代船費用1億1550万円、鹿児島県の協力なく全額を屋久島町が負担 フェリー屋久島2運休問題
町と運航業者、国と県に財政支援を要請 ➡
県「県は主体になり得ない」➡ 町、貯金の財政調整基金を切り崩して1億1550万円を確保
【左上】代船の貨物船「ぶーげんびりあ」(鹿商海運ウェブサイトより)【左下】屋久島町役場【右】鹿児島県庁(WikiMedia Commonsより)
屋久島町と鹿児島市を結ぶ「フェリー屋久島2」(折田汽船)が故障で無期運休となっている問題をめぐり、代船として運航している貨物船「ぶーげんびりあ」(鹿商海運)の業務委託費1億1550万円(12月~1月分)について、町は鹿児島県に財政支援を求めていたが、県交通政策課から「県は主体になり得ない」と言われ、協力が得られなかったことが1月24日、屋久島ポストの取材でわかった。

故障で無期運休中の「フェリー屋久島2」(折田汽船ウェブサイトより)
町、県に文書で「運航費用の一部を県に負担してほしい」
町への情報公開請求で開示された記録文書によると、荒木耕治町長は2024年11月16日、鹿商海運を傘下にもつ「いわさきコーポレーション」(岩崎産業)の社長から電話を受け、「ぶーげんびりあ」の運航費用は1回500万円(税抜き)と提示された。その後、荒木町長は11月18日に鹿児島県交通政策課を訪ね、「本来、代船対応は折田(汽船)が担うべき」「個々に企業とは話をしているが限界があることから、県に交通整理をしてほしい」と依頼した。それに対し、県交通政策課長は「折田(汽船)には法的な責任はない」「岩崎(産業)の料金設定についても違法性はない」との認識を示したうえで、「行政支援について町として覚悟はあるのか」と質問。荒木町長は「最終的にはやらざるを得ない」と答えたという。
その後、町は12月3日に県交通政策課に文書を出し、「運航費用の一部を県に負担してほしい」「町が負担した部分を特別交付税で措置いただきたい」と要望した。
岩崎産業側「町が基金を取り崩す必要ない」
さらに、岩川茂隆副町長が12月5日に岩崎産業の本社を訪ねたところ、岩崎産業側から「町が(財政調整)基金を取り崩して契約する必要はない」「今から(県)交通政策課が来てどう考えているか聞くので、町から金を出すという話は控えた方がいい」と言われた。その後、県の担当者も協議に加わったが、県交通政策課長は「(岩崎産業の)社長は国県で担保できないのかを聞いている」としながも、「県は本件について主体になり得ない」として、最終的に県からの協力は得られなかったという。
町、運航1回550万円で計21回分の予算確保
これらの協議を踏まえ、町は12月20日、代船の運航を1回550万円、12月~1月の計21回分として、「船舶運航及び荷役業務委託費」1億1550万円を盛り込んだ一般会計補正予算案を提案し、町議会で承認を受けた。財源は、町の「貯金」にあたる財政調整基金を切り崩して確保した。
