【速報】マンション管理会社、マスターキーを悪用した住居侵入事件を入居者に報告/鹿児島ポスト
事件発生から9カ月「事件の正しい情報を最近まで知ることができなかった」と釈明
再発防止策として「マスターキーは本社の金庫で管理」など

【左】マンションを管理する不動産会社「ロンフレ」が入居者に配布した文書(※マンション名にモザイク加工をしています)【右】マンションの管理人が持ち歩いていたマスターキー。左の「2015 New Master」と記載された鍵を使って被害者の部屋に侵入した(被害者に開示された事件記録より ※鍵の形状を伏せるために一部でモザイク加工をしています)
鹿児島市内のマンションで2024年6月、管理人の男がマスターキーを使って入居者の留守宅に侵入し、その部屋で暮らす女性の下着を物色したとして、住居侵入などの疑いで逮捕された事件をめぐり、マンションを管理する不動産会社「ロンフレ」(本社・宮崎県小林市)が入居者に事件の報告文書を配布したことが3月13日、鹿児島ポストの取材でわかった。
文書では再発防止策として、マスターキーを同社の金庫で管理することなどを報告。事件発生から9カ月後の報告になったことについては、「然るべき機関からの事件の正しい情報」を最近まで知ることができなかったと釈明した。
この事件については、鹿児島ポストとKKB鹿児島放送が3月5日に初めて報道。その時点でロンフレは、入居者への事件の報告だけでなく、被害者に対して謝罪や補償の話も一切していなかった。
女性の下着が物色された事実は報告なし
事件があったマンションの住民によると、ロンフレが作成した「元管理人の住居侵入についてのお詫び」と題する文書は3月12日に各入居者のポストに投函され、約100室あるマンションの全入居者に配布されたとみられるという。
文書では、まず「当マンションの元管理人(2024年6月30日退職) が、 昨年6月1日にマスターキーを使い入居者様の部屋に無断で侵入し、警察に逮捕される事件がありました」と報告。事件発生から9カ月後の報告になったことについては、「管理会社として皆様にはもっと早くお伝えすべきことですが、然るべき機関からの事件の正しい情報を最近まで知ることができず、結果、皆様へのお詫びとお知らせが遅れることとなりました」と釈明した一方、元管理人が女性の下着を物色していた事実は説明されなかった。
鍵保管室に警備操作器と監視カメラを設置
続いて、文書では「管理会社として、皆様に安全安心を提供する立場でありながら信頼を大きく裏切ることとなり、御不安と御心配をおかけしたこと、深くお詫び申し上げます」と謝罪。さらに、この事件を受けて「このようなことが二度と起こらないよう、管理体制を今一度見直し、再発防止策を講じております」とした。
具体的な再発防止策としては、「マスターキーは本社 (宮崎県小林市)の金庫に保管することといたしました」と説明。また、「管理人室のセキュリティーは、(株)全日警様にご協力いただきました」としたうえで、管理人室と鍵保管室の入口に操作記録が残る「警備操作器」や、鍵保管室に監視カメラを設置したことなどを報告した。

マンションを管理する不動産会社「ロンフレ」が入居者に配布した文書(※マンション名にモザイク加工をしています)
事件後、管理人の交代のみ報告する文書を掲示
ロンフレの文書を受け取った住民によると、2024年6月に事件が発生したのち、管理人が交代することを伝える文書がエレベーター内に掲示されたが、その理由は記載されていなかった。そして、その後も事件の報告は一切なく、被害に遭った女性が2025年1月に訴訟を提起するまでは、事件が発生した事実を全く知らなかったという。
住民「自分も被害に遭っているかもしれない」
この住民は鹿児島ポストの取材に対し、「管理会社の対応は不誠実で、黙っていれば誰もわからないだろうと思っていたのではないか。被害者からは、元管理人が他の部屋で撮影した下着の写真を持っていたとの話も聞いているので、自分も被害に遭っているかもしれないと思うと、とても恐ろしい」と話した。

管理人の男が女性の下着を物色した押入れを調べる鹿児島県警の捜査員(2024年6月1日、被害者撮影)
管理会社、被害女性に謝罪も補償もなし
この事件をめぐっては、鹿児島地裁が2024年8月28日に懲役1年、執行猶予3年の判決を言い渡し、元管理人の有罪が確定している。
被害に遭った女性によると、判決後の9月7日に女性がロンフレの幹部と電話で話したが、事件については「何もわからない」と言われ、謝罪や補償の話はなかった。また、管理人が判決前の6月末に「自主退職」したことも知らされ、社員が罪を犯したにもかかわらず、懲戒解雇にしなかったロンフレの「穏便な対応」に、女性は大きな疑問を感じたという。
管理人の個人情報保護を理由に「住民に知らせられない」
さらに9月11日には、事件があったマンションの元住民で、有罪判決のことを知った女性の友人がロンフレの幹部に電話をかけて、「私の友人が事件に巻き込まれたことを、マンションの住民に報告する責任があるのではないか」と尋ねた。ところが、それに対し幹部は、「(元管理人の)個人情報を守る必要があるので、住民に知らせることはできないと、顧問弁護士から言われた」と伝えたという。
それらの経緯を踏まえ、被害に遭った女性は今年1月、ロンフレと元管理人を相手取り、慰謝料など約250万円の損害賠償を求める民事訴訟を鹿児島地裁に提起した。
ロンフレ「訴訟中につき、回答を控えさせていただきます」
この提訴を受けて、鹿児島ポストはロンフレに取材を申し込んだが、「鹿児島地方裁判所に係属している弊社管理マンションに関する民事訴訟については、管理会社としての責任について認めたうえで、今後の対応については、委任している弁護士にお任せしています。訴訟中につき、具体的な内容については、回答を控えさせていただきます」と回答があり、直接取材することはできなかった。