屋久島町議選2025

不正入札疑惑、公取委が問題視しても予算案丸呑みの不可解【御用議会の四年間】⑤/屋久島町議選2025

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入札業者、事前公表の予定価格15億円超で意図的に失格 → 残り1社が落札率99.5%で契約も議会は不問

新ごみ処理施設「競争のない競争入札」

屋久島町議会=2025年6月、屋久島ポスト撮影

 今年10月に竣工する屋久島町の新ごみ処理施設は、建設業者を決める入札の段階で、大きな疑惑を抱えていた。

 建設費の上限となる「予定価格」が事前公表されていたにもかかわらず、競争入札に参加した2社のうち1社が、予定価格を15億円上回る入札額を提示して意図的に失格。その結果、もう1社はどことも価格競争をしないまま、予定価格ぎりぎりの金額で落札していたのだ。

川崎技研、競争を放棄して失格
 問題の入札は2022年11月に行われ、川崎技研(本社・福岡市)とテスコ(本社・東京都千代田区)の2社が参加した。まず川崎技研は、事前公表された予定価格24億6100万円(税抜き)に対して、これを約15億上回る39億5000万円(同)を提示し、競争を放棄するかたちで失格。その一方でテスコは、予定価格とほぼ同じ24億4870万円(同)で入札し、落札率99.5%で建設委託業者に選ばれた。

町が公開した新ごみ処理施設の完成イメージ=町報やくしま 2023年2月号より

公取委「競争が働いたとは言い切れない」
 2023年1月以降、この「競争のない競争入札」について屋久島ポストが報じると、真辺真紀ら一部の町議が独自の調査に乗り出した。

 まず相談したのは、公共事業の談合などを調査する公正取引委員会だった。すると、独占禁止法などに関する相談を受け付ける官房総務課の担当者は、「競争が働いたとは言い切れない」と指摘。川崎技研の入札額は疑問だとして、「町は入札業者に対して、なぜ予定価格を超える入札をしたのか、事情を聴く必要がある」との見解を示した。

新ごみ処理施設の入札について、公正取引委員会が問題視していることを報じる屋久島ポストの記事=2023年2月20日付

一部町議、川崎技研への聴き取りを要請
 公取委の指摘を受け、真辺ら複数の町議は担当の町生活環境課に出向き、川崎技研への聴き取り調査の実施を要請。3月定例会の開会までに調査しない場合には、新ごみ処理施設の関連予算案に反対したうえで、町議側から川崎技研へ独自に聴き取りをすると迫った。

町議会、早急に関連予算を承認
 ところが、町執行部は真辺らの要請に応じることなく、早急に建設計画を押し進めた。

 2023年3月7日に定例会が開会すると、町は新ごみ処理施設の建設費の一部となる5億5000万円を盛り込んだ補正予算案を提出。通常、公共事業の予算案は常任委員会で審議する必要があるが、町議会は委員会での予算審議を省略し、早々に賛成多数で予算案を可決してしまった。

 一方、川崎技研への聴き取り調査について町長の荒木耕治は、定例会の最終日までに「実施できるかどうか約束できない」と答弁。担当の生活環境課長は、「まだ町長に質問状の相談をしていない」と述べて、調査の日程を先延ばしにした。

川崎技研への聴き取り調査について答弁する荒木耕治町長(手前右)=2023年3月7日、屋久島町議会、議会中継モニター画面を撮影

町、業者の聴き取りせず建設予算を成立
 そして迎えた定例会最終日の3月24日、新ごみ処理施設の建設費を盛り込んだ新年度予算案を審議した町議会は、賛成11人、反対4人で予算案を可決。町は川崎技研への聴き取り調査をすることなく、同施設に関するすべての予算を成立させた。

  採決前、この予算案をめぐっては、賛成と反対で激しい討論があった。

 公取委の指摘を踏まえて反対した真辺は、「15億円も高い入札をした当該業者に理由を問い合わせるように求めたが、まだ町は聴いていないため、疑念が残っている」と主張。さらに、渡辺千護は「住民もかなり疑念を持っていて、その疑念が払拭されていない」として、強く反対した。

町長派町議、不正調査は「公正取引委員会がやるべき」
 それに対し、榎光徳は「すでに工事業者との契約については、昨年12月定例会において全会一致で可決されている」と反論。それに続いた岩山鶴美は、「今さら反対するのは辻褄が合わず、議員としておかしな発言だ」と指摘したうえで、公取委に相談した真辺らをこう批判した。

「公正取引委員会に電話をかけたそうだが、違反行為を取り締まる公正取引委員会であれば、調査に入るのではないか」

「あなた方が電話をして、さらに動いているということだが、おかしいことがあれば、公正取引委員会がやるべきではないか」

 つまり、入札の不正調査をするのは公取委だけであり、町議会議員が独自に調べる必要はないということである。

屋久島町議会の予算審議で発言する岩山鶴美町議=2023年3月24日、屋久島町議会、同町議会YouTubeチャンネルより
【動画】https://youtu.be/AYibqk2MQwk

議会、行政監視の責務丸投げで予算案を承認
 この岩山町議の発言には、傍聴者から嘲笑の声が上がった。

 そもそもだが、疑惑の段階で公取委が積極的に動くことはなく、その前段階で詳しく調べるのは、地方議会や報道機関などになる。それにもかかわらず、すべてを公取委に丸投げしてしまったら、地方議会は行政監視の責務を放棄したも同然で、住民代表としての存在意義を自ら否定したことになる。

 だが、荒木を支持する多数派の町議たちは、住民代表とは思えない岩山の主張を支えにして、早急に予算案を通そうとする町執行部の姿勢を容認してしまった。

町長、予定価格超の入札に「残念」でも問題なし
 そして、川崎技研への聴き取り調査の結果が公表されたのは、予算成立から5カ月後の8月に開かれた定例会だった。

 一般質問の答弁に立った荒木は、問題となった入札について「予定価格内での金額を期待していただけに残念に感じた」としたうえで、事前公表された予定価格を超過した入札は「事実上の撤退と考えられる」と指摘。一方、それでも川崎技研が入札に参加した理由として、入札した全社が予定価格を上回った場合に「再度公告の可能性も模索していた」と説明したことを受けて、「企業戦略に基づく結果となるので、それ以上でも、それ以下でもないと受け止めている」と述べた。

新ごみ処理施設建設工事の入札で、川崎技研が意図的に無効な入札をした問題について答弁する屋久島町の荒木耕治町長=2023年8月28日、屋久島町議会、同町議会YouTubeチャンネルより
【動画】https://youtu.be/YfL2QHP66bQ

高止まりする屋久島町の公共事業費
 しかし、公取委だけでなく、だれが聞いても不可解な話である。

 予定価格が事前に公表され、その金額を超えて入札すると失格になるとわかっているのに、あえて辞退せずに参加し、予定価格から15億円超の金額を提示する。当然だが、計画立案や書面作成、社員の出張などには多額の費用がかかり、そのすべてが無駄になってしまうのに、それでも参加する意味がどこにあるのか。

 そして、もっと不可解な話は、こんな不適切な入札について、屋久島町議会に所属する大半の町議たちが何ら疑問を呈することなく、荒木が提案するがままに予算を承認していることだ。公取委が「競争が働いたとは言い切れない」と指摘しているのに、なぜ町議会は町の予算案を丸呑みしてしまうのか。

 落札業者のテスコが提示した入札額24億4870万円(税抜き)は、予定価格24億6100万(同)円に限りなく近い。こんな入札を繰り返していると、屋久島町の公共工事の事業費は、いつまでも高止まりしたままになることは明らかである。

◇     ◇     ◇

 9月21日に投開票される屋久島町議選を前に、新たに選ばれる町議たちに期待を寄せながら、現議会の4年にわたる任期を振り返ります。

※この連載は敬称略で掲載します。

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