首長学歴調査

首長の学歴、鹿児島全43市町村はどうやって確認しているのか?/鹿児島ポスト

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「町民の皆様が知っている」「履歴書で確認」「元職員で採用時に確認」……全回答

学歴問題で混乱する伊東市政の二の舞を防ぐには?

鹿児島県内にある全43市町村の地図=鹿児島県ウェブサイトより

 静岡県伊東市の田久保真紀市長の学歴詐称疑惑を受けて、鹿児島ポストが鹿児島県にある全43市町村に対して実施した調査で、全体の約7割にあたる29市町村が、選挙後に卒業証書や卒業証明書で各首長の学歴を確認していないことがわかった。

 市町村長にとって学歴は就任の要件ではないため、この結果は当初から予想できた。だが、学歴詐称疑惑に端を発した伊東市政の混乱は、田久保市長の不信任決議を経て市議会解散という事態に発展。伊東市民にとっては、制御不能な地方自治の「落とし穴」にはまったような状況に陥っている。

 このような事態を二度と引き起こさないために、各市町村はどのような対策をとらねばならないのか――。

  その答えを探すべく実施した調査を踏まえ、全43市町村の回答を以下に紹介する。

■各市町村への質問

Q1:首長の最終学歴を証明する文書を確認されたことはありますでしょうか?

Q2:Q1で「ある」と答えた場合 → 学歴を証明する文書の確認は、いつ、どのような形でなされたのでしょうか? / Q1で「ない」と答えた場合 → 今後、学歴を確認するために、卒業証明書などの提示を求める予定はありますでしょうか。もし、確認する予定がない場合は、その理由もお示しください。

 なお、この取材は各首長が示されている最終学歴を疑うものではなく、各市町村がどのように首長の最終学歴を確認しているのかを調べることが主目的であることをご承知おきください。

■各市町村の回答

01鹿児島市

<鹿児島市>
履歴書で確認済み

下鶴隆央市長 東京大学法学部

A1:確認していない。

A2:履歴書などにより確認済みのため、卒業を証明する文書を確認する予定はない

02鹿屋市

<鹿屋市>
鹿児島県の元職員なので県が確認

中西茂市長 九州大学経済学部

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:卒業を証明する文書の提示を求める予定はないが、市長は鹿児島県の職員であったことから、県で確認を行っている。

03枕崎市

<枕崎市>
就任当初に卒業証書を確認

前田祝成市長 駒澤大学経済学部

A1:確認している。

A2:就任当初に卒業証書で確認した。

04阿久根市

<阿久根市>
回答を差し控える

西平良将市長 九州大学農学部

A1 A2:回答を差し引控える。回答しない理由についても同様。

05出水市

<出水市>
回答を差し控える

椎木伸一市長 鹿児島県立短期大学二部商経科

A1 A2:上席とも協議した結果、回答を差し引控える。回答しない理由についても回答できない。

06指宿市

<指宿市>
調査依頼を受けて卒業証書を確認

打越明司市長 九州大学経済学部

A1:確認していなかった。

A2:今回の調査依頼を受けて、2025年8月28日に市長が市役所に持参した卒業証書を直接確認した。

07西之表市

<西之表市>
卒業者名簿で確認

八板俊輔市長 早稲田大学政治経済学部

A1:卒業を証明する文書では確認していない。

A2:早稲田大学卒業の首長で構成される市長会があり、案内文に添付されている名簿には卒業年と学部が記載されている。

08垂水市

<垂水市>
履歴書で確認

尾脇雅弥市長 鹿児島経済大学社会学部

A1:確認していない。

A2:履歴書で確認しているため確認はしない。

09薩摩川内市

<薩摩川内市>
卒業証書で確認

田中良二市長 九州大学文学部

A1:確認している。

A2:2024年11月ごろ、市長本人が秘書に提示した卒業証明書で確認した。

10日置市

<日置市>
大学の出身者名簿などで確認

永山由高市長 九州大学法学部

A1:卒業を証明する文書では確認していない。

A2:就任時や資産等公開時における経歴書で学歴を確認している。また、九州市長会における九州大学の出身者名簿や、九州大学からの卒業生による講話の講師依頼等の公文書でも確認している。通常業務において、学歴証明や卒業証明書等が必要になることはほとんどないため、提示を求める予定はないが、特定の協議会や委員会の役員等に任命される場合など、経歴確認等が必要な場合については、その都度、対応する予定

11曽於市

<曽於市>
元市職員で採用時に確認

竹田正博市長 鹿児島県立岩川高校

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:市長は元職員であり、職員採用時の提出必須書類として証明書が提出されていることを確認している。また、2025年7月の市長選に立候補した際に、本人から各報道機関等へ公開していると聞いている。

12霧島市

<霧島市>
当選直後に卒業証書を確認

中重真一市長 早稲田大学法学部

A1:確認している。

A2:市長選で当選した直後に、市長が提示した卒業証書の原本で確認している。

13いちき串木野市

<いちき串木野市>
元職員で入庁時に確認

中屋謙治市長 下関市立大学経済学部

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:市長が市職員として入庁した際に確認している。

14南さつま市

<南さつま市>
卒業校の同窓会長をしている

本坊輝雄市長 鹿児島県立加世田農業高校

A1:卒業を証明する文書では確認していない。

A2:現在、市長は加世田常潤高校(改称)の同窓会長で、高校や卒業生から周知されているため確認する予定はない。

15志布志市

<志布志市>
元職員で採用時に確認

下平晴行市長 鹿児島県立有明高校

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:市長は元志布志町職員であるため、採用試験を受験する際に当時の担当者が確認している。

16奄美市

<奄美市>
就任時に卒業証書のコピーで確認

安田壮平市長 東京大学法学部

A1:確認している。

A2:2021年12月、市長が就任した際に卒業証書のコピーで確認している。

17南九州市

<南九州市>
公選法で証明書の添付は求められていない

塗木弘幸市長 鹿児島県立甲南高校

A1:確認していない。

A2:公職選挙法の規定において立候補届け出に際し学歴を証する証明書の添付は求められておらず、また公正な選挙を経て就任しているため、確認する予定はない。

18伊佐市

<伊佐市>
元市職員で採用時に確認

橋本欣也市長 熊本県立矢部高校

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:市長の資格要件に学歴が含まれていないため、確認する予定はない。なお、市長は元市職員及び元国家公務員であるため、それぞれの採用要件に学歴が含まれることから、採用時都度に学歴確認が行われている。

19姶良市

<姶良市>
履歴書で確認済み

湯元敏浩市長 早稲田大学法学部

A1:確認していない。

A2:履歴書などで確認済みのため、卒業を証明する文書を確認する予定はない。

20三島村

<三島村>
今後は卒業証明書で確認する

大山辰夫村長 東京商科学院専門学校

A1:確認していない。

A2:今後は提出を求める方向で検討する。現村長についても、卒業証明書を取得する予定で、これから申請をする。

21十島村

<十島村>
卒業証明書の提示は資格要件に該当せず

久保源一郎村長 長崎造船大学

A1:確認していない。

A2:卒業証明書の提示は首長の資格要件に該当しないので、何らかの場面で提示する場合は、個人の責任で行うものであると考えている。

22さつま町

<さつま町>
卒業証明書で確認

上野俊市町長 鹿児島県立宮之城高校

A1:確認している。

A2:2025年4月、町長が2期目の就任時に卒業証明書で確認している。

23長島町

<長島町>
元町職員で採用時に確認

川添健町長 鹿児島県立出水高校

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:町長が職員として採用された際に、履歴書等の提出書類で確認しているため、卒業を証明する文書を確認する予定はない。

24湧水町

<湧水町>
就任前に目視で確認

池上滝一町長 鹿児島県立牧園高校

A1:確認している。

A2:町長の1期目就任前に目視で確認している。

25大崎町

<大崎町>
元町職員で採用時に確認

東靖弘町長 鹿児島県立有明高校

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:町長は元町職員で、採用時に確認されているため、卒業を証明する文書の提示を求める予定はない。

26東串良町

<東串良町>
卒業生同窓会の幹事を務めている

宮原順町長 鹿児島県立鹿屋農業高校

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:現在、町長が卒業生同窓会の幹事を務めており、同窓会幹事宛てに送付されている文書で確認しているため、卒業証明書のご提示を求める予定はない。ただし、今後の状況に応じて確認が必要となる場合には、卒業証明書等の提示を求めることも含め、適切な対応を検討していく。

27錦江町

<錦江町>
元職員で入庁時に確認

新田敏郎町長 鹿児島県立南大隅高校

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:町長は元職員であり、入庁時に卒業証書を確認している。

28南大隅町

<南大隅町>
元職員で採用時に確認

石畑博町長 鹿児島県立鹿屋工業高校

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:町長は元職員(旧根占町、南大隅町)であり、職員の採用条件として高校卒業以上としていること、また職員にも同校の卒業生が多数いることから、総合的に判断して本人提出の履歴については、信頼できる情報であると考えている。

29肝付町

<肝付町>
元町職員で入職時に確認

永野和行町長 鹿児島県農業講習所

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:町長は元職員であり、入職時の職歴として確認されていることから、改めて学歴に関する証明書などの提示を求める予定はない。

30中種子町

<中種子町>
卒業証明書の提示を求める理由がない

田渕川寿広町長 鹿児島県立鹿児島工業高校

A1:確認していない。

A2:町から学歴を公表していないため、卒業を証明する文書の提示を求める理由がない。

31南種子町

<南種子町>
卒業証書のコピーを確認

小園裕康町長 久留米大学

A1:確認している。

A2:卒業証書のコピーを確認し、選挙のたびに各報道機関へも本人から提供している。また、町長は元町職員であるため、採用試験時に最終学歴の証明書として提出している。

32屋久島町


<屋久島町>
調査依頼を受けて卒業証明書を確認

荒木耕治町長 亜細亜大学経済学部

A1:確認していなかった。

A2:1995年に旧上屋久町議選で初当選してから現在まで、「公に学歴が確認できる書面を示したことはない」との回答を得た。2025年8月14日、町長から卒業証明書の提示を受けて確認した。

33大和村


<大和村>
法的根拠を確認できない

伊集院幼村長 鹿児島県立大島高校

A1:確認していない。

A2:法的根拠を確認できていないため、現段階では確認の予定はない。村民から疑義などがあった場合は、村長自身が説明責任を果たすという意思を確認している。

34宇検村

<宇検村>
法的根拠を確認できない

元山公知村長 鹿児島県立大島高校

A1:確認していない。

A2:法的根拠を確認できていないため確認の予定はないが、住民から疑義などがあった場合は、村長自身が説明責任を果たすことを確認している。

35瀬戸内町

<瀬戸内町>
校友会名簿で確認

鎌田愛人町長 鹿児島測量専門学校

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:町長選の当選後に校友会名簿で確認している。

36龍郷町

<龍郷町>
調査依頼を受けて卒業証書を確認

竹田泰典町長 鹿児島県立大島工業高校

A1:確認していない。

A2:調査依頼のメールを受信後、町長から2025年8月22日に卒業証書の提示を受けて確認した。町長は町元職員であり、入庁の際に確認済と考えられることから、今まで卒業証書の提示を求めていなかった。

37喜界町

<喜界町>
元町職員で入庁時に確認

隈崎悦男町長 鹿児島県立喜界高校

A1:当選後、卒業を証明する文書は確認していない。

A2:町長は元町職員であり、入庁に際し卒業証明書を提出しているので、入庁した1983年2月の時点で確認している。

38徳之島町

<徳之島町>
調査依頼を受けて卒業証書の原本を確認

高岡秀規町長 玉川大学農学部

A1:確認していなかった。

A2:今回の調査依頼を受けて、2025年9月5日に卒業証書の原本を確認した。

39天城町

<天城町>
調査依頼を受けて卒業証書の原本を確認

森田弘光町長 明治大学政治経済学部

A1:確認していなかった。

A2:今回の調査依頼を受けて、卒業証書の原本を確認した。

40伊仙町


<伊仙町>
法的根拠なく確認していない

伊田正則町長 相模工業大学工学部

A1:確認していない。

A2:法的根拠がないため確認していない。ただし町長は、必要であれば大学へ確認して構わないと言っている。

41和泊町

<和泊町>
伊東市の件があり要検討

前登志朗町長 鹿児島県立錦江湾高校

A1:確認していない。

A2:今のところ確認する予定はない。ただし、伊東市の案件もあるので、検討する必要があるかと思っている。

42知名町

<知名町>
次回の町長選から確認する

今井力夫町長 高知大学

A1:確認していない。

A2:2025年12月にある次回の町長選から、学歴を証明する文書の提示を求める予定にしている。

43与論町

<与論町>
町民の皆様が知っている

田畑克夫町長 鹿児島県立与論高校

A1:確認していない。

A2:町民の皆様が知っているため、卒業証明書などの提示を求める予定はない。


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