実費精算を怠った「不適法な支出」 屋久島町 海底清掃事業・住民訴訟
見積書、ゴミ回収廃棄費と交通宿泊費は「終了後実費精算」➡ 町、実費精算を怠ったまま約1700万円をJTBパブリッシングに支払い
渡辺千護町議、見積書は「精算義務を定めたものだと解するのが妥当」
【左】海底清掃事業の見積書の一部。「※下記は、終了後実費精算」と示され、その下に「ゴミ回収廃棄費用」と「交通宿泊費」が記載されている【右】屋久島町が発行した観光ガイド冊子「るるぶ特別編集
屋久島」の表紙
ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報などを紹介するガイド冊子や動画の制作費に支出された問題――。
この事業への支出が、ふるさと納税の寄付金の使途を定めた「屋久島町だいすき寄附条例」に違反しているなどとして、同町議会の渡辺千護町議は8月に住民訴訟を提起。町に対して、事業に支出した約1700万円を荒木耕治町長ら町幹部3人に賠償請求するように求めている。
屋久島ポストは訴状に基に、渡辺町議の主張を複数回にわたって紹介。その最後となる4回目は「実費精算を怠った不適法な支出」について、その詳細を以下に伝える。
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屋久島町は、JTBパブリッシング(本社・東京)が2022年7月11日付で提出した見積書において、「ゴミ回収廃棄費」と「交通宿泊費」については「※下記は、終了後実費精算」と明記されていたにもかかわらず、海底事業が終了したのちに実費精算することを怠った。そして、町は2023年4月21日に、JTBパブリッシングから請求された未精算の総事業費である1698万9918円をそのまま支払った。
見積書に示された「※下記は、終了後実費精算」との記載は、契約内容に変更があり得ることを前提にして、その精算義務を定めたものだと解するのが妥当である。そして、「ゴミ回収廃棄費」と「交通宿泊費」については、見積額と実際の支出額に差異が生じた場合は、実費精算する義務があることを明確に定めたものであるといえる。
以上を踏まえると、町が実費精算を怠ったまま、総事業費の1698万9918円をそのままJTBパブリッシングに支払ったのは、不適法な支出であることは明らかである。
また、前記した「本件事業支出の条例違反」と「不適法な特命随意契約」で主張したとおり、この事業への寄付金の支出は、そもそも条例違反だったこと加え、特命随意契約を結ぶ理由もないかことから、総事業費の全額が不適法な支出であったといえる。
屋久島町が海底清掃事業の業務委託契約を結ぶ際に添付した見積書。文書の中段左側に「※下記は、終了後実施精算」と記載されている(※赤丸は屋久島ポストが加工)
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JTBパブリッシング、ごみ廃棄実費を回答せず
町が実施したのは、海底清掃を主体とする「海・川・山の繋がりで豊かな屋久島の自然を守るプロジェクト」で、旅行大手JTBの出版部門を担う関連会社JTBパブリッシングが企画を提案。町は複数の事業者による競争入札を行わず、「特命随意契約」で同社と業務委託の契約を結び、ふるさと納税の寄付金から約1700万円の事業費を支出した。だが、実際には事業費の大半が海底清掃ではなく、屋久島の観光情報を紹介するガイド冊子や動画の制作費に使われたほか、海底での清掃時間が計2時間だったことなどが、屋久島ポストの取材でわかっている。
また、JTBパブリッシングは屋久島ポストの取材と渡辺町議の問い合わせに対し、ごみの廃棄実費を明らかにしていない。その理由について同社は、この事業の業務委託契約が単価や数量に左右されない「総価契約」であることを踏まえ、「実費精算は必要ない」としている。