海底清掃問題

原告、寄付金の使途「環境保全」と「観光広報」で条例違反と主張 屋久島町海底清掃事業・住民訴訟

yakushima-post

事業費1700万円、寄付者が使途を「環境保全」と指定 それなのに荒木町長、「環境保全」と「観光広報」の二つだと議会答弁

議会答弁と矛盾する町、訴訟では「環境保全」のみと主張

屋久島町長の答弁

【上左】屋久島町「ふるさと納税」のロゴ(町ウェブサイトより)【上右】鹿児島地裁(裁判所ウェブサイトより)【下】海底清掃事業で制作した観光ガイドの冊子と動画について、「地域活性化支援事業」だったと答弁した荒木耕治町長(2024年3月11日、屋久島町議会YouTubeチャンネルより)

 ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報を紹介するガイド冊子や動画の制作費に支出された問題をめぐる住民訴訟――。

 114日に開かれた第3回口頭弁論で原告の渡辺千護町議は、事業費として支出された寄付金の使途について、荒木耕治町長が「環境保全事業」と「観光広報事業」(地域活性化事業)の二つだと、20243月の町議会で説明していたことを明らかにした。

 この事業に使われた寄付金は、寄付者が使途を「環境保全事業」と指定したもので、渡辺町議は、町の支出は寄付金の使途などを定めた「屋久島町だいすき寄附条例」に違反していると主張。第2回口頭弁論で、町も渡辺町議の主張を認めたうえで、「寄附者の『環境保全事業』に使ってほしいとの意向に沿った正当な支出」と反論していた。

渡辺町議、議会で事業支出の条例違反を指摘

 渡辺町議は鹿児島地裁に提出した準備書面で、2024311日に開かれた町議会で自身が一般質問に立ち、「事業の目的が『環境保全』であるにもかかわらず、実際には観光情報などを伝えるガイド冊子と動画の制作に多額の寄付金が使われている」として、この事業への支出は、寄付金の使途などを定めた「屋久島町だいすき寄附条例」に違反していると指摘した事実を示した。

渡辺千護町議2
海底清掃事業について一般質問をする渡辺千護町議=中央(2024年3月11日、屋久島町議会YouTubeチャンネルより)

荒木町長、動画や冊子の配布で「観光需要が増加する」

 続いて渡辺町議は、一般質問を受けて荒木町長が次のように答弁したと説明した。

「本事業につきましては、屋久島町だいすき寄附条例第2条、事業区分において、第1号の『世界自然遺産を始めとする地域の環境保全に関する事業』だけでなく、4号の『地域の活性化を支援する事業』にも該当するものであります」

「ご指摘の清掃活動の成果を広報する動画と観光パンフレットの制作費については、動画やパンフレットの作成及び配布が町外の人々あるいは全国的に屋久島についての関心をより高め、それにより観光需要が増加するなど、その効果は間接的であったとしても、それが屋久島の各地域の活性化につながることが明らかである以上、『地域の活性化を支援する事業』に該当するものであり、条例に違反するものではないというふうに思っております」

荒木町長答弁ヨコ
海底清掃事業で制作した観光ガイドの冊子と動画について、「地域活性化支援事業」だったと答弁した荒木耕治町長(2024年3月11日、屋久島町議会YouTubeチャンネルより)

渡辺町議「寄付者との約束を反故にする支出」

 荒木町長の議会答弁を踏まえ、渡辺町議は町が事業を実施した目的について、「環境保全事業」と「地域活性化支援事業」(観光広報事業)の二つであることは明らかだと指摘。この事業に支出された寄付金は、寄付者が「環境保全事業」に使ってほしいと指定したもので、その寄付金を観光広報の目的で「地域活性化支援事業」に使うことは、「寄附者が自身の浄財を被告に託す際に交わした『約束』を、被告が反故にするものだといえる」と主張した。


動画 41分30秒~海底清掃事業で制作した観光ガイドの冊子と動画について、「地域活性化支援事業」だったと答弁した荒木耕治町長(2024年3月11日、屋久島町議会YouTubeチャンネルより)

訴状への認否で町、支出の目的は「環境保全」だけと認める

  20246月に提出した訴状で渡辺町議は、事業費の約1700万円は「寄附者が『環境保全事業』に使ってほしいと指定して寄附した約14000万円のなかから支出された」と指摘した。

 それに対し町は、同年10月に提出した準備書面で、訴状における渡辺町議の指摘を認めたうえで、「動画やパンフレットを作成し、これを世の中に発信する作業は『水の循環』という環境保全事業にとって必須作業だといえる」と主張。さらに、ガイド冊子や動画の制作に寄付金を使うことは、「屋久島町だいすき寄附条例」が使途として定める「環境保全事業」への支出であり、「寄附者の『環境保全事業』に使ってほしいとの意向に沿った正当な支出」と反論していた。

 この住民訴訟で渡辺町議は、海底清掃事業への支出は、ふるさと納税の寄付金の使途を定めた「屋久島町だいすき寄附条例」に違反しているなどとして、町に対して、事業に支出した約1700万円を荒木耕治町長ら町幹部3人に賠償請求するように求めている。

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事
これらの記事も読まれています
記事URLをコピーしました