屋久島町議会の取材拒否は不都合な報道への「取材妨害」【議会取材の自由を守る訴訟】
虚偽領収書による不正精算 国会議員らへの高額贈答 → 屋久島ポストの報道なければ今でも継続
「憲法21条『表現の自由』に反する議長裁量権の濫用」

屋久島ポストの活動は「報道とは認められない」――。
そう断じて、屋久島町議会の石田尾茂樹議長は約3年半にわたり、屋久島ポストの議会取材を拒否し続けてきました。しかし、私たちが配信した記事によって、不正や不祥事が続く屋久島町政は少しずつ改善されています。
町役場と町議会の幹部らが出張する際に、実際の航空券代より高額な金額が書かれた虚偽の領収書で精算していた出張旅費不正精算事件では、少なくとも15枚の虚偽領収書が発行されていたことが、屋久島ポストの取材で判明しました。
■記事:不正精算14件、すべて同じ旅行会社が領収書を発行http://blog.livedoor.jp/yakushima_post/archives/29151240.html
水道工事の国庫補助金を不正請求した事件では、町が国に虚偽の工事実績報告をしていたことが取材で明らかになり、厚生労働省は町に補助金など約1668
万円の返還命令を出しました。
■記事:厚労省が補助金適正化法違反を認定http://blog.livedoor.jp/yakushima_post/archives/28896288.html
荒木耕治町長が国会議員らに高額な贈答を続けていた町長交際費問題では、屋久島ポストの報道を受けて住民訴訟が提起された結果、最高で年126
万円だった町長交際費の支出は、年16
万円にまで激減しました。
■記事:町長交際費が激減 最盛期の126万円から16万円にhttp://blog.livedoor.jp/yakushima_post/archives/35515832.html
マスコミが取材しない問題を報道
これらの他にも屋久島ポストは、町にとっては不都合な数々の問題を報じており、その大半は鹿児島県の地元紙「南日本新聞」などのマスコミ各社が取材しないものばかりです。つまり、屋久島ポストが取材しなければ、今でも町役場には虚偽の領収書が出回り、町民のお金で国会議員らに高額な贈答が続けられていたということです。
それにもかかわらず、石田尾議長はフリーランスの記者やネットメディアに対して取材拒否を続けています。そこで、屋久島ポストは5月17日、この議長判断の違法性を問うために、町議会を町の意思決定機関として所管する屋久島町を相手取り、「議会取材の自由を守る訴訟」を提起しました。
屋久島ポストが訴える主張の根幹は憲法違反です。
そのなかから、この記事では「表現の自由」や「取材の自由」などを保障した憲法21条を踏まえて、私たちが訴状に記した主張を伝えます。
【動画】屋久島ポストの取材を拒否する屋久島町議会の石田尾茂樹議長。議員席から拒否する理由を問われたが、石田尾議長は「傍聴規則です」「議長判断です」とだけ言って、明確な理由は説明しなかった=2021年12月7日、屋久島町議会
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憲法21条「表現の自由」に抵触
憲法21条1項は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と定め、すべての国民に等しく「表現の自由」や「言論の自由」を保障している。そのなかには「報道の自由」や「取材の自由」も含まれると解釈され、これらの権利についても、マスコミの報道機関であるか否かにかかわらず、フリーランスの記者や作家、独立系ネットメディアなどを含む、すべての国民に保障された権利である。
石田尾議長による取材妨害と推察
この国民が等しく有する権利に基づいて、屋久島ポストは屋久島町議会の取材許可を求めたが、石田尾議長の判断によって禁止された。取材が許可されなかった理由は、屋久島ポストの活動が「報道とは認められない」ということだが、これは石田尾議長が独自の基準で決めた判断であり、到底容認することはできない。さらに屋久島ポストは、石田尾議長に特別の意図があり、恣意的に屋久島ポストの取材を妨げていると推察している。
傍聴席「ガラ空き」なのに取材拒否
屋久島ポストは、行政機関である屋久島町役場および同町議会を監視することを主な目的にして、調査報道を続けている。そのため、報道の内容は自ずと町役場と町議会に厳しいものとなり、石田尾議長が町長選で応援している荒木町長の責任を追及する結果にもなる。屋久島ポストが配信する記事は、南日本新聞を含めたマスコミが積極的には報じないものが大半であり、もし屋久島ポストが取材しなければ、誰にも知られていなかった問題である。
それゆえに、屋久島ポストとしては、石田尾議長が屋久島ポストの報道を抑え込むことを目的にして、議会での取材を妨害しているのではないかという疑いをもっている。同町議会の傍聴席は常に「ガラ空き」の状態であり、取材記者の人数を制限する必要は全くない。屋久島ポストの報道は、事実に基づいた正確なものであり、結果的に不正や不祥事が続く町役場の体質改善につながっている。これらの事実を踏まえると、屋久島ポストの活動が「報道とは認められない」と断じられる合理的な理由はなく、町役場と町議会に不都合な報道を抑え込むために、石田尾議長が取材を妨害しているのではないかと疑わざるを得ない。
石田尾議長、取材を自由に認める提案を自ら排除
また、傍聴規則の見直しのために、2022年2月21日に開かれた議会運営委員会の事前協議で、当初は同委員会に提案される予定だった「傍聴席での撮影と録音を一般町民も含めて自由に認める」という案が、石田尾議長の反対で外されたことについても、屋久島ポストは大きな疑いをもっている。岩川卓誉副委員長(当時)が北海道白老町の先行事例を見つけて、傍聴規則の見直し案の一つとして挙げたのであれば、同委員会の協議によって候補案の可否を決めるべきところである。しかしながら、石田尾議長は自ら反対の意を唱えて、一方的に見直し案の候補から外すように岩川副委員長に指示をしている。この客観的な事実からも、石田尾議長には屋久島ポストを議会取材から排除したいという思惑があったと言わざるを得ない。
よって、石田尾議長が屋久島ポストの取材を禁止し、憲法21条で保障された権利を制限する合理的な理由はなく、違憲審査の判断基準となる「厳格な合理性」もないことから、石田尾議長の判断は違憲であり、議長裁量の濫用であることは明らかである。