【視点】屋久島町の過失負担、なぜ業者に肩代わりさせたのか?
特定業者からの「借り」は公平公正な公費支出を歪める
健診案内の誤送付、追加費用15万円を業者が負担

屋久島町のミスで発生した追加費用を、なぜ委託業者に負担させたのか?
町が特定健康診断の受診案内を誤送付した問題をめぐる取材で、こんな疑問を感じた。
町職員のミスで727人に健診案内を誤送付
今年11月にある追加健診を前に町健康長寿課は、5月に健診を受けなかった町民に受診を促すハガキや封書を送るはすだった。だが、担当職員が送付対象の未受診者リストを作成する際に、受診者のデータを削り忘れたため、すでに受診済みの町民727人に誤って案内文を送付。その費用に約15万円がかかり、すべてが無駄な支出になってしまった。
そうなると、本来送るべきだった未受診者に対し、早急に案内文を送付しなければならない。そして町は、さらなる費用として約15万円を追加で支出する必要がある。
ところが、担当職員に事情を尋ねると、その全額を委託業者に負担させたというのだ。データをチェックする過程で、業者側でも確認すべきだったということのようだが、そもそもミスをしたのは町職員である。それにもかかわらず、業者側が費用を負担したとなれば、町はその業者に「借り」をつくったことになる。

地方公共団体の「持ちつ持たれつ」は不適切
これが民間の会社同士のやり取りであれば、何も問題はない。「今回はこちらが泣きますから、これからもよろしくお願いします」などと、持ちつ持たれつの関係で取り引きを続けることは日常茶飯事である。
その一方、屋久島町は公費で運営されている地方公共団体だ。年間の一般会計予算は百数十億円もあり、公共事業の委託業者を選定する場合は、常に公平公正の立場でいなくてはならない。その際に、過去に恩を受けたことがある業者と業務委託契約を結んだとなれば、町民から疑いの目を向けられる可能性がある。

委託業者に「感謝」している場合ではない
おそらくだが、町にしてみれば、自己負担すべき約15万円を支出しなくて済んだと、胸をなで下ろしているのではないか。そして、自分たちのミスを肩代わりしてくれた業者に対し、「お陰で余計な出費をしなくて済みました」と感謝していることだろう。
しかし、こういった一つひとつの「借り」が、やがて町と業者の関係を歪めて、公平公正な公費の支出を妨げることになる。
屋久島ポストの取材に、健康長寿課の泊裕一郎課長は「完全なチェックミスなので、深くお詫びしないといけない。二度と同じミスを起こさないためには、担当者だけでなく、複数の職員が確認する体制を構築し直したい」として、町の責任を全面的に認めている。
そうであれば、ここはやはり、追加の費用は業者ではなく、町が負担すべきではないだろうか。
