海底清掃問題

【視点】ファッション系メディアだけに環境取材を依頼する屋久島町の不思議? 海底清掃事業

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町、プレスツアーの取材経費などに150200万円を支出 参加したメディア3社はファッションや旅、グルメなどが専門

町「自然環境の情報を特に強く発信しているメディア」と説明
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【上左】屋久島町「ふるさと納税」のロゴ(町ウェブサイトより)【上中】屋久島町が取材を依頼した「OCEANS」「VOGUE JAPAN」「FRaU」のロゴ(各メディアのウェブサイトより)【上右】屋久島町のロゴ(町ウェブサイトより) 【下】2022年度の事業で海底ごみを回収するダイバーたち(屋久島町YouTubeチャンネルの動画「海・山・川の繋がりで豊かな屋久島の自然を守るプロジェクト」より)


 ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄せられた寄付金を活用して、屋久島町が2023年度に実施した海底清掃事業で、総事業費1991万円の約1割に当たる150200万円が、メディア3社を招いたプレスツアーの交通宿泊費や「メディア露出費」に支出された。町は3社に取材を依頼した理由として、「海や自然環境の情報を特に強く発信している東京のメディア」であることを挙げている。

 ところが、記事が掲載された各メディアを詳しく見ると、主にファッションや旅、グルメなどの情報を発信している媒体だった。

「国内最大規模の男性向けライフスタイルメディア」

 まずは、ライトハウスメディア(本社・東京都港区)が出版・配信する「OCEANS」。同社のウェブサイトでは、次のように紹介されている。

<「OCEANS(オーシャンズ)」は、国内最大規模の男性向けライフスタイルメディアです。誕生日は2006224日。3040代をターゲットとしたメンズファッション誌として始まりました。創刊15年を超えた今も、デジタル版を含め毎月12万ほどの読者に支えられています>



主に女性向け「ファッション・ライフスタイル雑誌」

 次にプレジデント社(本社・東京都千代田区)が出版・配信する「VOGUE JAPAN」。ウィキペディアの記事では、次のように紹介されている。

VOGUE(ヴォーグ)とは、コンデナスト・パブリケーションズが発行するファッション・ライフスタイル雑誌である。主に女性向けとされ、ファッション、ライフスタイル、デザインなどのテーマに関する記事を掲載している。アメリカを本国とし、世界18カ国とラテンアメリカで出版されている。日本ではVOGUE JAPAN(ヴォーグ・ジャパン)と称し、毎月28日に発売される>



「女性向けファッション・カルチャー・ライフスタイル雑誌」

 最後に講談社(本社・東京都文京区)が出版する「FRaU」。ウィキペディアの記事では、次のように紹介されている。

FRaU(フラウ)は、講談社が発行・発売する月刊の女性向けファッション・カルチャー・ライフスタイル雑誌である。雑誌名はドイツ語で「夫人」を意味する><ファッション、ビューティ、インテリア、旅行、音楽、読書など、幅広いテーマが掲載される。半年に1回程度、「美容特大号」と題して各社の最新コスメ、メイクアップ、その他美容アイテム、健康法、エクササイズなどを取り上げている>



 これらの記事を読む限り、屋久島町が説明する「海や自然環境の情報を特に強く発信している」メディアでないことは明らかだ。

参加を打診した7社のうち6社がファッション系

 また、町は招待した3社以外に、次のメディア4社にもプレスツアーへの参加を打診していた。

婦人画報」「WWD JAPAN」「IDEAS FOR GOOD」「日経ESG

 このうち、「日経ESG」を除く3社は、実際に招待した3社と同様に、主にファッションや旅、グルメなどの情報を発信している媒体である。

 そして唯一、環境問題に関する情報を発信しているのは「日経ESG(日経BP)で、同社のウェブサイトでは次のように紹介されている。

<「日経ESG」は企業が持続的に成長するために欠かせないESG(環境・社会・ガバナンス)に焦点を絞った経営誌です>

 だが町によると、同社は「企業の案件は対応可能だが、自治体案件は対応していない」と回答してきたという。

 以上を踏まえると、屋久島町がプレスツアーへの参加を打診した7社のうち6社は、すべてファッションや旅、グルメなどの情報を発信するメディアであり、「海や自然環境の情報を特に強く発信している」媒体ではなかったということだ。そして、残る1社の「日経ESG」は自治体を取材の対象としておらず、そもそもプレスツアーに参加する可能性はなかった。

 つまり町は、環境問題とは関係ない、または縁が薄いメディアだけに取材を依頼していたということである。

事業費1991万円の約1割を広報費に支出

 この海底清掃事業に使われた寄付金1991万円は、寄付者が使途を「環境保全事業」と指定して町に託した浄財である。だが、それにもかかわらず町は、その全額の約1割に当たる150200万円をプレスツアーなどの広報費に支出し、環境問題が専門ではないメディア3社に取材を依頼した。

 この事実を知らされたとき、全国から浄財を寄せていただいた方々は、どのように感じるだろうか。屋久島町の寄付金の使い方は、寄付者の期待を裏切るものであると言わざるを得ない。

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