マンション不法侵入

【特報】住居侵入で女性下着を物色、マンションの管理会社と元管理人を提訴/鹿児島ポスト

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鹿児島市のマンション管理人、留守宅にマスターキーで侵入して逮捕 → 被害夫妻、管理会社と元管理人に253万円の賠償請求

賃貸物件の合鍵を悪用した事件、全国で多発

【左】マンションの部屋で現場検証をする鹿児島県警の捜査員。扉が開いている押入れの中で女性の下着が物色された(2024年6月1日、被害者撮影)【右】鹿児島県警本部(Wikimedia Commons より)

 鹿児島市内のマンションで2024年6月、管理人の男がマスターキーを使って居住者の留守宅に侵入し、その部屋で暮らす女性の下着を物色したとして、住居侵入などの疑いで鹿児島県警に逮捕される事件が起きた。被害に遭った妻と夫は、事件後に別のマンションに転居したが、管理会社からは謝罪や補償はなく、約100世帯が入るマンションの住民たちには、事件があった事実も知らされることはなかった――。

 近年、賃貸物件の管理人などが合鍵やマスターキーを悪用し、留守宅に不法侵入する事件が多発している。2023年2月には熊本市内のアパートを管理する男が、合鍵で女子学生の部屋に侵入した容疑で逮捕。2022年7月にも、兵庫県尼崎市内の医師宅に盗み目的で侵入しようとしたとして、不動産会社に勤める社員の男が逮捕されており、賃貸物件を管理する各社では、合鍵などの管理を厳重にして、再発防止策を講じることが急務となっている。

被害夫妻、再発防止のために提訴
 だが、鹿児島市内の事件が発生した当時、マンションを管理する不動産会社「ロンフレ」(本社・宮崎県小林市)は、日常的にマスターキーを社員の管理人に持たせていた。管理人は自身の裁量でマスターキーを使うことができ、事件が発覚した際には、「水漏れの確認をしていた」と留守宅に入った理由を説明したという。

「管理会社からは、事件の報告や再発防止策の説明もなく、また同じ事件が起きるかもしれない」

 そう危惧した夫妻は2025年1月、マンションを管理するロンフレと元管理人(有罪判決で執行猶予中)を相手取り、慰謝料など約253万円の損害賠償を求める民事訴訟を提起。その第1回口頭弁論が3月5日、鹿児島地裁で開かれた。

マンションの管理人が持ち歩いていたマスターキー。写真下の「2015 New Master」と記載された鍵を使って被害者の部屋に侵入した(被害者に開示された事件記録より、※鍵の形状を伏せるために一部でモザイク加工をしています)

事件で転居「管理会社から謝罪や補償なし」
 訴状などによると、元管理人は2024年6月1日、マンションの全室に入れるマスターキーを使って、留守中の夫妻宅に侵入。部屋の押入れで妻の下着を物色していたところ、帰宅した夫妻に見つかり警察に通報され、鹿児島県警に住居侵入などの容疑で逮捕された。その後、夫妻は別のマンションに転居したが、管理会社からは謝罪や補償は何もなかった。

管理人の男が女性の下着を物色した押入れを調べる鹿児島県警の捜査員(2024年6月1日、被害者撮影)

 また、元管理人が同年8月に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受けたのち、夫妻の知人で同じマンションの元住民が、管理会社に「私の友人が事件に巻き込まれたことを、マンションの住民に報告する責任があるのではないか」と指摘。それに対し、管理会社は「(元管理人の)個人情報を守る必要があるので、住民に知らせることはできない」と伝えた。

 それらの状況を踏まえ夫妻は、管理会社から謝罪や補償がないうえ、事件の報告や再発防止策についての説明がマンションの住民になされていないことから、会社側が管理責任を果たしていないと主張。夫妻が負った精神的かつ経済的な損害を回復し、二度と同様の事件が起きないようにするために、損賠賠償請求訴訟を提起したとした。

管理会社、一定の賠償責任を認める
 夫妻の訴えに対し、管理会社「ロンフレ」は請求の棄却を求めて争う姿勢だが、雇用した社員などが第三者に与えた損害について、使用者が賠償責任を負うことを定めた民法715条(使用者責任)に基づいて、元管理人と連帯して一定の賠償責任があることは認めた。

 また、元管理人も請求の棄却を求めて争う姿勢で、好意を抱いた女性の部屋を見てみたいという気持ちで入室し、「下着が置いてあったことから、被告はこれに触れたが、すぐに元に戻している」と主張。下着を買い替えた費用の賠償責任は認めたが、慰謝料については「高額であり、適切な金額で判断されるべきである」としている。

鹿児島地方裁判所(裁判所ウェブサイトより)

■不動産会社「ロンフレ」のコメント
  弊社管理マンションに関する民事訴訟について御迷惑をおかけした入居者の方々には、深くお詫び申し上げます。鹿児島地方裁判所に係属している弊社管理マンションに関する民事訴訟については、管理会社としての責任について認めたうえで、今後の対応については、委任している弁護士にお任せしています。訴訟中につき、具体的な内容については、回答を控えさせていただきます。また、弊社としましては、今後同様の事態が生じないよう、対策を講じました。

被害者の部屋で現場検証をする鹿児島県警の捜査員(2024年6月1日、被害者撮影)

■賃貸物件の合鍵を悪用した主な事件

・2023年2月 女子学生の部屋に侵入
 熊本市の不動産会社に勤める社員の男が、会社が管理する同市内のアパートで暮らす女子学生の部屋に合鍵を使って侵入したとして、住居侵入の容疑で逮捕された。

・2022年7月 盗み目的で医師宅に侵入未遂
 大阪市の不動産会社に勤める社員の男が、兵庫県尼崎市内の医師宅に合鍵を使って侵入しようとしたとして、住居侵入未遂の容疑で逮捕された。社員の男はこの住宅の賃貸契約を担当しており、「盗み目的だった」と供述したという。

・2017年3月 合鍵200本を押収
 札幌市の大手不動産会社に勤める社員の男が、管理物件の合鍵を使って、盗み目的で入居者宅に侵入したとして逮捕された。警察は男の自宅から約200本の合鍵を押収した。

・2017年2月 女優宅に盗撮カメラを設置
 東京都内のマンション管理会社に勤める社員の男が、女優の工藤綾乃さんの自宅マンションの部屋に合鍵を使って侵入したとして、住居侵入の容疑で逮捕された。男は室内に盗撮用のカメラを設置していたが、工藤さんがカメラに気づいて警察に通報した。

・2016年5月 歌手 福山雅治さんのファンが侵入
 東京都内のマンションを管理する「コンシェルジェ」を務める女が、歌手の福山雅治さんと俳優の吹石一恵さん夫妻の自宅に合鍵で侵入したとして、住居侵入の容疑で逮捕された。女は福山さんのファンで、帰宅した吹石さんと鉢合わせになり、警察に通報された。

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