留守宅に侵入して女性下着を触る管理人【悪用されたマスターキー①】/鹿児島ポスト
マンション管理人「水漏れ」口実にマスターキーで住居侵入
買い物から帰ったらリビングで鉢合わせ

【左】マンションの管理人が持ち歩いていたマスターキー。写真下の「2015 New Master」と記載された鍵を使って被害者の部屋に侵入した(被害者に開示された事件記録より※鍵の形状を伏せるために一部でモザイク加工をしています)【右上】鹿児島地裁(裁判所ウェブサイトより)【右下】鹿児島県警本部(Wikimedia Commonsより)
鹿児島市を東西に分かつ甲突川。そのほとりに立つマンションで事件が起きたのは2024年6月1日、土曜日の早朝だった。
朝食前、24時間営業のスーパーマーケットで買物を終えた夫妻が7階の自宅に帰ると、玄関のカギが開いていて、誰もいないはずのリビングに一人、マンションの管理人が立っていた。すると、夫妻と鉢合わせになった管理人は、すかさず「水漏れだ」「水漏れだ」と何度も大声で言いながら、玄関から外へ飛び出していった。
押入れに散らばる下着
一方、自宅に留まった夫妻は、何が起きたのかわからないまま、呆然とリビングに立っていた。しばらくして、買い物袋をキッチンに置いた妻が奥の部屋へ入り、バッグと帽子を押入れに置こうとしたところで、「異変」に気づいた。仕事で県外に行く準備で、カバンに入れていた自分の下着が辺りに散らばっていたのだ。
無造作にカバンから取り出された下着を見た妻は、すぐに疑った。
「管理人は自分の下着を物色するために部屋に入ったのではないか」
腰にぶら下げたマスターキー
そこで、本当に水漏れがあったのかどうかを確かめるため、夫妻が外に出ると、管理人が玄関の前に立っていた。そして、夫妻が「本当に水漏れがあったのですか?」と尋ねると、管理人は二人を8階へ案内して、水浸しになった廊下を見せたうえで、こう言った。
「さっき801号室の人と水漏れを確認しました」
それを聞いた夫妻は、すかさず「その部屋の方と話がしたい」と伝え、管理人と一緒に801号室に向って玄関の前に立った。だが、その後にとった管理人の行動に、夫妻は目を疑った。管理人がインターフォンを押すことなく、いきなり腰にぶら下げていたマスターキーを手に、玄関のドアノブに鍵を差し込もうとして、慌てて止めたのだ。
その後、管理人はインターフォンを何度か押したが、部屋には誰もいなかった。それを受け、夫は「水漏れなんてなかったのでは?」と尋ね、妻は「私の部屋を荒らしましたよね」と問いただした。だが、管理人はいずれも認めることなく、夫妻を自宅に戻るように促して、自分は1階の管理人室に戻った。
夫は管理人を見張り 妻は110番通報
801号室にマスターキーで入ろうとした管理人――。
その様子を目の当たりにした夫妻は、自分たちの部屋も同じ手口で荒らされたと確信し、すぐに夫が管理人室へ向かって、管理人を見張ることにした。一方、妻は110番通報して、口早に「夫と買い物に行って帰ってきたら部屋の中に常駐の管理人がいて、下着が荒らされていたので、いま夫が管理人を見張っています」と伝えた。
それに対し、鹿児島県警本部通信指令室の担当者は、緊迫した声で「すぐに現場へ向かいます」と言った。
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鹿児島市内のマンションで2024年6月に発生した住居侵入事件をめぐり、被害者夫妻が2025年1月、管理会社と元管理人を相手取り、慰謝料など約250万円の損害賠償を求める民事訴訟を提起しました。犯行に使われたのは、約100世帯が暮らすマンションの全室を開けられるマスターキー。なぜ事件は起こり、どのように被害者は対応したのか。民事裁判の訴状や事件記録などを頼りに、誰にでも起こり得る事件の真相に迫ります。