屋久島町議選2025

【視点】屋久島町長と一体化した「御用議会」の選挙/屋久島ポスト

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町議会、不正や不祥事をすべて不問 → 町長と議会の二元代表制は機能不全

新人4人、新たな風に期待

屋久島町役場の議会棟。後方中央には愛子岳がそびえる

 9月21日に投開票がある屋久島町議選(定数14)に向けて、計16人が立候補する見通しとなった。8月12日に開かれた立候補予定者の説明会には、現職12人と新人4人が出席し、立候補の届出や選挙運動などについて、選挙管理委員会などから詳細な説明を受けた。

 だが、その顔ぶれをみると心配になってくる。現職12人のうち、その大半が荒木耕治町長に寄り添う「保守派」の町議だからだ。

 町長と町議会議員はどちらも町民による直接選挙で選ばれる「二元代表制」の関係にあり、町議会は町長が進める町政運営を監視する役割を担っている。ところが、この4年間の議会運営を振り返ると、そこにみえるのは、荒木町長と一体化した「御用議会」である。

 もちろん、一部の町議は現町政に厳しく迫っていた。だが、何をどう追及しても最後は多数決となり、少数派の声はかき消されてきた。

虚偽領収書の発行経緯は闇の中
 その幕開けは、一連の出張旅費不正精算事件で発覚した虚偽の領収書に対する議会の対応だった。実際の航空運賃より高い金額が書かれた領収書を使い、まずは副町長や町議会の議長、副議長が不正精算していたことが発覚。それに続いて、会計課長を含む一般職員にも虚偽の領収書が出回っていたことがわかり、その数は少なくとも15枚にもなった。

 ところが町議会は、この虚偽領収書の問題を不問にした。一部の町議が複数回にわたり、不正調査をする調査特別委員会(百条委員会)の設置を提案したが、すべて反対多数で否決された。その結果、それらの虚偽領収書が発行された経緯などは、未だに闇の中である。

 この虚偽領収書の不正から始まり、その後に発覚した数々の問題にも、町議会は見て見ぬふりを続けた。

国庫補助金の不正請求も調査せず
 町が虚偽の工事実績報告を国にして、水道工事の国庫補助金を不正請求した問題では、町議会が不正調査を町に求めることはなかった。そこで、現職を引退したばかりの元町議が住民訴訟で最高裁まで争い、荒木町長に135万円の賠償責任があることを認めさせた。

国会議員への高額贈答も見向きせず
 国会議員らに多額の贈答を続けていた町長交際費問題でも、一部の町議を除き、多数派の町議は見向きもしなかった。そこで、現職町議が住民訴訟を起こしたところ、国会議員への贈答がすべて中止となり、最高で年126万円だった町長交際費の支出は、年16万円にまでに激減した。

町職員の過重労働死も追及せず
 町営牧場で町職員が死亡し、公務災害が認められた過重労働死問題では、町が「過重労働はなかった」と主張すると、町議会は何も追及することなく、町の言い分を黙認。それに遺族が怒り、町を相手取って7000万円の損害賠償請求訴訟を提起する事態となった。

潜水2時間の海底清掃事業1700万円も傍観
 ふるさと納税の寄付金1700万円で実施した海底清掃事業で、実際に潜水したのは計2時間のみで、事業費の大半が屋久島の魅力を伝える観光ガイド冊子や動画に支出されていた問題でも、多数派の町議は「傍観者」のように沈黙を続けた。そして、これも現職町議が町に対して住民訴訟を提起し、荒木町長らに全事業費の1700万円を賠償請求するように求めている。

屋久島町議会の議場

屋久島町、すべての問題を司法で解決
 前回の町議選から4年間、これらの実例を一つずつ振り返ると、いま現在の屋久島町議会は本来の役割を果たしておらず、二元代表制が全く機能していないことがわかる。そして、このような町議会に甘やかされている屋久島町は、地方自治体としては機能不全に陥っているといえる。なぜなら、町長や町役場が何もやっても、町議会がすべて承認または黙認してしまうからだ。

 つまり、どんな不正や不祥事が町で起きても、町議会は一切を不問にして、最終的には司法の判断を仰ぐしかないということである。

 9月の町議選では、新人4人の立候補が見込まれる。もし仮に新人全員が当選したとしても、町長派が多数を占める議会構成は変わらないだろう。だが、それでも新しい風が吹くことで、住民による住民のための町づくりが進むことを期待したい。

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