【視点】若者が嘲笑、町役場を監視しない町議会/屋久島町議選2025
ニセの領収書、国への虚偽報告、町職員の過重労働死……すべて不問の町議会
島外で笑われる旧体質を自覚すべき
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屋久島町議会=2025年6月、屋久島ポスト撮影
自分たちが暮らす地方自治体はしっかりと運営され、納税者が納めた税金は市民生活のために無駄なく使われている。
大学の授業や講演会などで話す機会が増えて感じるのは、そう信じて疑わない若者が多いことだ。「まさか自分たちが選んだ首長や議員が、そんな悪いことをするはずがない」ということだが、屋久島町での取材経験を話すうちに、若者たちの表情は一変する。
町の幹部や一般職員が、実費より高額な航空運賃が書かれたニセの領収書で不正精算をしていても、町議会は調査を一切しない。
町が国に虚偽の報告をして補助金を不正請求しても、町議会は原因を究明せずに放置する。
町営牧場で町職員が過重労働で亡くなっても、町議会が死亡原因や勤務管理などについて町幹部を問いただすことはない。
現職町議が廃棄物の不法焼却事件で罰金50万円の処分を受けても、町議会の議長は辞職勧告を検討することもなく、どこまでも有罪議員を庇い続ける。

現職町議によって投棄された廃棄物。この後にすべて不法に焼却された=2020年9月14日、住民撮影
嘲りの笑いに包まれる教室
まだまだ他にもあるが、一つひとつ具体的な経緯を話すうちに、やがて教室や会場は嘲りの笑い声に包まれていく。
屋久島の住民としては恥ずかしい限りである。
だが、もっと恥ずかしいのは、そんな不正や不祥事を見逃している屋久島町議会の町議たちだ。もし、その教室や会場にいたら、上着の襟に付けた議員バッジを外して、ひっそりと逃げ出さずにはいられないだろう。
あるはずもない「見積もりの領収書」を追及せず
あらためて言うまでもないが、地方議会の最大の責務は、地方自治体が適切に運営されているかどうかを監視することだ。これほどの不正や不祥事が続けば、どれか一つぐらい、強い調査権をもった調査特別委員会(百条委員会)で追及するはずなのだが、驚くことに屋久島町議会が調査したことは一度もない。
若者たちが最も驚き、そして嘲笑するのは、ニセの領収書を使った不正精算が発覚した際に、副町長と議長が取材で発した釈明のことばだ。
「見積もりの領収書」と「予約の領収書」――。
お金を払ってもいないのに、見積もりや予約で領収書が発行されるはずはないのだが、それでも真顔でそう説明するのだ。そして、そんな釈明を鵜呑みにして、何も追及しない屋久島町議会は、さらに笑われるのである。

出張旅費の不正精算に使われたニセの領収書
選挙を経ても変わらない旧体質
いよいよ9月16日、町議会選挙が告示される。定数14に対して、立候補を予定しているのは16人。そのうち新人はわずか4人で、もし全員が当選したとしても、現職が多数を占める町議会の旧体質が変わることはない。
だが、これから選挙戦に臨む現職には自覚してもらいたい。島から一歩外に出ると、この町の議会は嘲笑されているということを。