町が自ら見積書の一部黒塗りを提案 屋久島町・環境保全プロジェクト
真っ黒な見積書に抗議 全面開示を求め再度の情報公開請求 ➡ 町、単価やスタッフ数など約80カ所を黒塗りして業者に提案
業者「もう拒めないと思っていた」と全面開示にOK
【左】海底清掃事業の業務を請け負った業者が町に提出した見積書。町が開示する際に、内訳をすべて黒塗りして全面非開示にした【右】全面開示を求めた再度の情報公開請求で、町が業者に示した一部黒塗りで非開示とする例。単価や担当スタッフの人数など約80カ所が黒塗りされた
全国から「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、清掃活動を広報する動画と観光パンフレットの制作費に支出されていた問題――。
その総事業費の内訳が示された見積書が全面黒塗りの非開示とされたことを受け、屋久島ポストが全面開示を求めて再度の情報公開請求をした際に、見積書を作成した業者に対し、町が自ら内訳の一部を黒塗りして非開示にする案を示していたことがわかった。一部非開示の提案に対して、業者は全面開示に応じる意向をメールで送信。最終的に町の提案は見送られ、再度の請求では一転して、見積書は全面的に開示された。
町が実施したのは、海底清掃を主体とする「海・川・山の繋がりで豊かな屋久島の自然を守るプロジェクト」。旅行大手JTBの出版部門を担う関連会社「JTBパブリッシング」が企画を提案し、2022年7月に町と業務委託契約を結んだ。
屋久島町が制作したユーチューブ動画で紹介された海底清掃活動の様子
開示か否か 業者の回答前に町が自ら黒塗り
情報公開請求で2月5日に開示された関係文書によると、町観光まちづくり課は2023年12月7日にメールを同社に送り、見積書について再度の公開請求があったことを伝え、同社の意向を尋ねた。さらに、その回答を待つことなく、同課は翌12月8日にもメールを同社に送り、「開示方法の一例を作成しましたので、ご確認いただきますようお願いします」と伝え、単価や担当スタッフの人数など約80カ所を黒塗りした開示案を添付ファイルで示した。
町観光まちづくり課が2023年12月7日にJTBパブリッシングに送信したメール。非公開とする箇所について、業者側の意向を確認する内容だった
町観光まちづくり課が2023年12月8日にJTBパブリッシングに送信したメール。見積書の一部を黒塗りで非開示にする一例を提案する内容だった
町がJTBパブリッシングに提案した一部を黒塗りした非開示の例。単価や担当スタッフの人数など約80カ所が黒塗りされた
業者、一部黒塗りに「納得されない場合は開示を」
その提案を受けて、同社の担当者は12月8日にメールで返信し、「もう拒めないものか、と思っていました」としたうえで、「弊社からは、開示可で提出するものの いただいたような一部黒塗りで開示していただき、これで納得されない場合には、黒塗りの箇所も開示していただく こんな対応は可能でしょうか?」と伝えた。
それに対し、同課は12月12日にメールで「先に送信しました開示方法の一例は、これまでのやり取りを参考に作成しました」として、「最終的に全面開示も仕方ないとお考えであれば、段階を踏まずに開示するのが、再再度の請求が無く、いいと思います」と返信。同社の担当者は同日中に「人数や単価まで必要かな?とは思いましたが、あえて黒塗りする必要性があるわけではありませんので、開示OKでお返します」とメールで伝えた。
そのやり取りを踏まえ、同社が作成した見積書は12月27日、屋久島ポストに全面開示された。
JTBパブリッシングの担当者が2023年12月8日に送信したメール。見積書の非開示について「もう拒めないものか、と思っていました」「弊社からは、開示可で提出する」などと書かれていた
町観光まちづくり課が2023年12月12日にJTBパブリッシングに送信したメール。町側から示した見積書を一部非開示にする例について「これまでのやり取りを参考に作成しました」と書かれたいた
JTBパブリッシングの担当者が2023年12月12日に送信したメール。見積書の公開について「開示OK」とする内容だった
JTBパブリッシングが屋久島町に提出した見積書。再度の情報公開請求を受け、一転して町は全面開示した
町は当初「営業秘密に関する情報」として全面黒塗り
総事業費の見積書をめぐっては、2023年9月の情報公開請求に対し、町は「営業秘密に関する情報」として、全面黒塗りの非開示と判断していた。その際に町から意向を確認された同社は、見積書の内訳を非開示とする理由について、「通常公としていない情報であり、営業競争上の利益を害する恐れがあるため」と回答。町は同社の要望を全面的に受け入れた。
JTBパブリッシングが屋久島町に提出した見積書。町が開示する際に、内訳をすべて黒塗りして全面非開示にした
屋久島ポスト「市民の知る権利を侵害」と抗議
全面黒塗りの判断を受け、屋久島ポストは町に「全国からの寄付金が適切に使われたのかどうかを確認するためには、見積書の内訳に記載された情報は必要不可欠であり、全面黒塗りでの非開示は市民の知る権利を侵害することになる」と抗議。11月に再度の情報公開請求をして、支出内訳の全面開示を求めていた。
担当係長、業者の意向をくんで「できる限り開示する方向で一例を示した」
再度の情報公開請求で、町が自ら見積書の一部を黒塗りする案を示したことについて、屋久島ポストは同課に「全面開示を求めた再請求で、町が積極的に一部黒塗りを提案するのは業者への忖度であり、情報公開制度の趣旨や目的を歪めることになる」と訴えた。それに対し、同課の有馬照幸・統括係長は「これまでの(業者側の)意向もくみながら、町としてはできる限り開示できる方向にということで一例を示させてもらった」とした。
海底清掃の関連事業として屋久島町が制作した観光パンフレット「るるぶ 特別編集 屋久島」の一部
この海底清掃事業をめぐっては、総事業費の約1700万円のうち、その約7割にあたる約1165万円が海底清掃そのものではなく、清掃活動を広報する動画と観光パンフレットの制作に支出されていたことが判明。また、実際に海底で清掃した潜水時間が合計で2時間だったことなどがわかっている。
【動画】屋久島町が制作した動画「海・山・川の繋がりで豊かな屋久島の自然を守るプロジェクト」(短編バージョン)
開示請求に対して、やましさがなければ、全面開示しても何等支障は無い筈である。
記事には業者に忖度と控えめに書いているが、其れ以上を疑われても仕方の無いケースである。
今や、公僕と言う言葉は死語になっては居るが
もう少し住民の方を向かなければ自分の職責は果たせません。