【取材後記】町幹部から切り捨てられる職員たち/編集委員会
「独断で国に虚偽報告」「虚偽領収書の不正精算」・・・知らぬ間に職員の責任に
【上】屋久島町役場【下左】屋久島町の荒木耕治町長
屋久島町の補助金不正請求事件をめぐる住民訴訟で、被告である町が提出した答弁書を読んでいると、荒木耕治町長ら幹部たちが自己保身に走っているのがよくわかる。国から補助金の返還命令を受ける結果となった虚偽報告の責任を、部下の職員たちに全面的に押し付けているのだ。それも職員側の言い分を示すことなく、一方的かつ断定的に切り捨てているのである。
町幹部、虚偽報告は担当職員の「独断」
例えば、工事が未完成であるにもかかわらず、「すべての工事が終わった」とする虚偽報告書を国に提出した経緯について、こんな主張をしている。
<本来決裁を受けるべきはずの矢野(生活環境課長)、総務課長、副町長及び町長の決裁を受けずに、(職員が)独断で提出した>< 矢野には原告が主張するような不法行為責任を問われなければならない事実自体がない> (※丸カッコ内は屋久島ポストが挿入)
つまり、町幹部には虚偽報告の責任は一切ないということである。
担当職員「課長が知らないはずはない」
ところが、工事を担当した職員は昨年11月、屋久島ポストの取材に次のように証言している。
<私は3月で(定年)退職だったから、その(工事完成が)延びている部分は(工事代金の)支払いをするなということで、(5月末の)出納閉鎖も引き込んで、その当時の係長にも言ってあるので、(矢野課長が)知らないはずはない>
職員不在の欠席裁判
両者の主張を踏まえると、町側と職員側で言い分が真っ向から対立しているのがわかる。だが町幹部は、<「矢野(課長)には話した、知っているはずだ」という■■(※職員の実名)の発言が事実に反する>と断言している。それも、一般に広く公開される裁判で、職員の実名を答弁書に明記したうえで、一方的に主張しているのだ。
職員にしてみれば、まさに欠席裁判である。幹部も担当職員も同じ屋久島町の職員であり、その主張は平等に扱われなければならないのだが、幹部の言い分だけが「事実」として記載されているのだ。
屋久島町が裁判所に提出した答弁書には、担当職員が虚偽報告書を独断で提出した経緯が詳細に記載されている(一部画像を加工しています)
身内だけの「お手盛り調査」で国に報告
そもそも、不正が発覚した2021年11月以降、町はこの問題について第三者的な調査を一度もしてこなかった。身内だけの「お手盛り調査」で国に報告をしたが、その報告書には職員が虚偽報告書を「独断で提出した」ことはまったく記載されていない。そして、工事が工期内に終わらなかったのは、工事業者の責任だと結論づけているのだ。
この経緯を踏まえると、当初は工事業者の責任にして幕引きをするつもりだったが、住民訴訟で荒木町長ら幹部の賠償責任が問われたため、今度は矛先を変えて、その責任を担当職員に転嫁しているようにみえる。
自身の管理責任には一切言及しない、極めて無責任な町幹部である。だが、部下の職員を「売る」かのような対応は、なにも今に始まったことではない。
日高好作町議が旅費精算に使った虚偽領収書。発行した旅行会社には航空券を販売した記録が残されていなかった
虚偽領収書の責任も職員に転嫁
2019年末に発覚した町幹部らによる一連の出張旅費不正問題で、実費より高額な虚偽領収書で精算した岩川浩一副町長(当時)は、担当職員が「見積もり段階で発行された領収書」を誤って添付したとして、「事務手続き上のミス」と釈明。しかし、見積もりで発行される領収書はないので、岩川副町長の説明が虚偽であることは明らかだった。
また、航空券を販売していない旅行会社からもらった架空領収書で精算した町議会の日高好作議長(当時)は、自身の不正精算について「領収書を受け取った記憶がない」と主張。さらに、出張旅費の精算手続きは「議会事務局の職員に任せていた」と開き直り、不正精算の責任を職員に押し付けるような対応をしたまま、この問題を放置している。
役場や議会の幹部から言われれば、立場の弱い一般職員は反論できないだろう。そして、不正を疑われた幹部たちは責任転嫁で窮地を切り抜け、何事もなかったかのごとく、この先も平然と権力の座に居座るのである。
なんとも理不尽なことだが、一つ忘れてはいけないことがある。そんな無責任な幹部を許しているのは、実はわたしたち屋久島町民なのだ。
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