町監査委員、監査記録の過程を公文書として保管せず 屋久島町・海底清掃事業
担当課への聴取、弁護士への相談、記録文書やメモは一切なし
「記憶を頼りに監査報告書を作成」か?
【上】屋久島町役場【下左】屋久島町「ふるさと納税」のロゴ(町ウェブサイトより)【下右】鹿児島地裁(裁判所ウェブサイトより)
ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報などを紹介するガイド冊子や動画の制作費に支出された問題――。
この事業に対する住民監査請求を受けた町の監査委員が、監査結果報告書を出すまでの過程で聴き取りなどをした監査記録を公文書として保管していないことが9月18日、屋久島ポストの取材でわかった。同事業を担当した観光まちづくり課への聴取記録や、法律相談をした弁護士事務所とのやり取りはすべて口頭のみで、文書やメモでの記録を一切残していなかった。
屋久島ポストが今年8月末に情報公開請求をして、監査の過程を記録した文書を開示請求したことで、関係の公文書が存在しないことが判明した。
町監査委員事務局によると、事務局のファイルに残されているのは、法律相談で鹿児島市に出張した監査委員2人と事務局職員の出張記録と、弁護士への相談依頼書だけだった。それ以外の文書やメモは残されておらず、聴き取りや相談した際の「記憶を頼りに監査報告書を作成したのではないか」という。
相良委員「メモは何も取らず、記録は残していない」
監査の過程を記録した公文書が残されていなかったことを受けて、屋久島ポストは9月18日夕、議会選出の相良健一郎委員に事実関係を確認したが、相良委員は「自分に関しては、メモは何も取らず、記録は残していない」と話した。
この住民監査請求は4月2日、渡辺千護町議によって出された。同事業への予算の支出は、ふるさと納税の寄付金の使途を定めた「屋久島町だいすき寄附条例」に違反しているなどとして、事業を進めた荒木耕治町長ら幹部3人に総事業費の約1700万円を返還するように求めたが、町監査委員は5月30日に請求を棄却。それを受け、渡辺町議は8月8日に住民訴訟を鹿児島地裁に提起した。