【視点】総事業費の大幅削減「事業の不適切さを認めた証左」 屋久島町・海底清掃事業
22年度1700万円➡23年度2000万円➡24年度300万円の桁違い減額
町、報道と町議の追及で減額か?
【上左】屋久島町「ふるさと納税」のロゴ(町ウェブサイトより)【上右】2022年度の海底清掃事業を請け負ったJTBパブリッシングが入るJTBグループのロゴとスローガン(Wikimedia Commons より)【中段】屋久島町役場【下】2023年度の海底清掃事業を請け負った株式会社「オーシャナ」のロゴ(同社ウェブサイトより)
屋久島町が2022年度から始めた海底清掃事業には、ふるさと納税の寄付金が使われている。寄付した人たちは寄付金の使い道として、町の条例で定められた「環境保全事業」を指定して、「屋久島の自然を守って欲しい」との思いを町に託した。
それにもかかわらず、2022年度の事業では、総事業費1700万円の大半が海底清掃ではなく、屋久島の観光情報を伝えるガイド冊子と動画の制作費に使われた。さらには、この事業の主眼であるはずの海底清掃で、実際に潜水したのは2時間だけだったうえ、集めたごみの総量も報告されることはなかった。
また、2023年度の事業では、総事業費2000万円のうち、340万円が「主任研究員」や「研究員」らの人件費に使われたが、実際には研究活動は行われていなかった。その一方、作業ダイバー延べ52人分の日給などとして、海底清掃には500万円を支出。企画コーディネート費にも220万円を使っており、「主任研究員」らに高額な人件費を支払う必要はなかったとみられる。
町、予定価格を設定せず業者の「言い値」を丸のみ
いずれの年度も、屋久島町は複数の業者が参加する競争入札を実施することなく、委託業者と特命随意契約を結んだ。担当した観光まちづくり課は、参考見積もりを基に事業費の予定価格を設定しないまま、業者が提示した見積書の金額をそのまま受け入れた。
つまり、過去2年間の事業で、町は業者側の「言い値」を丸のみしていたということである。そして寄付金を、条例が定めた「環境保全事業」ではなく、「観光広報事業」に充てたうえ、支払う必要がない「主任研究員」らの人件費に使っていたのである。
「環境保全」を装った「観光広報」事業
2022年度の事業を請け負ったのは、旅行大手JTBの出版部門を担う関連会社「JTBパブリッシング」(本社・東京都江東区)だった。
海底清掃事業を実施するにあたり、出版業務が専門であるはずの同社が「余人をもって代え難い業者」として、町と特命随意契約を結ぶ理由はなかった。それゆえ総事業費の大半が、同社の得意分野である観光情報を伝えるガイド冊子や動画の制作費に使われたのであろう。また、海底清掃で実際に潜水したのが2時間だけだったことから、この事業は「環境保全事業」を装った「観光広報事業」だったと言わざるを得ない。
研究しないのに日給7万7000円で20日間154万円
続いて2023年度の事業を請け負ったのは、潜水業者の「オーシャナ」(本社・東京都中央区)だった。
同社の専門はダイビングや海中撮影、ネットでの情報発信などだが、なぜか「主任研究員」や「研究員」の名目で高額な人件費を町に請求していた。だが、実際には研究活動を一切することなく、事業全体のコーディネート的な仕事をしただけだった。そうであれば、「主任研究員」に対する日給7万7000円、20日間で154万円もの報酬は、法外に高額だったことは明らかである。
24年度の340万円、全額が清掃活動の直接経費
その一方、同事業の3年目となる2024年度は、これまでとは一転して、総事業費が300万円に激減した。詳細に見積書を見ると、「主任研究」らの人件費や企画コーディネート費などの名目は消え、すべてが清掃活動に関わる直接的な経費になった。
2022年度が1700万円、2023年度が2000万円だった総事業費が、なぜ2024年度は300万円と桁違いに削減されたのか。
その理由は、ただ一つしか考えられない。この海底清掃に対する不適切な事業費の支出を明らかにした屋久島ポストの報道を受け、一部の町議が議会で問題にして、さらに住民訴訟を提起したからだ。もし、報道や町議の追及がなければ、町は2024年度も2000万円ほどの予算を計上していたであろう。
これらの経緯を踏まえると、総事業費の300万円への減額は、過去2年間の高額な事業費が不適切であったと、屋久島町役場が自ら認めた証左と言っても過言ではない。