マンション不法侵入

マンション不法侵入の元管理人、わいせつ目的を認定され賠償金150万円/鹿児島ポスト

yakushima-post

元管理人、マスターキーで女性入居者の下着を物色も 単なる住居侵入と主張 → 鹿児島地裁「性的興奮を覚えるなどの目的」と認定

被害女性「不動産業界が対策を講じれば防げる事件」

【左】女性入居者の下着が物色された現場を調べる鹿児島県警の捜査員【右】マンションの管理人が持ち歩いていたマスターキー。写真下の「2015 New Master」と記載された鍵を使って被害者の部屋に侵入した(被害者に開示された事件記録より※鍵の形状を伏せるために一部でモザイク加工をしています)
 

「本件不法行為は、本件マンションの管理人である被告が、自身の性的興奮を覚えるなどの目的で、マスターキーを使用して本件居室に侵入し、原告の下着を物色したものである」――。

 鹿児島市内のマンションで2024年6月、管理人の男がマスターキーを使って入居者の留守宅に侵入した事件をめぐる民事訴訟で、鹿児島地裁は10月3日、元管理人がわいせつ目的で不法侵入したことを認め、マンションの管理会社と元管理人に約150万円の賠償を命じる判決を言い渡した。元管理人は不法侵入した動機について、単に被害女性の「部屋を見てみたい」気持ちだったと訴えていたが、地裁は「自身の性的興奮を覚えるなどの目的」だったと認めて、元管理人の主張を退けた。

鹿児島地裁が原告らに示した判決文の一部。元管理人が不法侵入した動機について、地裁は「自身の性的興奮を覚えるなどの目的」だったと認定している(※モザイクは鹿児島ポストが加工)

管理会社、謝罪も補償もせず事件を放置
 このマンションの管理人による不法侵入は、約100戸ある全世帯に自由に入れるマスターキーを悪用し、被害女性の下着を物色したもので、入居者の平穏な生活を脅かす事件だった。だが、マンションを管理する不動産会社「ロンフレ」(本社・宮崎県小林市)は被害に遭った夫妻に謝罪や補償をすることなく、実質的に事件を放置した。さらに同年8月、会社を依願退職した元管理人が懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受けたのちも、ロンフレは事件があった事実をマンションの入居者に報告することもなかった。

被害夫妻、事件再発防止のために民事提訴
「このまま事件を放置したら、また同じような事件が起きるかもしれない」

 そう危惧した夫妻は2025年1月、ロンフレと元管理人を相手取り、慰謝料など約250万円の損賠賠償を求めて提訴。自身が負った精神的かつ経済的な損害を回復することに加え、「同様の事件が二度と起きないようにするため」に被告側の責任を追及した。

 すると、ロンフレの対応は一転した。

 同年3月に裁判が始まると、ロンフレは全入居者に「元管理人の住居侵入についてのお詫び」と題する文書を配布。元管理人が不法侵入した事実を報告したうえで、マスターキーを本社で管理するなどの対策を講じたことを伝えた。

鹿児島地裁=鹿児島ポスト撮影

元管理人、高額な慰謝料の請求に反発
 その一方、元管理人は裁判で真っ向から反論を続けた。

「入室したのは、性的興奮を覚えるためではない」

「どんな部屋で生活しているのか見てみたい気持ちから入室してしまった」

「その際クローゼットが開いており、下着が置いてあったことから、被告はこれに触れたが、すぐに元に戻している」

 そして、地裁が解決金150万円での和解案を提案すると、元管理人は被害夫妻が求める「慰謝料が著しく高額」だとして、地裁の提案に反発した。

「本件行為の様態、慰謝料に関する多くの事例や判例等を考慮され、客観的に判断していただきたい」

 この事件はわいせつ目的ではなく、単なる不法な住居侵入だとして、和解案の解決金150万円を減額するように求めたのだ。

被害女性、検察調書を根拠に「わいせつ目的」を立証
 これに対し被害女性は、鹿児島地検の取り調べで元管理人が、「奥さんの服や下着も見てみたいという気持ちもあったかもしれません」と供述していることを、検察の供述調書を証拠提出して指摘。さらに、検察官が元管理人に「あなたのスマートフォンに、たくさんの女性の下着の写真が記録されていて、これを見ると、あなたは女性の下着に興味があって、奥さんの下着を盗もうとしたと考えることもできる」と伝えていることなども踏まえ、不法侵入した動機が「わいせつ目的であったことは疑いの余地がない」と反論した。


事件の再発防止を訴え本人訴訟

 今回、被害女性は弁護士に代理人を頼むことなく、本人訴訟で法廷に臨んだ。刑事裁判で元管理人が住居侵入罪のみで有罪になっているため、相談した弁護士が「費用的にはトントンか赤字」「裁判では、盗まれた物やお金を返してもらうことしか主張できない」と言って、民事訴訟に消極的だったからだ。

 提訴から9カ月。自力で裁判を闘い抜いた被害女性は、判決後の取材にこう答えて、事件の再発防止を訴えた。

「私たちが部屋を探す際に重要視するのはセキュリティーで、このマンションは常駐管理人付きで安心できる物件でした。

 しかし、それにもかかわらず管理人に住居侵入されたら、事件の防ぎようがありません。

 今回の事件は、マスターキーを自由に使えたことが問題だったと考えています。法を犯してまでも、女性の下着を見たいと思う人の欲望を抑えることはできないかもしれません。ですが、それを実行に移させないために、不動産業界が対策を講じることは可能であり、防げる事件だということを強く訴えたいです」

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事
これらの記事も読まれています
記事URLをコピーしました