初ウェブ裁判、落ち着き払った町側弁護士の表情がよく見えて「やや不安」に【議会取材の自由を守る訴訟】
争点整理、取材の禁止=撮影と録音の禁止 「約3年半の取材禁止」は議会と日付を特定へ
第1回弁論準備手続き 鹿児島地裁

屋久島町議会(石田尾茂樹議長)が市民メディア「屋久島ポスト」の議会取材を拒否しているのは、「表現の自由」などを保障した憲法に違反しているとして、屋久島ポストが町を相手取って提起した「1円訴訟」――。
この訴訟の第1回弁論準備手続きが9月18日、鹿児島地裁と原告および被告の3者を結んだウェブ会議で開かれました。原告側は屋久島ポスト共同代表の鹿島幹男と武田剛、被告側は町代理人の新倉哲朗弁護士(和田久法律事務所)が、それぞれ出席。裁判長の前原栄智判事ら2人の裁判官とともに、今後の裁判の進め方について協議をしました。
 弁論準備手続きとは、訴訟の争点や証拠を整理するために開かれるものです。原告と被告が主張や立証をする口頭弁論が公開の法廷で開かれるのに対し、弁論準備手続きは非公開で行われ、訴訟の当事者しか参加できません。
「経験豊富な法律の専門家と互角に闘えるのか」
 それゆえに、いつもは傍聴席でしか取材できない私たちにとって、今回は弁論準備手続きの様子を初めて知る機会となりました。しかもウェブ会議ということで、どのように審理が進められるのか興味津々だったのですが、いざ始まってみると、法廷で開かれる口頭弁論とさして変わりがありませんでした。ただ一つ大きく違ったのは、パソコンの画面上で町側弁護士の落ち着き払った表情がよく見えたことで、「果たして、経験豊富な法律の専門家と素人の私たちが互角に闘えるのか」と、やや不安になってしまいました。

鹿児島地方裁判所=2025年8月、鹿児島市山下町、屋久島ポスト撮影
争点はシンプルに
 そしてウェブ会議が始まると、冒頭で裁判長から「議会で『取材』を禁止されたという主張は、『撮影と録音』を禁止されたという理解でいいか」と質問されました。それに対し私たちは、「議会閉会後に議場で町議のインタビューを撮影することも禁止され、それについても取材の自由を侵害されたと考えている」と主張しました。ですが、裁判長から「争点が複雑になる」と指摘されたため、「取材の禁止」=「撮影と録音の禁止」ということで了承しました。
「約3年半の取材禁止」ではあいまい
 次に問題とされたのは、「どの会議での取材の禁止が違法行為にあたるのか」ということでした。
私たちは「2021年12月7日の定例会本会議」と「2023年8月23日の全員協議会」における取材禁止を主体として、「2021年12月7日から2023年4月18日までの約3年半にわたり、同町議会の本会議及び全員協議会の取材を禁止されたこと」について、その違法性を主張していました。しかし、裁判長から「約3年半という主張では、違法行為を特定できない」と指摘されたため、実際に取材を禁止された会議や日付を具体的に示して、次回の準備書面で主張することになりました。
町には本会議と全員協議会の説明を求める
 また、町議会の本会議と全員協議会について、裁判長から「(法的および制度的な)位置付けや枠組みを説明してほしい」と求められたため、これについては町側が次回の準備書面で主張することになりました。
私たちにとっては、初めての弁論準備手続きでしたが、わずか15分ほどで終わってしまいました。もし、これがウェブ会議ではなく、鹿児島市内の地裁で行われていたら、高速船代やホテル代で痛い出費となっていたので、本当に助かりました。
次回の期日は10月23日午前10時30分からで、今回と同様にウェブ会議での弁論準備手続きとなります。
※「屋久島ポスト」は訴訟の当事者であるため、この【議会取材の自由を守る訴訟】については、記事の文体を「です、ます調」にしたうえで、主観を入れた体験取材記の体裁にしています。

 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											