「1円訴訟」で憲法が保障する「法の下の平等」「表現の自由」を守ります【議会取材の自由を守る訴訟】
屋久島町議会、フリー記者やネットメディアの取材を拒否 → 屋久島ポスト、マスコミだけに取材許可は「フリー記者や作家らに対する差別」

【左】議員席から取材を拒否する理由を問われた後、手を出して町議の発言を制止する屋久島町議会の石田尾茂樹議長=2021年12月7日、屋久島町役場議会棟
屋久島ポストは5月17日、フリーランスの記者や独立系ネットメディアなどの取材を拒否している屋久島町議会の対応を正すために、同町議会を所管する屋久島町を相手取り、「議会取材の自由を守る訴訟」を提起しました。鹿児島地裁に提出した訴状には、この訴訟を提起する意義として、次のような説明をしました。
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この訴訟は、屋久島町民の有志が運営する市民メディア「屋久島ポスト」に対し、屋久島町議会(石田尾茂樹議長)が正当な理由がないにもかかわらず、傍聴席での取材(写真・ビデオ撮影と録音)を禁止したことについて、「法の下の平等」を保障した憲法14条および「表現の自由」を保障した憲法21条に違反するとして、同町議会を町の意思決定機関として所管する屋久島町(荒木耕治町長)を提訴するものです。
議長、取材禁止の理由説明なし
同町議会は、屋久島町議会傍聴規則の9条「傍聴人は、傍聴席において写真、映画等を撮影し、又は録音等をしてはならない。ただし、特に議長の許可を得た場合は、この限りでない。」との規定に基づいて、鹿児島県の地元紙「南日本新聞」をはじめとするマスコミ各社に対して、特別に取材の許可を出しています。
その一方、同町議会は「屋久島ポストの活動は報道とは認められない」と断じて、2021年11月から約3年半にわたり、屋久島ポストが傍聴席で取材することを禁止してきました。しかしながら、同規則には取材の許可をマスコミの報道機関だけに限定するという規定はありません。それゆえ、取材を禁止する場合は、許可申請者がマスコミか否かということとは別に、その判断に至った理由説明が必要となりますが、同町議会が屋久島ポストに具体的な理由を伝えたことはなく、禁止した法的根拠を示すこともありませんでした。
変わるメディア環境、マスコミだけに許可は「知る権利を侵害」
近年、インターネットの発達によって、新たなネットメディアが次々と生まれ、一般市民はマスコミだけでなく、多種多様なメディアから情報を得るようになっています。フリーランスの記者や独立系ネットメディアはマスコミの記者たちと同様に取材し、多くの市民に情報を届けています。その一方、南日本新聞は常駐記者を同町から撤退させており、屋久島町政を身近に取材するマスコミの記者はいなくなりました。このようにメディアの環境が大きく変わるなかで、地方自治体の議会が合理的な理由を説明することなく、取材許可をマスコミだけに限定すれば、市民の知る権利を侵害することは明らかです。
議会での取材をマスコミだけに限定する同町議会の判断は、マスコミに属さない記者や作家、一般市民らを差別するものであり、「法の下の平等」を保障した憲法14条に反するものです。さらには、屋久島ポストが議会で自由に取材する機会を奪うものであり、これが「表現の自由」および「報道の自由」を保障した憲法21条に抵触することは明らかです。
以上を踏まえ、屋久島ポストは、これら憲法で保障された当然の権利を守り、同町議会に二度と同じ判断をさせないために、この訴訟を提起しました。
なお、屋久島町に対する損害賠償の請求額を「金1円」としたのは、この訴訟の目的が金銭的な損害を回復するものではなく、憲法で保障された当然の権利を守ることが理由であることを申し添えておきます。
屋久島ポスト 共同代表
鹿島幹男 武田 剛