海底清掃問題

「るるぶ」事実とは違う記事に何も対応せず 屋久島町・環境保全プロジェクト

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JTB「るるぶ特別編集」、海底清掃「半日かけて潜る」「1回でゴミ100kg拾う」 実際の潜水は1時間 海底ごみの総量は報告なし

JTBパブリッシング「今後の対応は屋久島町の判断」
記事と表紙
【左】海底清掃活動について紹介する「るるぶ特別編集 屋久島」の記事。実際に海底清掃をする様子を撮影した写真が掲載されたが、記事のテキスト部分には清掃前の9月に取材したコメントが載せられた【右】屋久島町の業務委託でJTBパブリッシングが制作した「るるぶ特別編集 屋久島」の表紙

 全国から「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、清掃活動を広報する動画と観光パンフレットの制作費に支出されていた問題――。

 海底清掃の成果を広報するパンフレットで、実際には海底での潜水時間が11時間だったにもかかわらず、記事では「半日かけて潜る」と事実とは違う情報が掲載された問題をめぐり、パンフレットを制作したJTBパブリッシング(本社・東京)は屋久島ポストの取材に対し、記事は清掃前の「下見段階」の情報を掲載したもので、「取材時の情報として正誤確認をとっている」と回答した。

 パンフレットを編集する過程で、実際に海底清掃を実施した結果を踏まえた記事に差し替える時間的な余裕はあったが、同社はそのまま「下見段階」の情報を掲載。今後の対応については、事業を委託した町の判断だとして、「当社では回答を控えさせていただきます」とした。

パンフ制作目的「寄付の使い道の取組を島内外に発信」

 JTBパブリッシングが制作したパンフレットは「るるぶ特別編集
屋久島」で、町は約536万円を支出して2万部を発行した。事業の終了後に提出された実施報告書で、同社は「冊子制作の目的」として、「①寄付の使い道の取組を島内外に発信:ふるさと納税『屋久島町だいすき基金』を使った取組について、公式パンフレットとして配布することで、活動を周知する」などと説明。海底清掃を主体とした環境保全事業の成果を広報することが、パンフレット制作の主な目的であるとした。
実施報告書

JTBパブリッシングが提出した実施報告書の一部。パンフレット制作の目的として「①寄付の使い道の取組を島内外に発信:ふるさと納税『屋久島町だいすき基金』を使った取組について、公式パンフレットとして配布することで、活動を周知する」などと説明していた

るるぶ記事「通常ダイビングは12時間」「今回は半日かけて潜る」

 そして、実際に発行されたパンフレットの記事では、「海底清掃活動の具体的な内容」として、「通常ダイビングは12時間潜るのですが、今回は半日かけて水深10mほどまで潜り清掃します」と説明。さらに「1回で100kgほどのゴミを拾います」としたうえで、回収したごみは町営のごみ処理施設「クリーンサポートセンター」に運んで処理するとしていた。
記事詳細
海底清掃活動について説明する「るるぶ特別編集 屋久島」の記事テキスト。実際の清掃活動では1日1時間の潜水だったが、記事では「半日かけて水深10mほどまで潜って清掃します」と紹介された

実施報告書、潜水2日間で計2時間 ごみ廃棄費用も示されず

 ところが、情報公開請求で屋久島ポストが入手した同事業の実施報告書によると、海底での清掃活動は20221027日と1124日に行われ、1日の潜水時間は1時間で、2日間の合計は2時間だったことが判明した。また、海底で回収したごみの総量は示されず、「40分ほどでプラスチック片やペットボトルを多く回収」「サンゴに絡まる釣り糸が多い」などと報告。見積書の段階では100万円を計上し、「終了後実費精算」と記載されていた「ゴミ回収廃棄費用」の実費や、具体的なごみ処理の方法も示されなかった。
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海底清掃事業の「実施報告書」の一部。「40分ほどでプラスチック片やペットボトルを多く回収」などと記載されたが、実際に回収したごみの総重量や廃棄の実費は報告されなかった

屋久島ポスト「なぜ清掃前の記事を掲載したのか?」

 それを受けて、屋久島ポストは28日に同社ウェブサイトの問い合わせフォームから取材を申請した。

 それまでに町観光まちづくり課で取材した情報を参考にして、パンフレットには20221027日に撮影された海底清掃の写真が掲載された一方で、なぜ記事だけが清掃前の9月に取材した内容になったのか、その理由を質問。さらに、パンフレットの編集作業がすべて終わる「校了」が1125日だったことを踏まえれば、1027日と1124日に実施した海底清掃の結果を記事に盛り込むことが可能だったにもかかわらず、なぜ清掃前の9月に取材した記事をそのまま掲載したのか、その編集の経緯に疑問を投げかけた。

JTBパブリッシング、結果的に事実と違う記事に「回答を控える」

 屋久島ポストの取材に対し、同社ブランド戦略室は219日にメールで回答した。

 まず同社は、パンフレットには実際の海底清掃の写真を掲載したことを認めたうえで、清掃前の9月に取材したとする記事のコメント部分については「もともと取材時点(下見段階)での内容として記載しているものであり、屋久島町および事業者に対しても、取材時の情報として正誤確認をとっております」と説明。また、結果的に事実とは違う情報が掲載されたことに対する今後の対応については、「受託案件につき、屋久島町のご判断となりますので、当社では回答を控えさせていただきます」とした。

業者撮影:ごみの写真

海底清掃で回収されたごみの写真。屋久島町の委託業務として、業者が配信したウェブサイト記事に掲載されている(ocean+α「ふるさと納税で屋久島の海をきれいに! ダイバーたちが世界遺産の海を次世代に繋ぐ」より)


パンフの主目的、活動報告のはずが「屋久島の魅力を伝える方針で作成」の大矛盾

 その一方で、パンフレット制作の目的について、同社はこれまでの説明とは矛盾する見解を示した。

 同社が町に提出した実施報告書で、パンフレットの制作目的について「①寄付の使い道の取組を島内外に発信」などと説明したことを踏まえ、屋久島ポストは「この『るるぶ特別編集
屋久島』の制作目的は、第一義的には同事業の主目的である海底清掃の成果を広く紹介する」ことだと指摘。そのうえで、「その報告記事の内容が事実と違っているとなれば、町としては訂正や事情説明などの対応が必要になる」との見解を伝えた。

 それに対し、同社は「本記事は、屋久島の魅力を伝えるという方針の下作成」したと説明。さらに、「海底清掃事業の実績報告という位置づけではありません」として、実施報告書に記載された「ふるさと納税『屋久島だいすき基金』を使った取組について、公式パンフレットとして配布することで、活動を周知する」とした制作目的とは、大きく矛盾する見解を示した。
海底清掃紹介記事
海底清掃活動について紹介する「るるぶ特別編集 屋久島」の記事

総事業費の7割を広報費に支出

 ふるさと納税を使った同事業は、海底清掃を主体とする「海・川・山の繋がりで豊かな屋久島の自然を守るプロジェクト」で、旅行大手JTBの出版部門を担う同社が企画を提案。町は20227月、複数の事業者による入札は行わず、「特命随意契約」で同社と業務委託の契約を結んだ。

 このプロジェクトをめぐっては、事業の実施後、総事業費の約1700万円のうち、その約7割にあたる約1165万円が海底清掃そのものではなく、清掃活動を広報する動画と観光パンフレットの制作に支出されていたことが判明。また、実際に海底で清掃した潜水時間が合計で2時間のみで、海底で回収したごみの総量が未報告だったことなどがわかっている。


屋久島町が約628万円を支出して制作したユーチューブ動画「海・山・川の繋がりで豊かな屋久島の自然を守るプロジェクト」


 屋久島ポストが送信した質問と、同社ブランド戦略室の回答は次のとおり。

【屋久島ポストの質問】

 「るるぶ特別編集 屋久島」の1011ページに、海底清掃の成果について紹介する記事が掲載されています。そのなかで、今回の海底清掃について、「通常ダイビングは12時間潜るのですが、今回は半日かけて水深10mほどまで潜り清掃します。車のタイヤ、船を止めるロープ、釣り針、ポリ袋、缶など1回で100kgほどのゴミを拾います。引き上げたゴミは仕分けしてクリーンサポートへ」と説明されています。

 ところが、御社が町に提出した実施報告書を見ると、実際に潜水して海底清掃をしたのは、2日間の合計で2時間でした。また、回収して廃棄したごみの総量は記載されておらず、「るるぶ特別編集
屋久島」で紹介された内容とは大きく違っていました。

 そこで、観光まちづくり課に事実関係を問い合わせたところ、担当課長からは次のような説明がありました。①「記事の説明は、海底清掃をする以前の20229月に取材したコメントを掲載したため、実際の清掃活動の結果とは違う内容になった」②掲載された写真は、20221027日に海底清掃を実施した際に撮影したもの」③「『るるぶ』の校了は20221125日だった」。

 この担当課長の説明を踏まえると、「るるぶ特別編集」の記事には、実際に海底清掃をした際の写真が掲載された一方で、清掃活動を紹介するコメントについては、清掃活動をする以前のコメントが「予定原稿」のまま掲載されたことになります。そして、校了が1125日であったことを鑑みると、記事には実際の海底清掃の成果や結果を掲載することが可能でしたが、そのまま「予定原稿」のコメントが載ってしまったため、事実とは違う内容が記事に掲載されたということになります。

 この「るるぶ特別編集 屋久島」の制作目的は、第一義的には同事業の主目的である海底清掃の成果を広く紹介することです。町には実施報告書が提出されましたが、ふるさと納税の寄付者や一般市民がその報告書を目にすることはなく、実質的に「るるぶ特別編集
屋久島」が社会一般に対する報告書になります。そして、その報告記事の内容が事実と違っているとなれば、町としては訂正や事情説明などの対応が必要になります。

 その点を担当課長に尋ねたところ、記事にある事前のコメントについては、清掃活動の結果とは違っていても、その時点では実際にコメントした内容であり、問題はないという見解でした。また、1125日が校了であれば、海底清掃の成果や結果を伝えるコメントに差し替えることが可能であったにもかかわらず、そのまま「予定原稿」が掲載された理由について尋ねると、担当課長から「それ以上は業務を委託した業者に聞いてほしい」と言われました。

 以上を踏まえ、次の3点を伺います。

 まず、「るるぶ特別編集 屋久島」で海底清掃の成果などを紹介するにあたり、結果的に事実とは違う内容の記事が掲載されたことについて、御社の見解をお聞かせください。

 次に、記事に掲載された海底清掃活動の写真が1027日に撮影されたもので、校了が1125日であったにもかかわらず、なぜ、記事テキストは最新の情報を盛り込んだものに差し替えず、9月に取材した事前のコメントがそのまま掲載されたのか、その理由と経緯をご説明ください。

 加えて、結果的に事実とは違う内容が「るるぶ特別編集 屋久島」に掲載されたことに対し、御社として何らかの対応をされるのか否か、今後の方針をお聞かせください。

JTBパブリッシングの回答】

 9月のインタビュー時にはなかった海底清掃の写真を編集作業の際に入れ込んでいますが、インタビューコメント部分については、もともと取材時点(下見段階)での内容として記載しているものであり、屋久島町および事業者に対しても、取材時の情報として正誤確認をとっております。なお、本記事は、屋久島の魅力を伝えるという方針の下作成されており、3日間の海底清掃事業の実績報告という位置づけではありません。

 今後の対応方針につきましては、受託案件につき、屋久島町のご判断となりますので、当社では回答を控えさせていただきます。

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