代船運航1回550万円、見積書なく口頭のやり取りだけで予算決定 フェリー屋久島2運休問題
屋久島町、550万円の根拠は「鹿児島~種子島間の経費440~495万円」➡ 業者の貨物収入を引いた「330万円が上限」と要望も受け入れられず
【左】鹿児島県庁(WikiMedia
Commonsより) 【右上】運休が続いているフェリー屋久島2(折田汽船ウェブサイトより)【右下】屋久島町役場
屋久島町と鹿児島市を結ぶ「フェリー屋久島2」(折田汽船)が故障で無期運休となっている問題をめぐり、町が代船「ぶーげんびりあ」(鹿商海運)の運航費を1回550万円と決める際に、運航業者から見積書などを取ることなく、口頭のやり取りだけで予算を計上していたことがわかった。予算の根拠として町は、鹿児島~種子島間の必要経費が440~495万円で、それより屋久島は距離が長いためだと説明。だが、貨物運搬で業者側に220~275万円の収入があることから、町は330万円を上限にしたいと要望したが、鹿児島県や業者との協議では受け入れられなかった。
代船の貨物船「ぶーげんびりあ」(鹿商海運ウェブサイトより)
荒木町長、岩崎産業社長から電話で「運航1回500万円」提示
町への情報公開請求で開示された記録文書によると、荒木耕治町長は2024年11月16日、鹿商海運を傘下にもつ「いわさきコーポレーション」(岩崎産業)の社長から電話を受け、「ぶーげんびりあ」の運航費は1回500万円(税抜き)と提示された。
それを踏まえて、町は12月3日付で県交通政策課に文書を提出し、運航1回500万円(同)の根拠について、「鹿児島~種子島間の必要経費400~450万円(同)に距離が長いことを追加したものだと聞いている」と説明。また、1回の運航で業者側の「貨物収入は200~250万円(同)との情報も得た」として、必要経費から貨物収入を差し引いた「300万円(同)が上限」などと、町からの要望を伝えた。
さらに、町は県に対して「運航費用の一部を県に負担してほしい」「町が負担した部分を特別交付税で措置していただきたい」と訴えた。
岩崎産業側「県が運航費を負担すべき」
その後、岩川茂隆副町長が12月5日に岩崎産業の本社を訪ねたところ、岩崎産業側からは、県が運航費を負担すべきだとする趣旨の説明があった。だが、その後に協議に加わった県交通政策課長は「県は本件について主体になり得ない」と主張。上限を300万円(同)とする町からの要望も受け入れられず、最終的に運航費は1回500万円(同)となった。
代船の業務委託費として1億1550万円を盛り込んだ補正予算案について説明する屋久島町の荒木耕治町長(2024年12月20日、屋久島町議会YouTubeチャンネルより)
町、貯金を切り崩して1億1550万円を確保
県と岩崎産業側との協議を踏まえ、町は町議会12月定例会に代船の「船舶運航及び荷役業務委託費」を盛り込んだ補正予算案を提出し、運航1回550万円、12月~1月の計21回分として1億1550万円の予算承認を受けた。一般会計予算には余剰金がないため、町は「貯金」にあたる財政調整基金を切り崩して財源を確保した。