屋久島町議選2025

有罪町議をひたすら守る町長派議長【御用議会の四年間】③/屋久島町議選2025

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議会、不法焼却事件の調査求める住民陳情を門前払い → 住民告発、罰金50万円で町議が有罪に

町政史上初の有罪町議 不法焼却事件

屋久島町議会=2025年6月、屋久島ポスト撮影

 屋久島町議会(議長・石田尾茂樹)は2023年8月、町政史上では初めて、現職町議が刑事事件で有罪となるという汚点を刻んだ。町長の荒木耕治を支持する岩山鶴美が、自身で経営する賃貸アパートのリフォーム工事で出た廃棄物を不法焼却し、罰金50万円の略式命令を受けたのだ。

 有罪確定を受け、町議会は岩山に対する辞職勧告決議案を可決。同勧告には法的拘束力がないこともあり、岩山はそのまま続投したが、住民代表の町議会としては一定のけじめをつけることができた。

 ところが当初、議長を務める町長派の石田尾は、町議会として岩山の責任を追及する考えはなく、事件に対して議長声明を出すこともなかった。さらに、この事件が発覚した2021年8月の議会運営委員会で石田尾は、岩山への聴き取り調査を求める住民の陳情書を門前払いで却下し、一方的に岩山を擁護する姿勢をみせていた。

岩山鶴美町議が不法焼却した廃材や畳など=2021年1月5日、屋久島町安房、住民撮影

住民が疑問、不法焼却を認めて口頭注意は「あり得ない」
 陳情書を出した住民が疑問に感じたのは、岩山が全員協議会で説明した事件の経緯だった。廃棄物の焼却について鹿児島県警と鹿児島地検の捜査を受け、不法焼却した事実を認めたのち、地検からこう告げられたというのだ。

「今回は注意ということになりました。以後、気をつけてください」

 リフォーム工事の廃棄物を不法焼却し、その容疑事実を認めたのであれば、少なくとも起訴猶予の不起訴処分になるはずで、「口頭注意」での幕引きはあり得なかった。

「町の許可」を根拠に住民の陳情を却下
 だが、住民の陳情書について協議した議会運営委員会で、岩山は「町から廃棄物を仮置きする許可を得ていた」と説明。それを受け、石田尾は「許可を得ていたということで、厳重注意に終わったということであれば、この陳情を取り扱うことに賛成しがたい」と岩山を擁護し、日高好作も「ちゃんと許可を得ていた点では、問題があるとは思わない」と続いた。

 そして、住民の陳情書は反対多数で却下され、岩山の不法焼却事件は終息するかに思われた。

警察が捜査した廃棄物の焼却現場には、立入禁止の黄色いテープが張られていた=2021年2月12日、屋久島町安房、住民撮影

住民の刑事告発で地検が再捜査
 ところが、それから半年後に事件は急展開をみせる。

 屋久島ポストは2022年2月、岩山が廃棄物を投棄した現場に加え、焼却後の様子を目撃した住民から現場写真を入手し、この事件について第一報を配信。これに続いて、現場を目撃した住民が証拠写真を添えて刑事告発をすると、地検が事件の再捜査を決めたのだ。

 さらに、岩山が議会運営委員会で説明していた「町の許可」について、新たな事実がわかった。屋久島ポストが町に取材すると、担当課長は「町として許可を出した事実はない」と言って、岩山の説明を強く否定したのだ。

 そうなると、岩山が許可を取っていた事実はなく、その誤った情報を根拠にして、石田尾らは住民の陳情書を門前払いしたことになる。

岩山鶴美町議が投棄した廃棄物。アパートのリフォーム工事で出た廃材などを捨てた=2020年9月14日、屋久島町安房、住民撮影

根拠のない「許可」を根拠に陳情を却下
 岩山が主張する「許可」について、石田尾は取材に「委員会の休憩中に岩山町議から『許可をもらっていた』と言われた。許可の内容まで説明された記憶はないが、許可を受けていること自体は、同僚議員の言っていることなので信じた」と釈明。日高に至っては「どんな説明だったか、いまでは記憶が定かでない」と言って、お茶を濁した。

 つまり石田尾と日高は、事実に反する岩山の説明を鵜呑みにして、住民からの陳情書を定例会に上程することなく、一方的に却下したということである。

議長、町議の有罪が確定しても一切不問
 町長派の石田尾と日高に守られ、町議会での追及は避けられた岩山だったが、司直の手から逃れることはできなかった。2023年7月、屋久島区検が岩山を廃棄物処理法違反(不法焼却)の罪で略式起訴したのち、翌8月には屋久島簡裁が罰金50万円の略式命令を出すと、NHKなどの報道各社は「岩山町議に罰金50万円の略式命令」と報じた。

 だが、有罪が確定しても、屋久島町議会の議長として、石田尾は岩山の責任を一切不問にした。まともな地方議会であれば、議長が主導して辞職勧告決議案の提案を検討したり、住民に対して議長声明を出したりするものだが、石田尾は積極的に動かなった。

岩山鶴美町議が不法焼却で有罪になったことについて、屋久島町議会議長として謝罪と説明をする石田尾茂樹議長=2023年8月28日、屋久島町議会、同議会YouTubeチャンネルより
【動画】https://youtu.be/g2e0tNN8Lqk

住民の不法投棄を批判したのに 自分が不法焼却で有罪!?
 そこで、一部の町議が立ち上がった。日ごろから町長派とは一線を画している真辺真紀と渡辺千護が岩山に対する辞職勧告決議案をつくり、9月の定例会に提案したのだ。

 辞職を勧告するにあたり、真辺と渡辺が問題にしたのは、不法焼却で有罪になったことだけではなかった。事件を起こす1年前の町議会で、岩山は不法投棄をする住民が多いことを強く批判し、「ごみのポイ捨て」に罰金を科す条例の制定を提案。それにもかかわらず、その後に自分自身が不法焼却で有罪になったことを強く批判した。

2019年9月の屋久島町議会の一般質問で、ごみのポイ捨てに罰金を科す条例制定の提案をした岩山鶴美町議=屋久島町が情報公開制度で開示した動画より
【動画】https://youtu.be/k6ocX4eYx4Y

辞職勧告「子どもたちに悪影響を与えないために辞職を」
 辞職勧告の提案理由で真辺は、「世界自然遺産の屋久島で、現職の町議会議員が廃棄物を焼却して有罪になったことは、屋久島町民1万2000人の代表として、決して許されることではない」と主張。さらに賛成討論で渡辺は、町議は住民の手本になる立場だとして、「屋久島の将来を担う子どもたちに、これ以上の悪影響を与えないためにも、屋久島町の歴史のなかで、町議会議員として初めて有罪となった岩山議員は、速やかに辞職をすべきだ」と訴えた。

岩山鶴美町議に対する辞職勧告決議案の提案を理由を述べる真辺真紀町議=2023年9月5日、屋久島町議会、同町議会YouTubeチャンネルより
【動画】https://youtu.be/mJrox6-kfT4

 そして採決があり、賛成10人、反対3人で、岩山に対する辞職勧告決議案は賛成多数で可決された。

 これは当然の結果に映ったが、それでも町長派の日高好作、岩川俊広、内田正喜の3人は反対に回った。さらに、議長の石田尾が採決に参加していれば、計4人が反対していた可能性もあった。

岩山鶴美町議に対する辞職勧告決議案について、賛成討論をする渡辺千護町議=2023年9月5日、屋久島町議会、同町議会YouTubeチャンネルより
【動画】https://youtu.be/ohF_NRSF9RI

陳情却下は「住民不在の町議会を象徴する汚点」
 いずれにしても、町議会から辞職勧告を突き付けられた岩山だが、事件発覚からの2年間を振り返ると、石田尾ら町長派の町議たちにずっと守られてきた。町議会に調査を求める住民の陳情書が却下されたあと、もし屋久島ポストが事件の取材をしなければ、現職町議による不法焼却事件は、そもそも何もなかったことになっていただろう。

 その意味で、町議会が事件の調査を求める住民の陳情書を却下したことは、極めて由々しき問題だ。何の根拠もない「許可」を鵜呑みにして、石田尾や日高らが住民の要望を門前払いしたことは、住民不在の町議会を象徴する汚点だといえる。

 そして最も恐ろしいのは、現職町議が有罪になるべき事案を、多数派の町議たちが隠蔽するかのごとく、調査をせずに放置したことだ。もし、そこに町長派としての忖度や仲間意識があったとすれば、それは住民代表の議会ではなく、「町長の議会」ということになる。

◇     ◇     ◇

 9月21日に投開票される屋久島町議選を前に、新たに選ばれる町議たちに期待を寄せながら、現議会の4年にわたる任期を振り返ります。

※この連載は敬称略で掲載します。


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