国会議員への贈答件数、3割強は森山裕衆院議員 屋久島町長交際費問題
森山事務所、少なくとも約50万円分の贈答品「個人からの贈り物だとの認識だった」「地元産品をPRしている」
荒木町長「森山事務所でお世話になった先生方に渡している」

【左】屋久島町の荒木耕治町長
【右】鹿児島4区選出の森山裕衆院議員(内閣官房内閣広報室/Wikimedia Commons より)
 屋久島町の荒木耕治町長が自身の裁量で支出できる交際費を使い、過去5年間に約122万円分の贈答品を国会議員に贈っていた問題をめぐり、贈り先の延べ85件のうち、3割強にあたる29件が森山裕衆院議員(鹿児島4区)だったことが同町への取材でわかった。その29件のうち、屋久島ポストが支出の詳細を確認できた12件の贈答額は約50万円で、残りの17件分を含めると、さらに高額になる見込みだ。森山事務所は取材に「贈答品は個人からの贈り物だとの認識だった」「地元産品のPRに努めている」。荒木町長は「森山事務所でお世話になった先生方に渡している」などとしている。

森山裕衆院議員が事務所を構える国会の議員会館(東京・永田町、Wikimedia Commons より)
町が開示した交際費の支出記録と町総務課によると、2017~2021年度の5年間で、荒木町長が国会議員に贈答した金額は122万2569円。贈り先は延べ85件で、そのうち29件が屋久島町も入る鹿児島4区選出の森山衆院議員だった。
屋久島ポストはこれまでの取材で、森山衆院議員へ贈答した29件のうち、12件の支出記録を特定して詳細に確認。その結果、贈答した金額は49万5266円だった。

荒木耕治町長が森山裕衆院議員の事務所に贈った焼酎「三岳原酒」
焼酎に約38万円 「三岳原酒」は138本
 内訳では、焼酎の贈答が37万8432円と最も多く、「三岳原酒」は138本を贈っていた。その他は魚介類などの11万6834円で、計5回にわたってイセエビやアサヒガニ、水イカ、「屋久とろ」計140個などを贈答していた。
荒木耕治町長が国会議員に贈った(左から)タンカン、パッションフルーツ、アサヒガニ、イセエビ
果物の贈答でさらに増額の見込み
 一方、森山衆院議員に贈答した29件のうち、17件については支出記録が特定できていない。だが、町が氏名を黒塗りした「交際費使用伺い」の文書を見ると、タンカンやパッションフルーツ、ポンカンの贈答先に「衆議院議員」と記載されたものが多く、このなかに森山衆院議員が複数含まれているとみられる。これら果物の贈答も加えると、現在で少なくとも約50万円となっている贈答額は、さらに高額になる見込みだ。
屋久島町が開示した「交際費使用伺い」の文書。パッションフルーツの贈答先は「衆議院議員」「内閣総理大臣」などの肩書だけ開示され、氏名は「個人情報」を理由に黒塗りされている
荒木町長「自分ができる範囲で、何かお礼したい」
東京・永田町の議員会館にある森山事務所に、なぜこれほど多くの贈答品を贈る必要があるのか。
荒木町長は取材に「私が森山事務所でいろいろな先生方に会って、お世話になることが多く、お礼の形で1本か2本を渡している」と説明。総事業費24億円の新庁舎建設や同18億円の町営船「フェリー太陽Ⅱ」の建造などで補助金を申請する際にも、森山衆院議員をはじめ、多くの国会議員に陳情や相談をしており、「自分ができる範囲であれば、何か返すものだというのが自分の(考えの)なかにあるので、お礼をしている」とした。
 また、町が贈答の主な目的とする「町産品のPR」について、荒木町長は「焼酎を贈るのはなぜかというと、私が行くと、国会議員は(焼酎の)三岳を知っている。『おいしい焼酎があるよね』と必ず言われるので、私も贈らなくてはいけないという気持ちになる」と話した。
総事業費18億円で2021年3月に就航した屋久島町営船「フェリー太陽Ⅱ」(500 t)。屋久島と口永良部島、種子島を結んでいる
森山事務所「県外の方に地元屋久島の名産品を紹介」
その一方、森山事務所は屋久島ポストの取材に対し、「贈答品は個人からの贈り物だとの認識でした」と回答。さらに「ご当地の名産品を県外の方にPRする趣旨で、ご当地の酒などを送って頂いたことがあります。趣旨に従い、県外の方に地元屋久島の名産品を紹介し、地元産品のPRに努めているところです。なお、(森山)議員はお酒を飲めませんので自分でいただくことはありません」としている。

荒木耕治町長が国会議員に贈答した焼酎。左から「三岳」「三岳原酒」「無何有」「愛子」「水ノ森」
不適切な支出を認め「今後は金額や頻度を改める」
それでは、屋久島町長の交際費を使った贈答について、今後はどうするのか。
荒木町長は取材に「私の政治は情の部分が多かったかもしれないと反省している」と話し、これまでの交際費の使い方が不適切だったことを認めたうえで、今後は金額や頻度を改める方針を示した。
「公金での贈答品は常識の範囲内で」
その荒木町長に対して、森山事務所は「今後は『町民の大事な公金』での贈答品については、常識の範囲内での贈答につとめていただきたいと思います」と要望している。
森山衆院議員への贈答の一部は以下のとおり(町総務課への取材で判明分)。
・2017年8月
贈答品:焼酎/三岳原酒(720㎖)×12本
金 額:3万2360円
・2018年4月
贈答品:焼酎/三岳原酒(720㎖)×24本
金 額:6万4866円
・2018年11月
贈答品:イセエビ(赤)
金 額:2万4181円
・2019年5月
贈答品:焼酎/三岳原酒(720㎖)×36本
金 額:9万7299円
・2019年9月
贈答品:焼酎/三岳原酒(720㎖)×24本
金 額:6万7407円
・2020年9月
贈答品:イセエビ、アサヒガニ、水イカ、屋久とろ(30個)
金 額:2万9245円
・2020年12月
贈答品:焼酎/三岳原酒(720㎖)×12本
金 額:3万4350円
・2021年2月
贈答品:水イカ、塩飛び、地サバ、チレダイ、魚すりみ、屋久とろ(30個)
金 額:2万2181円
・2021年3月
贈答品:焼酎/三岳原酒(720㎖)×24本
金 額:6万8500円
・2021年5月
贈答品:焼酎/三岳原酒(720㎖)×6本
金 額:1万3650円
・2021年9月
贈答品:水イカ、チレダイ、魚すりみ、屋久とろ(30個)
金 額:1万8711円
・2022年2月
贈答品:水イカ、屋久とろ(50個)
金 額:2万2516円
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