費

そこで、ごみ処理施設を所管する町生活環境課の担当者に尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「人件費などの諸費用が高騰しているためです」

2024年度までの運営管理費の内訳をみると、その9割近くを人件費が占めている。そうなると、増額分の大半は人件費ということになる。

町が公開した新ごみ処理施設の完成イメージ=町報やくしま 2023年2月号より

賃金、米英は約3倍増  なぜ日本は1.02倍なのに増額?

それでは、日本国内の人件費はどれほど上がったのか?

内閣官房「新しい資本主義実現本部事務局」が2025年4月に出した資料をみると、1991~2023年における「G7各国の賃金の推移」というグラフがあった。それによると、米国は「2.88倍」、英国は「2.87倍」と、それぞれが3倍近くに上昇。その一方、なんと日本は「1.02倍」で、32年間にわたって賃金がほぼ同じだという。

内閣官房「新しい資本主義実現本部事務局」が出した資料に掲載された「G7各国の賃金の推移」グラフ


こうなると、生活環境課の職員が言った「人件費などの諸費用が高騰しているため」という説明を、「はい、そうですか」と信じるわけにはいかなくなる。

そこで2008~2025年度の17年間で、3倍近くにまで増えた運営管理費の推移を以下でみてみたい(※金額は概数、町が開示した関係文書を参考)。

屋久島町ごみ処理施設・運営管理費 推移

2008年度  6900万円
2009年度  9500万円(2600万円増)
2010年度  9500万円
2011年度  9500万円
2012年度  9400万円(100万円減)
2013年度 1億0100万円(700万円増)
2014年度 1億2200万円(2100万円増)
2015年度 1億2200万円
2016年度 1億2200万円
2017年度 1億2300万円(100万円増)
2018年度 1億2500万円(200万円増)
2019年度 1億2700万円(200万円増)
2020年度 1億3000万円(300万円増)
2021年度 1億3100万円(100万円増)
2022年度 1億3000万円(100万円減)
2023年度 1億3000万円
2024年度 1億3000万円
2025年度 1億8900万円(5900万円増)
(※2025年度は2025年11月~2026年10月)

町長選1年半以降に2600万円と2800万円の増額

上記の推移をみると、年々じわじわと増額されているのがわかる。そのなかでも特に目立つのは、①<2009年度・2600万円増>、②<2013~2014年度・計2800万円増>、③<2025年度・5900万円増>だ。

まず①は、2007年10月に旧2町の合併で屋久島町が誕生し、同年11月の町長選で前町長の日高十七郎氏が当選してから、1年半後に承認された2009年度の予算だ。

次の②は、2011年10月の町長選で現町長の荒木耕治氏が初当選してから、1年半~2年半後に承認された2013~2014年度の予算である。

この①と②については、日高前町長の当選から1年半後、荒木町長の当選から1年半~2年半後にそれぞれ増額されており、いずれも町長選から1年が経ったころに予算の増額が検討されたとみられる。

新ごみ処理施設、一気に前年度比5900万円増

そして最後の③は、2025年11月に新ごみ処理施設が本格稼働するにあたり、同年9月に運営管理業者と結んだ契約金額だ。前年度比で5900万円も増額され、さらに2008年度と比べると1億2000万円増となっており、単なる「人件費など諸費用の高騰」だけでは説明がつかない増加額である。

なぜ、屋久島町のごみ処理施設の運営管理費は、この17年間で3倍近くにまで膨れ上がったのか?

その理由を解き明かすためには、さらなる取材が必要になりそうだ。

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