海底清掃問題

【視点】予算上限1700万円、JTBパブリッシングは契約前から知っていたのか? 屋久島町海底清掃事業

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参考見積書に職員のメモ「14,807,650」「16,897,65017,000,000円 JTBパブリッシング、上限額1700万円とほぼ同額1698万9918円で契約

町が自ら200万円増額を提案する「異例対応」
参考見積書メモ2

【上】JTBパブリッシングの参考見積書に残された手書きのメモ。合計金額に「14,807,650」と取り消し線が引かれ、その横に「16,897,65017,000,000円」と記されている【下左】海底清掃事業を請け負ったJTBパブリッシングが入るJTBグループのロゴとスローガン【下中・右】「屋久島町ふるさと納税」と屋久島町のロゴ(町ウェブサイトより)

 ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された浄財を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃事業の予算額を決める際に、町が「異例」の対応をしていたことがわかった。

 業務委託業者に内定していたJTBパブリッシング(本社・東京都江東区)が提案した約1500万円の参考見積額に対し、町が自ら進んで約200万円の増額を申し出ていたというのだ。その結果、同社は総事業費約1700万円の見積書を提出。町は複数の業者が参加する競争入札を実施することなく、見積書と同じ金額で同社と特命随意契約を結んでしまった。

町、法的に定められた予定価格の設定を怠る

 地方自治体が公共事業の予算を決める際には、複数の業者から参考見積もりを取り寄せたうえで、必要最小限の経費に抑えた予算額を設定することになっている。そして、事業費の上限となる「予定価格」を決めて、その上限額以下の事業費を提案した業者と業務委託契約を結ぶことが、法的に定められている。

 ところが町は、この事業で予定価格の設定を怠り、違法なかたちでJTBパブリッシングと契約してしまった。本来であれば、同社が提出した見積書を精査し、一般社会で認められる適正な金額かどうかを確認して予定価格を決める必要があったが、町は同社が提案した約1700万円のままで業務を委託した。

 つまり、町はJTBパブリッシングが提示した「言い値」をそのまま受け入れ、海底清掃業務を委託したということである。さらには、参考見積額の約1500万円に対し、町側から約200万円の増額を提案していたことを踏まえると、この事業の予算額は、参考見積もりを取り寄せる前から、約1700万円であることが決まっていたということである。

 そうなると、JTBパブリッシングは業務委託契約を結ぶ前から、約1700万円の予算上限額を知っていた可能性がある。そして、その予算額を同社に伝えられるのは、他の誰でもない、屋久島町ということになる。
参考見積書
JTBパブリッシングが2022年5月10日付で町に提出した総事業費1480万7650円となる参考見積書。屋久島町は内訳を全面黒塗りして開示した(モザイクは屋久島ポストが加工)

町、上限1700万円を前提に200万円増額を提案か?

 公共事業を発注する地方自治体が競争入札を実施する際に、受注を目指す特定の一業者だけに対し、入札の前から予定価格を教えていたとなれば、それは「官製談合」という違法行為になる。そして、今回のように受注業者が内定していた特命随意契約でも、業務委託契約を結ぶ前から予算額を業者に知らせることは、事業費を必要最小限に抑えるためにも、決して許されることではない。

 JTBパブリッシングが2022510日付で出した請求金額「14,807,650」円の参考見積書は、その内訳が真っ黒に塗りつぶされた状態で開示されたため、詳細な内容をうかがい知ることはできない。だが、参考見積書の下にある「合計金額」を見ると、「14,807,650」と取り消し線が引かれ、その横には「16,897,650≒17,000,000円」と手書きのメモが残されている。
参考見積書メモ
JTBパブリッシングの参考見積書に残された手書きのメモ。合計金額に「14,807,650」と取り消し線が引かれ、その横に「16,897,650≒17,000,000円」と記されている

 これは担当職員が書いたものだとみられるが、いったい何を意味するのか?

 おそらくだが、予算額の上限が1700万円であることを前提に、参考見積額の14807650円に約200万円を上積みして、16897650円にすることを提案した際に、職員がメモしたのであろう。そして、この約200万円増額の提案を受けて、JTBパブリッシングは711日付で16989918円の見積書を提出したとみられ、その2日後には見積額と全く同じ金額で町と業務委託契約を結んでいる。
JTB見積書
JTBパブリッシングが2022年7月11日付で町に提出した総事業費1698万9918円となる見積書(モザイクは屋久島ポストが加工)

町には全国の善意に対する説明責任がある

 町側から約200万円の増額を提案した理由について、担当の観光まちづくり課は「住民訴訟が提起された案件なので、どこまで説明していいのか、いま代理人弁護士に相談している」として、屋久島ポストへの回答を留保している。

 だが、この事業は「屋久島の自然を守って欲しい」と寄せられた浄財で実施されており、全国からの善意に対する説明責任が、屋久島町にはある。裁判で係争中であることを理由に、その責任から逃れることはできない。


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