町、解決金173万円の和解に弁護士費用165万円【訴訟の町③】屋久島町長選2023
荒木町長、民事調停を提案せずに提訴を要求 ➡ 町診療所の予防接種で体調不良の町民、和解金173万円の大半を弁護士費用に
町、解決金と弁護士費用で計338万円支出
【上】屋久島町役場【下】鹿児島地裁(裁判所ウェブサイトより)
山海留学の体罰訴訟などに始まり、荒木耕治町長が治めた3期12年の屋久島町は、法的な争いが続く「訴訟まみれの町政」だった。訴訟の数は実に6件もあり、そのうち、すでに4件で町に一定の責任があるとする司法判断が下され(1件は町が高裁に控訴中)、1件は地裁で係争中だ。
今年11月に荒木町長が任期満了を迎えるのを前に、現町政で続いた訴訟について振り返り、その問題を連載で検証する。3回目は、町立診療所で受けた予防接種が原因で体調不良になった町民に対して、町が173万円の解決金を支払って和解した訴訟を取り上げる。
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なぜ町は民事調停をしなかったのか?
屋久島町立の診療所で受けたインフルエンザの予防接種が原因で体調不良になった町民は2021年3月、町から173万円の解決金を受け取って和解した。だが、解決金の大半は損害賠償請求訴訟の代理人を頼んだ弁護士の費用に消えて、手元にはほとんど残らなかったという。
ここで疑問なのは、なぜ町民が訴訟を提起しなければいけなかったのか、ということだ。
この町民を支援した町関係者によると、町は提訴の前から一定の責任を認めていたが、それでも町民に対して、訴訟を提起するように求めた。その理由として町は、賠償金の金額を決めるためには、裁判によって司法の判断を仰ぐ必要があると説明したという。
民事調停の和解は確定判決と同じ効力
だが、町が一定の責任を認めたうえで、損害賠償の金額を決めるのであれば、町内にある屋久島簡易裁判所に民事調停を申し立てて、双方が納得する形で和解するという手段もあったはずだ。民事調停といえども、そこで成立した和解は訴訟の確定判決と同じ効力がある。鹿児島地裁で訴訟をするよりも手間がかからず、町民が弁護士に代理人を依頼しても、訴訟ほど高額な費用は必要なかったはずである。
つまり、町が訴訟の提起だけではなく、民事調停の選択肢も示していれば、解決金173万円の大半は町民の手元に残っていた可能性があったということである。
町、訴訟提起の求めは「弁護事務所の判断」
民事調停ではなく、訴訟の提起だけを求めたことについて町は、代理人を依頼した鹿児島市内にある弁護士事務所の判断であり、民事調停についての議論はなかったという。
その結果、損害賠償請求訴訟は2020年8月~2021年3月の7カ月間にわたって続き、合計で7回の裁判が開かれた末に和解が成立した。
そして、この訴訟で屋久島町が弁護士事務所に支払った報酬は165万円。これに解決金の173万円を加えると、町が公金から支出したのは計338万円となる。さらに、町民が受け取った解決金173万円も、その大半が町民の代理人をした弁護士に支払われており、町役場と町民は弁護士報酬のために損害賠償請求訴訟をした格好である。
これでは弁護士のための訴訟
もし、荒木町長が民事調停で和解する提案をしていれば、予防接種で体調を崩した町民の負担は軽くなり、解決金の多くは手元に残っていたであろう。加えて、損害賠償請求訴訟の裁判を7回も開くことなく、民事調停で和解していれば、町が支出したであろう弁護士費用は165万円より低額だった可能性がある。
これでは、まるで弁護士のために訴訟をしたようなものである。