【特報】垂水市の公共施設で児童10人が盗撮被害/鹿児島ポスト
垂水市、謝罪や再発防止策ないまま約9カ月間「事件を放置」
業務委託先の元職員、児童ポルノ禁止法違反などで有罪
被害者側、尾脇市長に調査と検証などを要望

垂水市のウェブサイトに掲載された市のマークなど
鹿児島県垂水市が設置する公共施設で2024年9月に盗撮事件が発生し、児童10人が被害に遭っていたにもかかわらず、市が被害者側に謝罪や補償をせず、再発防止策も講じていなかったことが6月9日、市民メディア「鹿児島ポスト」の取材でわかった。
盗撮したのは市が業務を委託する管理運営団体の男性職員(当時)で、今年1月に児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)などの罪で有罪が確定。だが、その後も「市が事件を放置している」として、保護者の有志が尾脇雅弥市長に申入書を提出し、事件の調査と検証をしたうえで、市として再発防止策を講じることを求めている。
盗撮事件があったのは、垂水市が設置する公共施設で、同市内の公益社団法人が市から業務委託を受けて、管理と運営を任されている。
更衣室で水着に着替える児童を盗撮
鹿児島ポストの取材によると、同法人で勤務していた30代の職員Aは2024年6月~8月、児童が水着に着替える様子を撮影する目的で、公共施設の更衣室内に盗撮用のカメラ4台を設置し、盗撮した映像データを小型メモリーカードに保存した。その後、施設を利用した児童が更衣室内で盗撮用のカメラを発見したことを受けて、同法人は同年9月12日に警察に通報した。
事件が発覚したため、職員Aは同日、盗撮した映像データを保存したパソコンやスマートフォンなどを海に投げ捨てたのち、翌9月13日に警察署に自首して逮捕された。その後に起訴された職員Aは2025年1月14日、児童10人を盗撮したとして、性的姿態撮影等処罰法違反(撮影)と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の罪で、懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を受けた。
約4年にわたる盗撮、さらに多くの被害か?
職員Aが盗撮を始めたのは2020年ごろで、公共施設に更衣室を設置する工事を担当した際に、室内に盗撮用のカメラを取り付けた。2023年に更衣室のリフォーム工事をした際にもカメラを増設しており、約4年にわたって盗撮を続けていた。今回の事件で立件されたのは児童10人に対する盗撮だが、実際にはさらに多くの被害者がいたとみられる。

垂水市役所(鹿児島県ウェブサイトより)
市、再発防止策ないまま業務委託を継続
事件関係者によると、盗撮が発覚した2024年9月から約9カ月間にわたり、垂水市が被害者側に謝罪したことはなく、盗撮事件があった事実について、市のウェブサイトや広報誌で公表することもなかった。また、市は再発防止策を講じないまま、2025年度も同法人と随意契約で業務委託を継続した。
法人、補償ないまま保護者説明会を打ち切り
一方、職員Aに対する雇用者責任がある同法人は、これまで被害者側に対して数回の保護者説明会を開き、一度は示談金で補償する意向を伝えていた。だが、5月28日にあった説明会では、初めて同法人の再発防止策を示した一方、補償については、被害者側から求めがあれば、個別に対応する旨を説明。今後は説明会を開く予定はないと伝えたという。
保護者、市長に「盗撮事件に係る申入書」
これらの経緯を踏まえ、保護者の有志は6月3日、「盗撮事件に係る申入書」を尾脇市長あてに送付。垂水市の姿勢に対して「事件を放置するような対応」だとして、次の4点を要望した。
1 盗撮事件の調査と検証
2 市民への報告と謝罪
3 再発防止策を講じて市民に公表
4 垂水市として事後対応が遅れた理由説明市、取材に対しコメントは「庁内で協議中」
鹿児島ポストの取材に対し、事件があった公共施設を所管する垂水市保健課は、保護者有志からの申入書を受け取ったことを認めたうえで、「慎重な対応が必要であるため、(市としてのコメントなどは)庁内で協議中です」と回答。また、盗撮をした職員Aを雇用していた同法人は、取材に「事件に関して被害者への二次被害を避けるため、弁護士に相談のうえ、ご回答差し上げたいと思っております」としている。
仙台市の公共施設でも盗撮事件
今回と類似した事件は、2023年7月に宮城県仙台市の児童館で起きており、同市はウェブサイトで事件について公表し、経過や事後対応、再発防止策などについて市民に広報している。
仙台市のウェブサイトや読売新聞の報道によると、同市が設置する児童館で2023年7月28日、女子児童が着替えをする部屋で、動画撮影中のスマートフォンが箱の中から発見された。その後、回収したスマートフォンが盗まれたため、市が管理運営を委託する団体は警察への通報を見送ったのち、約1カ月後に市に報告。市の指示を受けて、同団体は警察に被害届を出し、保護者説明会で謝罪した。
事件の発覚を受けて、仙台市児童クラブ事業推進課の課長は、読売新聞の取材に「このような事態を招き、おわび申し上げるとともに再発防止策を徹底する」と陳謝したという。
■仙台市ウェブサイト
https://www.city.sendai.jp/kodomo-suishin/050908_kisyahappyo.html
■読売新聞記事
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230908-OYT1T50348/