首長学歴調査

【視点】残念な2市、一般市民への情報提供に後ろ向きな自治体/鹿児島ポスト

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首長の学歴調査、全43のうち41市町村が詳細に回答  阿久根市と出水市、取材に応じず回答なし

最多11市町「元自治体職員なので確認しない」

 学歴詐称疑惑に揺れる静岡県伊東市の田久保真紀市長が10月31日、市議会から2度目の不信任決議を突き付けられ、即日で失職した。

 疑惑が浮上してから約5カ月。辞職を表明したと思ったら、一転して続投を宣言したり、最初の不信任決議で市議会を解散したり……。たった1人の市長に6万1000人の市民が大きく振り回され、予定外の市議選と市長選で1億円もの公費が失われることになった。

伊東市のような混乱を未然に防ぐには?
 そんな伊東市の混乱を受けて、鹿児島ポストは今夏、鹿児島県内の各市町村がどのように首長の最終学歴を確認しているのかを調査した。その理由は、このような混乱を未然に防ぐためには、何らかの対策が各自治体に求められると考えたからだ。

 その結果、全体の約7割の自治体が卒業証書や卒業証明書で確認していなかったことがわかったのだが、一つだけ残念なことがあった。全43市町村のなかで、阿久根市と出水市の2市が取材に応じなかったのだ。

鹿児島県内にある全43市町村の地図=鹿児島県ウェブサイトより

阿久根市「回答を差し控える」
 阿久根市の総務課秘書広報係は、「市長の最終学歴に関する件については、当市としては回答を差し控えさせていただきます」とメールで答えてきた。そこで、鹿児島ポストからは「市長の学歴を疑うものではなく、その確認方法を調べています」と説明。だが、それでも答えは得られず、「(取材に)回答しない理由につきましても、同様となります」と、取り付く島がなかった。

出水市、回答しない理由も答えず
 出水市の総務課庶務法制係も同じく、「上席とも協議した結果、御回答は差し控えさせていただく」とメールで回答。これに対し「なぜ答えられないのか、その理由だけでも教えてほしい」と頼んではみたが、「回答しない理由も答えられない」と断られてしまった。

なぜ2市だけが回答しないのか?
 取材に応じるかどうかは、各市町村の自由なので、阿久根市と出水市の判断に問題はない。ただ、伊東市政の混乱を踏まえて、県内の41市町村が詳しく説明しているなかで、2市だけが何も答えず、その理由すら説明しない姿勢には疑問を感じた。

 市長の指示なのか、それとも市幹部の判断なのかは不明だが、一つだけはっきり言えることがある。それは、一般の市民や県民に対する情報の提供に、阿久根市と出水市が後ろ向きな自治体だということだ。同じ質問をして、43のうち41もの市町村が詳細に回答していることからも、それは明らかである。

喜界町「役場入庁の昭和58年4月の時点で確認済み」
 その一方、取材に応じた41市町村のなかで最も多かったのは、首長が自治体の元職員であるため、「採用時に確認済み」という回答だった。

 曽於市は「市長は元職員であり、職員採用時の提出必須書類として証明書が提出されていることを確認しています」。喜界町も「町長は元喜界町役場職員であり、入庁に際し、卒業証明書を提出しておりましたので、役場入庁の昭和58年4月の時点で確認済みです」と答えるなど、計11の市町が改めて確認する必要はないとした。

 曽於市や喜界町と同じ回答をしたのは、鹿屋市、いちき串木野市、志布志市、伊佐市、長島町、大崎町、錦江町、南大隅町、肝付町だった

 ただし今後、元職員ではない首長が当選する可能性もあり、その際には卒業証書などで確認する必要が出てくるであろう。

おおらかな与論町「町民の皆様が知っている」
 そして、最も興味深い答えは与論町だった。

 田畑克夫町長は町内にある県立与論高校の卒業なのだが、町役場は「学歴を証明する文書を確認したことはありません」という。そこで理由を尋ねると、返ってきたのは「町民の皆様が知っているため」という答えだった。

 人口5000人弱の離島らしい、実におおらかな答えだが、それでもやはり、与論町は立派な地方自治体だ。せめて、一度はしっかりと確認してほしいものである。(つづく)

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