「不適法」海底清掃の実績がない業者と独占契約 屋久島町 海底清掃事業・住民訴訟
観光ガイドブック出版が専門のJTBパブリッシングと海底清掃で特命随意契約
【上左】海底清掃事業を請け負ったJTBパブリッシングが入るJTBグループのロゴとスローガン(Wikimedia Commons より)【上中】屋久島町「ふるさと納税」のロゴ(町ウェブサイトより)【右】ふるさと納税の寄付金で屋久島町が制作した観光ガイド冊子「るるぶ特別編集
屋久島」【下左】屋久島町役場
ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報などを紹介するガイド冊子や動画の制作費に支出された問題――。
この事業への支出が、ふるさと納税の寄付金の使途を定めた「屋久島町だいすき寄附条例」に違反しているなどとして、同町議会の渡辺千護町議は8月に住民訴訟を提起。町に対して、事業に支出した約1700万円を荒木耕治町長ら町幹部3人に賠償請求するように求めている。
屋久島ポストは訴状に基に、渡辺町議の主張を複数回にわたって紹介。3回目は「不適法な特命随意契約」について、その詳細を以下に伝える。
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この海底清掃事業で屋久島町は、複数の業者が参加する競争入札を実施することなく、独占的にJTBパブリッシング(本社・東京)を業務委託業者に選び、特命随意契約を結んだ。
その理由として町は、この事業の契約を検討する際に作成した「契約伺い文書」で、「本事業の遂行にあたっては、これまで同様の事業を数多く手掛けている株式会社JTBパブリッシングに委託することで、効率的かつ効果的な事業遂行」などが期待できると明記。地方自治法施行令第167条の2第1項第2号(*1)の規定を適用し、海底清掃などを「数多く手掛けている」JTBパブリッシングと特命随意契約を締結するとした。
しかし、JTBパブリッシングは主に観光ガイドブックの出版を専門とする会社であり、過去に海底清掃事業を実施した実績がないことから、町がJTBパブリッシングと特命随意契約を結ぶ理由はなかったといえる。
JTBパブリッシングが毎年発行している「るるぶ」の「奄美 屋久島 種子島」の表紙(※著作権保護のため、報道目的で必要な雑誌のタイトル以外はモザイク加工をしています)
「情報発信を専門とする出版社は全国に多数ある」
また、町はJTBパブリッシングに送付した仕様書のなかで、この事業の目的は「屋久島だいすき基金の事業区分『世界自然遺産をはじめとする地域の環境保全に関する事業』の一環として、海底清掃事業を実施し、本基金が環境保全に活用されていることを島内外に発信することで、関係人口の増大を図る」と明記した。この目的のなかで「本基金が環境保全に活用されていることを島内外に発信すること」については、出版社であるJTBパブリッシングが専門とする分野ではあるが、情報発信を専門とする出版社は全国に多数あり、これを特命随意契約の理由にできないことは明らかである。
屋久島町がJTBパブッシングに送った仕様書の一部
「ふるさと納税に関わる事業は主目的ではない」
さらに、町は契約伺い文書のなかで、JTBパブリッシングが旅行大手JTBの関連会社であることから、「本町のふるさと納税の中間事業者である株式会社JTBふるさと開発事業部と連携し、情報発信することで、町民や観光客などの環境意識の醸成、関係人口の創出・拡大や、新たな返礼品開発も見込まれるなど相乗効果も期待できます」と明記した。しかし、この事業は海底清掃を主目的とした環境保全事業であり、ふるさと納税に関わる事業を主目的としていないことから、これについても特命随意契約の理由にはできない。
屋久島町がJTBパブリッシングに業務委託して発行した観光ガイド冊子には、ふるさと納税の返礼品が紹介されている
以上を踏まえると、町がJTBパブリッシングを「余人をもって代え難き業者」だとして、特命随意契約を結ぶ合理的な理由はなく、この事業の業務委託契約は、随意契約の条件を定めた地方自治法施行令第167条の2第1項第2号(*1)に違反していることは明らかである。
*1) 地方自治法施行令第167条の2第1項第2号(随意契約によることができる場合)
不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。