海底清掃問題

JTBパブリッシング、海底ごみの総量や廃棄費用など回答せず 屋久島町・環境保全プロジェクト

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全国からの寄付金による事業「可能な限り詳細な回答を」 JTBパブリッシング、総価契約を理由に「回答は控える」

ごみの処理方法も具体的に説明せず
業者撮影:ごみの写真

海底清掃で回収されたごみの写真。屋久島町の委託業務として、業者が配信したウェブサイト記事に掲載されている(ocean+α「ふるさと納税で屋久島の海をきれいに! ダイバーたちが世界遺産の海を次世代に繋ぐ」より)


 全国から「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、清掃活動を広報する動画と観光パンフレットの制作費に支出されていた問題――。

 同事業で実施された海底清掃をめぐり、町から業務委託されたJTBパブリッシング(本社・東京)219日、実際に回収したごみの総量や処理方法、廃棄費用を尋ねた屋久島ポストに対し、「回答は控えさせていただきます」などとメールで回答した。屋久島ポストは同事業が寄付金で実施されたことを踏まえ、「可能な限り詳細な回答」を求めていたが、同社から明確な説明は得られなかった。


ごみの総量や廃棄費用、町に報告なし

 JTBパブリッシングは旅行大手JTBの出版部門を担う関連会社で、海底清掃を主体とする「海・川・山の繋がりで豊かな屋久島の自然を守るプロジェクト」を町に提案。町は20227月、複数の業者による入札は行わず、「特命随意契約」で同社と業務委託契約を結んで事業を実施した。その後、同社から事業の実施報告書が提出されたが、海底清掃で回収したごみの総量や処理方法、廃棄費用については、詳細な報告がなされなかった。
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海底清掃事業の「実施報告書」の一部。「40分ほどでプラスチック片やペットボトルを多く回収」などと記載されたが、実際に回収したごみの総重量や廃棄の実費は報告されなかった

屋久島ポスト「ゴミ回収廃棄費用」について質問

 それを受けて屋久島ポストは28日、同社ウェブサイトの問い合わせフォームから計5項目の質問文を送信。そのなかで、同社が町に提出した見積書で「下記は、終了後実費精算」としていた「ゴミ回収廃棄費用」について、詳細な説明を求めた。

ごみ処理、再委託した別業者が「適正に処理」

 屋久島ポストの取材に対し、同社ブランド戦略室は219日にメールで回答を送り、実際のごみ処理については、事業の一部を再委託した別の業者によって「適正に処理」「管理」されていると説明したが、具体的なごみの総量や処理方法などには言及しなかった。また、廃棄費用については、同事業の業務委託契約が単価や数量に左右されない「総価契約」であることを理由に、実際に支出した金額は回答しなかった。
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JTBパブリッシングが海底清掃事業の業務委託契約を結ぶ際に提出した見積書。文書の中段左側に「※下記は、終了後実施精算」と記載されている(※赤丸は屋久島ポストが加工)

町課長「JTBパブリッシングに聴いてほしい」

 海底清掃で回収したごみの処理をめぐっては、これまで屋久島ポストが担当の町観光まちづくり課に対し、複数回にわたって事実確認を求めてきた。だが、同課の泊光秀課長は、同社との業務委託契約書には実費精算が必要だとの記載がないことを理由に、実際に回収したごみの総量と廃棄の実費について「JTBパブリッシングに確認を求める必要はない」と主張。それに対し、屋久島ポストは「事実確認として、回収したごみの総量と廃棄の実費を教えてほしい」と訴えたが、泊課長は「あとはJTBパブリッシングに聴いてほしい」として、それ以上の取材には応じていなかった。


総事業費の7割が事業の広報費に

 この海底清掃事業については、総事業費の約1700万円のうち、その約7割にあたる約1165万円が海底清掃そのものではなく、清掃活動を広報する動画と観光パンフレットの制作に支出されていたことが判明。また、実際に海底で清掃した潜水時間が合計で2時間だったことなどがわかっている。
観光案内ページ②
海底清掃の関連事業として屋久島町が制作した観光パンフレット「るるぶ 特別編集 屋久島」の一部

 屋久島ポストが送信した質問と、同社ブランド戦略室の回答は次のとおり。

【屋久島ポストの質問】

 御社が町に提出した見積書によると、「ゴミ回収廃棄費用」として、数量「20」、単価「50,000」円、金額「1,000,000」円と示されています。そして、その上段には「※下記は、終了後実費精算」と記載されています。

 それを踏まえ、実際に回収および廃棄したごみの総量、そして廃棄費用の金額をお示しください。

 また、実際の廃棄方法について、町のクリーンサポートセンターに持ち込んだのか、それとも島外のごみ処理施設で処分したのかなど、具体的な処理方法をご説明ください。

 加えて、見積書で示された単価「50,000」円と数量「20」について、その金額と数量を導き出した根拠をお示しください。

JTBパブリッシングの回答】

 海底清掃作業およびそれに伴い回収したゴミは、本件プロジェクト業務の一部を委託したオーシャナが適正に処理しており、重量や回収総量についても同社が管理しております。なお、前記のとおり、本件は総価契約につき、個々の内訳については回答を控えさせていただきます。

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