【視点】司法の力に頼り続ける屋久島町の悪循環
2018~24年:民事訴訟3件、住民訴訟3件、刑事事件で町長ら4人が起訴猶予
最大の原因は自浄能力の欠如
住民らと法的な争いが続く屋久島町役場
今週は屋久島町政をめぐる裁判が続く。
9月24日は海底清掃事業に対する住民訴訟の第1回口頭弁論が鹿児島地裁で開かれ、翌25日には補助金不正請求事件の責任の所在を明らかにする住民訴訟の控訴審判決が、宮崎市の福岡高裁宮崎支部で言い渡される。
どちらも「無駄に失われた町の公金」を取り戻す公益訴訟だが、ここ数年、屋久島町では問題の解決を司法に委ねるケースが相次いでいる。
山海留学の体罰で損害賠償請求訴訟
その始まりは、2018年に提起された山海留学をめぐる二つの損害賠償請求訴訟だった。
どちらも留学生の児童を預かった里親とのトラブルが原因で、一つは子どもに対する体罰。もう一つは里親宅でのケガだった。
いずれの訴訟でも、町は「山海留学の実施主体は町ではない」として、町に法的責任はないと主張。だが、裁判所は町にも一定の責任があると判断し、町と里親が児童側に解決金を支払う形で和解した。
屋久島町山海留学の募集チラシ
出張旅費不正事件では町長ら4人の罪を認定
続いては、2019年末に発覚した荒木耕治町長ら町幹部による出張旅費着服事件だった。
最終的に荒木町長や元副町長の岩川浩一氏、元議長の岩川俊広町議ら計4人が刑事告発され、鹿児島地検は2020年9月~10月に罪の事実を認定。減給や辞任で社会的制裁を受けたとして、刑事訴訟法248条の規定に基づいて起訴猶予の不起訴処分にした(*1)。
この事件に対しては、町議会で不正調査をする百条委員会の設置案が5回にわたって提案されたが、すべて反対多数で否決。町も町議会も、不正精算に使われた虚偽領収書が発行された経緯を解明することなく、うやむやのまま事件の幕引きをした。
屋久島町の役場や議会の幹部らが出張旅費の精算で提出した虚偽の領収書。発行された経緯は不明のままとなっている
補助金不正請求と高額贈答で住民訴訟
2022年には二つの住民訴訟が提起された。
一つは水道工事の補助金を国に申請する際に、町が工事完成日を偽って虚偽の報告をした補助金不正請求事件をめぐる訴訟。国から補助金の返還命令を受けた約1668万円が町の損害になったとして、原告の住民が町に対し、荒木町長ら幹部に賠償請求するように求めた。
屋久島町が国に提出した検査調書。工事が未完成の段階で、すべての工事が完成したとする虚偽の報告をしていた(黒塗りは町が非開示、モザイクと赤線は屋久島ポストが加工)
二つ目は、国会議員らに高額な贈答が続けられた町長交際費の支出に対する訴訟。1回に数万円~10万円分の高額な贈答をするのは「社会通念を逸脱した不適法な支出」だとして、住民が町に対し、荒木町長ら幹部に約193万円を賠償請求するように求めた。
町営牧場の過重労働死で損害賠償請求訴訟
さらに2023年10月には、過重労働の末に町営牧場で亡くなった職員の遺族が町を相手取り、約7000万円の損害賠償請求訴訟を提起した。
同年2月に地方公務員災害補償基金は、亡くなった職員が連続50日間の勤務を続け、半年間で休暇が5日しか取れていなかったことなどを踏まえ、過重労働による公務災害だったと認定。それに対し、荒木町長ら町幹部は謝罪することなく、「過重労働はなかったという認識」などと主張したため、遺族が提訴に踏み切った。
潜水2時間の海底清掃事業に1700万円
そして9月24日には、三つ目の住民訴訟として、町がふるさと納税の寄付金を活用して、2022年度に実施した海底清掃事業をめぐる訴訟が始まる。
原告の渡辺千護町議は、約1700万円もの事業費を投じたにもかかわらず、実際に海底で潜水したのは2時間のみで、総事業費の大半が屋久島の観光情報を伝えるガイド冊子や動画の制作に使われたことを問題視。町に対して、約1700万円を荒木町長ら幹部に賠償請求するように求めている。
ここで、ざっとリストにすると、次のようになる。
・2018年:山海留学における体罰と負傷に関する訴訟2件
・2020年:出張旅費着服事件で荒木町長ら4人が起訴猶予処分
・2022年:補助金不正請求と町長交際費に関する訴訟2件
・2023年:町営牧場の過重労働死をめぐる損害賠償請求訴訟1件
・2024年:海底清掃事業に関する住民訴訟1件
上記をまとめると、民事訴訟は3件、住民訴訟は3件、そして刑事事件で捜査を受けたのは4人となり、地方自治体としては「異常事態」である。
それでは、なぜこれほどまで多く、司法の力に頼るケースが続いているのか?
その最大の原因は、この屋久島町に自浄能力が欠如していることだろう。自ら調査し、自ら反省して、自ら再発防止策を講じる力が、この町にはないのである。
こんな無責任な状態が続けば、今後も司法の力に頼ることになるだろう。そして町は、さらに無駄な労力と公金を費やすことになり、この悪循環から抜け出せなくなる。
*1)刑事訴訟法248条「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」(起訴猶予)
町長がどんな不正を行っても、町長からの甘い汁を吸わせてもらえる企業、町民、町議、国会議員がたくさん居るから町長で居られるんでしょうね。
町の損失よりも自分の利益が大事なんでしょう。日本一恥ずかしい町です。