海底清掃事業を「丸投げ」 実際のごみ総重量や廃棄費用を把握せず 屋久島町・環境保全プロジェクト
見積書「ゴミ回収廃棄費用」「交通宿泊費」は「終了後実費精算」➡ 町、精算額を確認せず見積額257万円をそのまま支払い
町課長「契約書に実費精算が必要とは記載されていない」
【左】海底清掃事業の見積書の一部。「※下記は、終了後実費精算」と示され、その下に「ゴミ回収廃棄費用」と「交通宿泊費」が記載されている【右】海底清掃の成果などを広報するために、屋久島町が発行した「るるぶ特別編集 屋久島」の表紙
全国から「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、清掃活動を広報する動画と観光パンフレットの制作費に支出されていた問題――。
この事業に支出した1700万円の内訳が記載された見積書で、「終了後実費精算」とされた「ゴミ回収廃棄費用」と「交通宿泊費」の計約257万円(税抜き)について、町が最終的な精算額を確認せず、見積書に記載された金額のまま業者側に支払っていたことが12月28日、町への取材でわかった。町は、実際に回収したごみの総重量も把握しておらず、実質的に海底清掃事業を「丸投げ」した状態で業務委託費を支出していた。
屋久島町が海底清掃事業の業務委託契約を結ぶ際に添付した見積書。文書の中段左側に「※下記は、終了後実施精算」と記載されている(※赤丸は屋久島ポストが加工)
町、随意契約でJTBパブリッシングに業務委託
町が実施したのは、海底清掃を主体とする「海・川・山の繋がりで豊かな屋久島の自然を守るプロジェクト」で、旅行大手JTBの出版部門を担う関連会社「JTBパブリッシング」が企画を提案。町は2022年7月、複数の事業者による入札は行わず、「特命随意契約」で同社と業務委託の契約を結んだ。
ごみの総重量と精算額、実施報告書で示されず
町が開示した同事業の見積書によると、「ゴミ回収廃棄費用」と「交通宿泊費」については計約257万円の詳細な内訳が示され、その上段に「※下記は、終了後実費精算」と記載。すべての事業が終了したのちに実費精算して、町が実際にかかった経費を支払うことになっていた。
ところが、同社が2023年3月31日付で町に提出した「実施報告書」では、実際に回収したごみの総重量と廃棄費の精算額は示されなかった。見積書では「ゴミ回収廃棄費用」の単価は5万円とされ、数量を「20」として計100万円と記載。それに対し、実施報告書では「40分ほどの作業でフレコン3袋」「40分ほどでプラスチック片やペットボトルを多く回収」などと記載されたのみで、見積額の100万円のうち、実際にかかった廃棄費用の金額は報告されなかった。
海底清掃事業の「実施報告書」の一部。「40分ほどでプラスチック片やペットボトルを多く回収」などと記載されたが、実際に回収したごみの総重量は報告されなかった
交通宿泊費の領収書と精算額も報告なし
また、「交通宿泊費」についても、実施報告書では最終的な精算額は示されなかった。見積書では「航空運賃 東京⇔屋久島往復」「宿泊費」「レンタカー代」などについて、「単価」「数量」「金額」が詳細に示され、その合計は約157万円だった。だが、実施報告書では各支出を証明する領収書などは添付されず、実際にかかった航空運賃や宿泊費などは報告されなかった。
これら未精算の「ゴミ回収廃棄費用」と「交通宿泊費」も含めて、町は2023年3月31日付で「検査調書」を作成して、「仕様書のとおり納品されている(合格)」と記載。最終的な精算額を確認することなく、海底清掃の成果などを報告する動画と観光パンフレットの制作費なども加えた業務委託費として、4月21日までに計約1700万円を同社に支払った。
見積書に記載された「ゴミ回収廃棄費用」と「交通宿泊費」の一覧。単価や数量、金額が詳細に示され、「終了後実費精算」するはずだったが、町は精算額を確認せず、そのまま見積額を支払った
屋久島ポスト「町には精算額を確認する責任がある」
実費精算するはずだった「ゴミ回収廃棄費用」と「交通宿泊費」について、町観光まちづくり課の泊光秀課長は屋久島ポストの取材に、実際に回収したごみの総重量や、ごみ廃棄費用と交通宿泊費の精算額を把握していないことを認めたうえで、「業務請負契約書に実費精算が必要とは記載されていない」と説明。それに対し、屋久島ポストが「見積書に基づいて契約を結んでいる以上、町には実際の精算額を確認する責任がある」と伝えると、泊課長は業者側に確認するとした。
総事業費の約7割が広報費 海底での清掃は計2時間
この海底清掃事業をめぐっては、総事業費の約1700万円のうち、その約7割にあたる約1165万円が海底清掃そのものではなく、清掃活動を広報する動画と観光パンフレットの制作に支出されていたことが判明。また、実際に海底で清掃した潜水時間が合計で2時間だったことなどがわかっている。
業者の選定に当たって担当課は、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号の規定を挙げていますが、数社によるコンペ方式やプロポーザル方式も考えられる中で、なぜ競争が生じない方法で「JTBパブリッシング」と業務委託契約を結んだのか?
最初から「JTBパブリッシング」ありきの環境保全事業ではなかったのか、と疑いたくなります。
さらに、見積書の「※下記は、終了後実費精算」と記載していたゴミ回収廃棄費用と交通宿泊費について、実施報告書には精算額の記載がないと屋久島ポストは書いています。
見積書の単価の高さにとどまらず実施報告書の精算額の不記載など、屋久島町は「JTBパブリッシング」に好きなようにやられていますね。
全国から寄せられた「ふるさと納税」約1700万円もの寄付金をこのようなことで使うのは、納税者の善意を裏切ることになりませんか?
<参考(地自法施行令第167条の2は、随意契約について規定しています)>
不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。(地方自治法施行令第167条の2第1項第2号)
最後に、以下の三点について理由・内容等を聞いてみたいものです。
・担当課長は、今月の12月定例議会で「令和4年6月補正予算で予算計上した」と答弁していたが、当初予算で計上しなかった理由は何なのか?
・このことに関して、令和4年度決算審査の席で町議からはどのような質疑等があったのか?
・町監査委員は、監査意見の中で、このことに関して何か言及しているのか?