【詳報】選挙買収をチェックする領収書を自作「認識があまかった」 選挙運動領収書問題

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岩川卓誉町議、選挙運動報酬の領収書に自ら宛名や報酬金額、但し書きを記入

宛名)岩川たくのり②
【上】岩川卓誉町議が選挙運動費用収支報告書に添付した領収書。自身で宛名や但し書き、報酬金額を書いていた。署名捺印の箇所は選管が黒塗りして開示した
【下】領収書に書かれた同一筆跡の宛名。すべて岩川卓誉町議が自ら書いていた

 法定を超える高額な報酬で有権者を買収していないか。それらを確かめる選挙運動費用収支報告書に、選挙運動の報酬を支払った側の町議が自ら作成した領収書を添付していた――。

 屋久島町の岩川卓誉町議(35)2021年の町議選で、偽造した選挙運動報酬の領収書を添付して、「選挙運動費用収支報告書」を町選挙管理委員会に提出していたことが屋久島ポストの取材でわかった。岩川町議は取材に対し、自分で用意した複数の領収書に自ら宛名や但し書き、報酬金額などを記入したことを認めた。署名捺印については、報酬を受け取った選挙運動員からもらっていたという。報酬を支払った側が領収書を作成する行為は違法となる疑いがあり、岩川町議は「認識があまかった。選管に相談して、しかるべき対応をしたい」としている。

複数の領収書に同一筆跡の「岩川たくのり」「車上運動員」

 屋久島ポストが町選挙管理委員会に開示請求した選挙運動費用収支報告書によると、岩川町議は20219月に実施された町議選で、選挙運動の報酬として合計で12人に378000円を支払った。そのうち、銀行振り込みをした1人を除き、11人に計11枚の領収書を発行した。

 岩川町議の報告書を踏まえ、添付された11枚の領収書を屋久島ポストが調べたところ、その大半で宛名の「岩川たくのり」、但し書きの「車上運動員」の筆跡が酷似していた。また、報酬の金額や受け取った年月日については筆跡が混在しているが、複数の領収書で酷似した筆跡がみられた。
但書)車上運動員
領収書に書かれた「車上運動員」という同一筆跡の但し書き

署名捺印と住所は「選挙運動員からもらった」

 領収書の筆跡が酷似している問題について、岩川町議は111日に取材に応じ、すべての領収書を町議側で用意して、その大半で宛名や但し書き、報酬金額を自らが書いたことを認めた。一方、署名捺印と住所については、報酬を受け取った選挙運動員に領収書の内容を確認してもらったうえで、それぞれに書いてもらったという。

報酬の領収書、選挙買収をチェックする重要な証拠

 公職選挙法188条では、「選挙運動に関するすべての支出について、支出の金額、年月日及び目的を記載した領収書その他の支出を証すべき書面を徴さなければならない」と規定。さらに同法189条で、選挙運動の支出を証明する領収書などの写しを添付した選挙運動費用収支報告書を選挙管理委員会に提出することが定められている。

 そのなかで、選挙運動報酬の領収書については、法定上限となる「車上運動員」の115000円、「選挙事務員」の11万円を超えて報酬を支払っていないかを確認するために添付しており、選挙買収をチェックするうえで重要な証拠となる。また、報酬を支払った側が領収書を作成する行為は、刑法(私文書偽造等)などに違反する疑いもある。

国政で続く政治家の領収書問題

 選挙運動の領収書をめぐっては、2019年の参院選で自民党の河井案里参院議員(当時)が車上運動員の領収書を2枚に分ける工作をし、法定上限の2倍となる3万円を支払ったとして、公選法違反(買収)の疑いで逮捕された。



   また、2021年の衆院選で岸田文雄首相の後援会が選挙運動費用収支報告書に宛名や但し書きがない多数の領収書を添付したとして、岸田首相ら関係者が昨年11月に刑事告発されている。

 さらに、政治資金をめぐる問題で昨年11月に総務相を辞任した寺田稔衆院議員は、自身の後援会が政治資金収支報告書に添付した11枚の領収書について、宛名の「寺田稔」という筆跡が酷似しているとして、国会などで追及された。


屋久島町、出張旅費の虚偽領収書を放置

 一方、屋久島町では、2019年末から続く町幹部らによる一連の出張旅費不正問題で、当時の副町長や町議会議長らが実費より高い航空券代が記載された虚偽領収書で旅費精算していたことが判明。少なくとも15件の出張で虚偽領収書が使われていたが、町は第三者による調査をせず、町議会も不正調査の百条委員会設置案を5回にわたって否決して、この問題を放置し続けている。

「選管に相談して、しかるべき対応をしたい」

 自身で領収書を作成したことについて、岩川町議は取材に「自分の認識としては、(選挙運動員から)住所と名前、捺印をいただくことに重きを置いていた」と釈明。その一方で、国政や町政で領収書をめぐる問題が続いていることを踏まえ、「町議会議員として疑念を持たれる行為で認識があまかった。選管に相談して、可能であれば修正報告をするなどして、しかるべき対応をしたい」としている。


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  1. 屋久鹿♀

    然るべき対応は⁉️
    辞職しかないと思いますけど?
    でも、町議のリーダーが……
    自分もこの程度なら逃げ切れると思うのでしょうね(悲)

  2. 浅はかです

    この問題は、従来どうりに立候補者の自己資金で賄うのであればさほど厳しく追及する事ではなかったかも知れない事案であろう。
    昨年度から議員選挙も公費で賄えるように為った以上、清廉潔白に処理すべきで有る事は当然である。
    今回の件は、その様な気持ちではなかったかも知れないが、町長候補としての自己意識を持ち合わせて居るのであれば、慎重でなければならないし、清廉潔白な人間でなければなりません。
    「清濁合わせ飲む」と言う政治家の言葉が有るが
    今回の様な濁りは行けません。

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