合理的な理由なく取材を拒否する屋久島町議会【議会取材の自由を守る訴訟】
石田尾議長、取材拒否から一転して許可 → 理由を問われて説明拒否
法的根拠のない取材拒否は「憲法違反」

屋久島ポストは2021年11月に創刊して以来、約3年半にわたって屋久島町議会での取材を拒否されてきました。その理由は、同町議会の石田尾茂樹議長が一方的に「屋久島ポストは報道ではない」と決めつけたからです。
ところが2025年4月、取材の許可を求め続けてきた屋久島ポストに対し、石田尾議長は一転して許可を出しました。そして私たちは、なぜ拒否から許可に判断が変わったのか、その具体的な理由や法的根拠を尋ねたのですが、石田尾議長は回答を拒否しました。
マスコミには議会取材を許可する一方で、屋久島ポストを議会から排除するのであれば、それには合理的な理由と法的根拠が必要になります。しかし、石田尾議長がその説明責任を果たすことはありませんでした。
法的根拠を説明することなく取材拒否
一般市民の行動を制限する場合は、その判断に至った法的な根拠と理由がなくてはなりません。当然ですが、屋久島町民の代表が集う町議会のトップにはその責務があるのですが、石田尾議長は何も説明することなく、実質的に放置を続けています。
そんな石田尾議長の対応を正すために、屋久島ポストは5月17日、町議会を町の意思決定機関として所管する屋久島町(荒木耕治町長)を相手取り、「議会取材の自由を守る訴訟」を提起しました。
屋久島ポストが訴える主張の根幹を支えるのは、「法の下の平等」や「表現の自由」を保障した憲法です。
この記事では、私たちが訴状で記した、取材拒否から許可に転じた石田尾議長の判断に合理的な理由がなく、それが憲法違反につながるとする主張を紹介します。
*
「禁止」から一転「許可」の不合理
これまでの経緯で示したとおり、屋久島町議会の石田尾茂樹議長は2025年4月18日、約3年半にわたって「禁止」してきた屋久島ポストの議会取材について、一転して「許可」する旨を屋久島ポストに文書で伝えた。その回答を受けて、屋久島ポストは同町議会に質問状を出し、「禁止」から「許可」に変わった具体的な理由などを尋ねた。しかし、石田尾議長からは「傍聴席からの撮影・録音等については、屋久島町議会傍聴規則第9条の規定により、議長の許可要件であることから、この規定により不許可及び許可の決定を行っております」とだけ回答があり、一転して許可した具体的な理由について、屋久島ポストが知らされることはなかった。
■記事:「なぜ、取材拒否するの?」に対し屋久島町議会議長、具体的な理由説明を避ける
http://blog.livedoor.jp/yakushima_post/archives/38531308.html
「なぜ、取材を禁止したのか?」に回答拒否
憲法21条で保障された「表現の自由」や「取材の自由」の権利を制限する場合は、その判断に合理的な理由がなくてはならない。屋久島ポストは「なぜ、取材が禁止されたのか?」、そして「なぜ、一転して許可されたのか?」という純粋な疑問を解き明かすために、石田尾議長に質問状を出したのだが、それに対し、石田尾議長は具体的な理由を説明することなく、実質的に回答を拒否した。
つまり、明確な理由説明がないということは、石田尾議長には取材を禁止した合理的な理由がなかったということであり、禁止した判断が間違っていたということを、自ら認めた証左である。「禁止」から「許可」に一転したのであれば、その判断には理由があり、憲法で保障された権利を制限していたのであれば、石田議長には説明責任があることは言うまでもない。
■記事:屋久島町議会議長、取材禁止の判断に法的根拠「全くない」http://blog.livedoor.jp/yakushima_post/archives/38518207.html
理由なく拒否は「議長の裁量権を大きく逸脱」
よって、屋久島ポストの議会取材を禁止した石田尾議長の判断は、同町議会の議長に与えられた裁量権を大きく逸脱したものであり、「法の下の平等」を保障した憲法14条および「表現の自由」を保障した憲法21に違反したものであることは明らかである。
また、石田尾議長が屋久島ポストに取材許可を与えた期間が2025年6月の定例会から同年9月30日までであったことから、その後に再び禁止される可能性があるため、屋久島ポストはこの訴訟で取材禁止の違法性を明らかにしたいと考えている。さらには新聞の発行部数が激減し、新聞各社の経営状態が悪化している状況下で、南日本新聞が2024年4月から常駐記者を同町から撤退させていることから、以前にも増して、屋久島ポストによる調査報道の必要性は高まっているといえる。
国家賠償法等に基づき「1円」を賠償請求
屋久島ポストは憲法14条および同21条で保障された権利を制限され、石田尾議長の判断によって、屋久島町議会での取材を不当に禁止された。屋久島町は同町議会を所管する地方公共団体であり、屋久島ポストの共同代表2人が負った精神的な損害を賠償する義務を負っていることから、国家賠償法1条1項および民法709条の規定に基づいて、屋久島ポストは同町に対し、慰謝料として金1円を請求する。
【動画】屋久島ポストの取材を拒否する屋久島町議会の石田尾茂樹議長。議員席から拒否する理由を問われたが、石田尾議長は「傍聴規則です」「議長判断です」とだけ言って、明確な理由は説明しなかった=2021年12月7日、屋久島町議会