荒木町長、国会議員らに5年で計370万円の贈答品 屋久島町長交際費問題

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「町産品PR」で焼酎やイセエビなど頻繁に贈答 国会議員へは延べ86人 

交際費に関する国の通知と地方自治法に反する疑い

荒木町長、不適切な支出と認め「予算を超えなければ自由に使えると思っていた」
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    屋久島町の荒木耕治町長が自身の裁量で支出できる交際費を使い、過去5年間に約370万円分の贈答品を贈っていたことが屋久島ポストの取材でわかった。贈り先で多いのは国会議員の延べ85人。主な目的は「町産品のPR用」としているが、議員1人に対し1回で約10万円分を贈っている例もあり、1人1回で3000~4000円分を贈答している鹿児島市と比べると極めて高額だ。各議員の氏名について、町は「個人情報」を理由に開示を拒否。だが、高額な贈答を繰り返しているケースもあり、荒木町長の説明責任が問われるのは必至だ。


主に国会議員や行政機関に贈答

 屋久島ポストが開示請求した交際費の支出記録によると、20172021年度の5年間で、荒木町長が贈答品に使った金額は368万6541円だった。町が送付記録の一部を紛失しており、贈り先の総数は不明だが、国会議員への贈答が少なくとも延べ85人だった。そのほかでは、鹿児島県の知事と副知事、屋久島環境文化財団の理事長、姉妹都市の菊陽町長(熊本県)や日田市長(大分市)、林野庁の九州森林管理局長など、行政的につながりのある関係者が目立っている。

贈答品
左から焼酎「三岳」、イセエビ、焼酎「愛子」、タンカン、焼酎「水ノ森」、焼酎「三岳原酒」

 贈答品の内容は、「三岳」や「愛子」といった銘柄の焼酎を中心に、島名産のポンカンやタンカン、パッションフルーツなどの果物、イセエビや水イカ、アサヒガニといった魚介類もある。また、樹齢千年を超える屋久杉で製作した約10万円の万年筆とボールペンのセットなどもみられる。

国会議員1人に1回で10万円分の「三岳原酒」

 一方、開示された支出記録には、その大半で贈答する理由が記載されていない。町は主な目的を「町産品のPR用」としているが、1人の国会議員に対して1回で約10万円分の焼酎を贈ったり、複数の国会議員に何度も贈答したりしており、単なるPR用にしては金額と頻度が極めて多い。

 その主な例は次のとおり。

・2017年10月

贈り先:国会議員4人

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贈り先:国会議員1

贈答品:焼酎/三岳原酒(720)×24

金 額:64866

三岳原酒
 

20195

贈り先:国会議員1

贈答品:焼酎/三岳原酒(720)×36

金 額:97299

三岳原酒

・2019年9月

贈り先:国会議員1

贈答品:焼酎/三岳原酒(720)×24

金 額:67407

三岳原酒
 

202012

贈り先:内閣総理大臣、国会議員1

贈答品:焼酎/三岳原酒(720)×24

金 額:68700

三岳原酒
 

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贈り先:国会議員5

贈答品:焼酎/三岳(1.8ℓ)×10本、愛子(1.8ℓ)×10本、水ノ森(1.8ℓ)×10

金 額:86160
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町総務課「陳情や相談で国会議員には世話になっている」

 なぜ、国会議員に対して、これほど高額な贈答品を頻繁に贈る必要があるのか。

 町総務課は取材に「国会や中央省庁に陳情や相談などをする際に、国会議員の先生方にはとてもお世話になっている」と説明。だが、具体的に何の陳情や相談に対して、どのような世話を受けたのかは、支出記録には記載されていない。

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記者会見する菅義偉首相=当時(2021年8月23日、内閣官房内閣広報室/Wikimedia Commons より)

 また、町が開示した「内閣官房長官」や「内閣総理大臣」という贈り先の役職と交際費を支出した年月日から、菅義偉氏に2年間で計6回の贈答をしていたことがわかる。贈答の内容は「三岳原酒」や「愛子」、「水ノ森」などの焼酎に加え、タンカンやポンカン、パッションフルーツも含まれ、金額は計79212円だった。


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総務省が入る合同庁舎(東京・霞が関、総務省ウェブサイトより)

国が通知、交際費は「一般経費と同様、支出負担行為に基づいて支出」

 総務省行政課によると、交際費の取り扱いについては、1965年に旧自治省が地方自治体に通知を出している。そのなかで、交際費の支出は「一般経費と同様、支出負担行為に基づき、正当債権者に支払いをすることが建前である」と説明。つまり、各自治体の交際費の支出は、地方自治法が定める一般経費の支出と同じく、「債権者のためでなければ、これをすることができない」(232条の5)ということだ。

 その通知を踏まえると、荒木町長の贈答品の支出記録には、その大半で具体的な理由が示されていないうえ、主な目的が「町産品のPR用」だとすれば、その支出自体に違法の疑いがある。また、定期的に季節の果物を国会議員や行政機関などに贈っているが、これも地方自治法で定められた一般経費の支出基準に照らすと、法的に認められない可能性がある。

 地方自治体の交際費の支出基準などについて、同課は「各自治体の裁量に任されている」とする一方、個別の事案で違法の疑いがある場合は、住民監査請求や住民訴訟で是正されるものだと認識しているという。

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屋久島町役場

町要綱、贈答の金額は「社会通念上妥当と認められる額」

 それでは、屋久島町には交際費の取り扱いについて定めたルールはないのだろうか。

 「屋久島町長の交際費の支出基準及び情報の公表に関する要綱」によると、「祝金」や「弔慰」、「見舞」などの区分ごとに、支出の内容や金額が詳細に定められている。例えば、「祝金」は「祝賀会及び諸大会等各種行事のお祝いに係る経費」とされ、金額は「10,000円以内」と明記されている。

 だが、「贈答」になると支出基準や金額があいまいになる。内容については「町政運営上必要な訪問時の土産及び贈答に係る経費」、金額は「社会通念上妥当と認められる額」とされ、明確な基準や金額が定められていない。

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鹿児島市役所(Wikimedia Commons より)


鹿児島市は5年で45万円 屋久島町は8.5倍の支出

 高額な贈答品を頻繁に贈り続けている荒木町長だが、ほかの自治体はどうなのか。そこで、鹿児島県内で最大規模を誇る鹿児島市の市長交際費を調べると、屋久島町の支出が突出して多いことがわかる。

 鹿児島市がウェブサイトで公開している市長交際費の支出記録によると、20172021年度の5年間で贈答品に使われた金額は451672円。同じ5年間で荒木町長が贈答品に使ったのは369万5752で、屋久島町の方が8.5倍多く支出している。鹿児島市の人口は屋久島町の約50倍なので、人口1人当たりで換算すると、屋久島町民は鹿児島市民より425倍多く贈答品に公金を支払った計算だ。


鹿児島市、国会議員への贈答は来訪の1人だけ

 また、鹿児島市は同期間に贈答品を約120人に贈っているが、1人あたり30004000円程度の贈答で、屋久島町より桁違いに低い金額だ。そのうち国会議員は1人で、201810月に当時の総務相だった石田真敏氏が市役所を訪れた際に、3240円分のお土産を渡している。さらに、鹿児島市はすべての贈答で「来訪」や「訪問」のお土産と理由を明記し、相手先の個人名も公開。贈答の理由を記載せず、国会議員を含めて、全個人名を黒塗りにしている屋久島町とは対応が大きく異なっている。


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国会議員が事務室を構える議員会館(東京・永田町、
Wikimedia Commons より)


荒木町長「今後は金額や頻度を改めたい」

 国会議員には給料にあたる歳費に加え、賞与や文書通信交通滞在費、公設秘書の給与などを含め、1人あたり年7000万円以上の経費が国民の税金から支出されている。それなのに、なぜ屋久島町民はその国会議員に対して、高額な贈答品を贈らなくてはいけないのか。

 荒木町長は屋久島ポストの取材に対し、国会議員へ頻繁に贈答しているのは「陳情などでお世話になることが多いため」としたうえで、交際費の支出基準については「総額で(交際費が)80100万円ぐらいあり、この予算を超えなければ自由に使えると思っていた」と釈明。今回の取材を受けたことで、「私の政治は情の部分が多かったかもしれないと反省している。今後は金額や頻度を改めていきたい」と述べ、これまでの交際費の使い方が不適切だったことを認めた。

■屋久島町長交際費問題の記事一覧

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