鹿児島県屋久島町、公務出張でのマイル加算を禁止へ
荒木町長は「公用マイル」で旅費節減 生涯マイルは約17万マイル
鹿児島県屋久島町の荒木耕治町長が公務出張で航空会社のマイルを個人のマイレージカードに加算していた問題をめぐり、荒木町長は3月10日、マイレージサービスに関する公務出張のルールをつくり、職員のマイル加算を禁止することを明らかにした。荒木町長については、新規作成の個人カードに「公用マイル」を加算し、特典航空券を利用して旅費を節減する方針。一方、これまで荒木町長が貯めた生涯フライトマイルは約17万マイルで、3月時点での有効残高は約9万マイルだが、旅費節減に利用するか否かは検討中としている。
公務出張での職員によるマイル加算について答弁する荒木耕治町長(2022年3月10日、屋久島町議会、議会中継のモニター画面を撮影)
職員のマイル加算、「旅費支給に関する例規通達」で禁止へ
この日あった町議会一般質問で、公務出張のマイル加算について問われた荒木町長は、同町にはマイルに関するルールがないとしたうえで、3月1日に開かれた課長会に「(公務出張で)個人が所有するカードへのマイル付加を禁止することを提案した」と述べた。今後、各課で検討したのち、「旅費支給に関する例規通達」として職員に周知するとした。
無料の特典航空券への交換方法を案内するJALウェブサイトの画面
荒木町長、新規作成のカードに貯まったら特典航空券
また、貯まったマイルで無料の特典航空券を利用し、出張旅費を節減する案について、荒木町長は「職員の出張で飛行機を利用する機会はさほど多くない」として、旅費節減の効果がある否かは検討が必要だとの考えを示した。一方、町長自身のマイル加算に関しては、「公費支出に対し町民の不信につながらないよう、個人カードへのマイル登録を停止する」と述べ、今後は公務出張用に新規の個人カードを作成し、そこに貯まった「公用マイル」で特典航空券が利用できるようであれば、旅費節減に活用するとした。
優先搭乗などのサービスが受けられる「JALグローバルクラブ」のカード。マイレージサービスやクレジット決済などに利用でき、荒木耕治町長も同様のカードを使っている(JALウェブサイトより)
「町民に不信を抱かせたとすれば、控えるべきだった」
これまで、荒木町長は日本航空(JAL)を頻繁に利用する乗客が入会できる「JALグローバルクラブ」のカードでマイルを加算してきたという。クレジット決済の機能もあるカードで、航空機の利用や買い物などでもマイルが加算でき、一定のマイル数になると特典航空券に加えて、クーポン券や各種カードのポイントにも交換できるなど、マイルを現金と同等に使うことができる。また、優先的にチェックインや搭乗ができるほか、無料で空港ラウンジを利用できるなど、様々なサービスを受けられる。
この個人カードを公務出張で利用してきたことについて、荒木町長は「優先サービスを受けるためと混同していた」と釈明。「マイルを登録することで、町民の皆さまに不信を抱かせることであれば、控えるべきであった」と述べた。
マイルを「Suica」のポイントに交換すると、公共交通機関や買い物などに使える(JALウェブサイトより)
家族がカードを管理 有効は約9万マイル
続いて、マイル残高などを問われた荒木町長は、これまでの搭乗で貯めた「生涯フライトマイル」は16万8819マイルで、クレジット決済で取得したマイルも含めた有効残高は8万8437マイル(2022年3月3日時点)だと公表。荒木町長自身はJALウェブサイト上での操作ができないため、家族がカードの管理をしているという。
現在、有効なマイルを公務出張に利用する提案については、全国離島振興協議会の予算で行った出張が多いため、荒木町長は「協議会(の出張)で付けたマイルを本町の出張で使っていいものかどうかと、いま個人的に思っている」と答えた。
北海道函館市の「公用マイレージ取扱要領」では、職員が公務出張で私的にマイルを取得することに自粛を求めている
取材にマイルの私的利用は否定
荒木町長が公務出張で航空会社のマイルを個人のマイレージカードに加算して、その大半を「失効」させていた問題は、屋久島ポストが2月22日に報じて明らかになった。過去7年間に貯めたとみられるのは、少なくとも約13万マイル。そのうち3年の有効期限が過ぎたのは約9万8000マイルとみられ、特典航空券を利用すれば、鹿児島~東京間を13回搭乗できるマイル数だった。
中央省庁や一部の自治体では特典マイルを利用して出張経費を節減しているほか、個人カードへの加算を禁止している自治体もある。荒木町長は取材にマイルの私的利用を否定したうえで、「公務出張に利用できるか検討したい」としていた。
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