取材後記

【取材後記】日高副町長、あなたは補助金不正問題の「当事者」です 屋久島町・補助金不正請求事件

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再発防止検討委員会の委員長なのに、工事遅延の原因「私は当事者ではないので、よくわからない」

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屋久島町議会の全員協議会で、補助金不正請求問題の経緯について説明した後、会議室を出る日高豊副町長(2022年8月1日、屋久島町役場議会棟)

 屋久島町が水道工事の補助金申請で虚偽報告をして、国から補助金約1668万円の返還命令を受けた問題をめぐり、日高豊副町長の発言が迷走しています。補助金返還の責任は工事を遅延させた業者側にあると主張しているのに、工事が遅れた原因について調査をしていないというのです。そして、その迷走はさらに深まり、町議会で工事遅延の原因を問われ、こんな発言まで飛び出しました。

「私は当事者ではないので、よくわからない」

 いやいや、そんなはずはありません。日高副町長は再発防止策を協議する町の検討委員会で委員長を務め、工事管理の問題点や課題などを議論したうえで、補助金返還の責任は工事を遅延させた業者側にあると結論づけています。それなのに「当事者ではない」とはどういうことでしょう。
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国に返還した補助金1668万円を工事業者に賠償請求したことなどを説明した後に会議室を出る日高豊副町長=中央(2022年8月1日、屋久島町役場議会棟)

 これまでの経緯を整理すると、補助金返還に至った原因は、大きく分けて二つの可能性が考えられます。

町、工事月報で進捗状況を確認せず

 まず一つ目は、町が杜撰な工事管理をした結果、補助金受給の最終工期だった20213月末までに工事が終えられず、それでも補助金を受け取るために、「すべての工事が完成した」とする虚偽報告をしたことです。

 町は工事の進捗状況を記録する工事月報での確認をほとんどしていなかったことが、屋久島ポストの取材でわかっています。最も遅れた5工区に関しては、202011月に一度だけ月報を受け取ったきり、その後は一切の確認をしていません。もし、月報で工事の遅れを的確に把握し、予算の繰り越し手続きをしていたら、国から補助金の返還命令を受けることはありませんでした。

工事遅延を把握できず、予算繰り越しの申請時期を逃す?

 もう一つは、業者側の工事の遅れです。国の返還命令では、最終工期の20213月末時点で工事が未完成だった部分について、補助金の返納を求められています。それを理由に、町は補助金返還の責任は業者側にあると主張しています。

 しかし、その主張には大きな疑問が残ります。先述したとおり、町の工事管理が杜撰だったことは明らかであり、そもそも、町は工事の遅延を把握していなかったといえます。それがゆえに、国に予算の繰り越しを申請するタイミングを逃し、さらに「すべての工事が終わった」とする虚偽報告をしてしまった、と考えるのが自然です。

第一義的な責任は「町の杜撰な工事管理」

 この二つの可能性を考え合わせると、補助金返還の原因は、第一義的には「町の杜撰な工事管理」にあるといえます。もちろん、工事が遅れた業者側にも一定の責任はありますが、それを管理するのは町の責任です。もし工事が遅れていたのであれば、予算の繰り越しをすればいいだけのことです。そうすれば、国から補助金の返還命令を受けることは、あり得ませんでした。

 日高副町長の発言に話を戻すと、このような検証を一切しないまま、業者側に約1668万円を請求したのは、行政の判断としては拙速すぎます。工事が遅れた原因も調査せずに、町には一つも瑕疵がないかのごとく、一方的に業者側だけを責めるのは、極めて不平等です。

 この問題をめぐっては、補助金返還の責任を問う住民訴訟が82日に提起され、その訴状には、荒木耕治町長や日高副町長の名前がしっかり記されています。

 日高副町長、あなたは自分が「当事者」であることをお忘れなく。

 

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