【検証】市販「るるぶ」の写真、公費制作の観光ガイド冊子で使いまわし 屋久島町・海底清掃事業
すべて重複 JTB「るるぶ」と公費制作の冊子で紹介の飲食店
環境保全の寄付金1700万円のうち536万円で冊子制作
【上】屋久島町がJTBパブリッシングに制作を委託した観光ガイド冊子の表紙とグルメ情報ページ【下】JTBパブリッシングが毎年発行している「るるぶ」の「奄美 屋久島 種子島」の表紙(※著作権保護のため、報道目的で必要な雑誌のタイトル以外はモザイク加工をしています)
ふるさと納税で「屋久島の環境を守って欲しい」と託された寄付金を、本来の目的であるはずの環境保全ではなく、観光ガイド冊子の制作に使うことは許されるのか?
屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、寄付金1700万円の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報などを紹介する広報費に使われたことに対して、住民監査請求が4月に出された。
この問題を取り上げた前回の【検証】記事では、観光ガイド冊子の制作が寄付金の使途を定めた「屋久島町だいすき寄附条例」に違反している疑いを指摘。さらに、冊子のなかで特定の飲食店などを「優遇」する形で紹介していることに対し、住民から「不公平だ」とする不満の声が上がっていることを伝えた。
今回の【検証】では、この冊子に掲載されたグルメ情報の内容を詳細に紹介したうえで、町の委託で冊子を制作したJTBパブリッシング(本社・東京)が毎年発行している観光ガイドブック「るるぶ」の記事と比較する。
屋久島町がJTBパブリッシングに制作を委託した観光ガイド冊子のグルメ情報ページ。「島のめぐみをいただきます」と題して、特定の飲食店を詳しく紹介している(モザイクは屋久島ポストが加工)
公費制作の冊子、特定の飲食店へいざなう
公費で制作した観光ガイド冊子は全12ページで、そのなかほどにはグルメ情報のページがあり、大きく「島のめぐみをいただきます」と題されている。さらに読み進むと、「大自然に囲まれた屋久島は、海や山の幸が豊富!」と、島の食材の魅力を紹介。そして、島の飲食店へいざなうように、「島の豊かな食材を使ったメニューを味わえるお店や、島時間を楽しみながらゆっくり過ごせるカフェはコチラ♪」とある。
その誘いに従って見開きの右ページをみると、「島ごはん」と題して3軒の料理店が取り上げられていた。
屋久島町がJTBパブリッシングに制作を委託した観光ガイド冊子のグルメ情報の右ページ。イタリアンレストラン、和食店、焼肉店の3軒を写真付きで紹介している(モザイクは屋久島ポストが加工)
ヤクシカ肉が人気の焼肉店も
まず初めは、屋久島空港近くのイタリアンレストランで、「イタリアから仕入れる食材と地元屋久島の厳選素材を融合させた本格イタリアンが堪能できる」と紹介。続いては「新鮮な地魚や地元食材を味わえる」和食店で、「屋久島の旬の味覚を楽しめると評判だ」という。そして最後は、黒毛和牛や黒豚などを提供する焼肉店。この店では、ヤクシカの肉も提供するとされ、「脂肪分が少なくヘルシーな鹿肉は、淡白であっさりとした味わいが人気だ」と評価している。
安房川を望むカフェでは「自家製イングリッシュマフィンのサンドイッチが好評」と絶賛
次に左ページに目をやると、「島カフェ」と称して4軒のカフェの情報が、各店の看板メニューの写真とともに紹介されていた。
屋久島町がJTBパブリッシングに制作を委託した観光ガイド冊子のグルメ情報の左ページ。4軒のカフェを写真付きで紹介している(モザイクは屋久島ポストが加工)
島東部を流れる安房川を望むカフェには、「店主が毎日焼くケーキをはじめ、自家製イングリッシュマフィンのサンドイッチやパフェが好評」と絶賛。屋久島空港近くには、「滑走路や海、種子島を一望できる、眺めのいいカフェ」があり、さらに別の2軒では「屋久島産のフルーツをたっぷり使ったスムージーやジュース」「バターチキンカレーとカオマンガイなどのアジア系ごはん2種類」が楽しめることを伝えている。
前回の【検証】では、特定の店舗を宣伝する記事に対して、冊子で紹介されなかった民間業者から不満の声が出ていることを伝えた。だが、さらにこれだけ特定の店を絶賛する見開きページを見せられたら、「公費でここまでの宣伝はあり得ない」といった批判が出るに違いない。
「るるぶ」の「常連」を公費制作の冊子でも紹介
それでは次に、この冊子のグルメ情報について、同社が毎年発行している「るるぶ」の「奄美
屋久島 種子島」編と比べてみたい。
JTBパブリッシングが毎年発行している「るるぶ」の「奄美 屋久島 種子島」の表紙(※著作権保護のため、報道目的で必要な雑誌のタイトル以外はモザイク加工をしています)
まず初めに、冊子で紹介された7軒のうち、実に6軒が過去3年続けて「るるぶ」で紹介されていることがわかった。また、残る1軒についても、過去2年にわたって掲載されており、いずれも「るるぶ」にとっては「常連」の店であるようだ。
続いて、「るるぶ」の「島ごはん」「くつろぎカフェ」と題された見開き2ページを覗いてみると、そこには冊子で見覚えのある写真がいくつも並んでいた。よく見ると7軒のうち6軒は、冊子とまったく同じか、ほぼ同じカットの写真が使われている。さらに詳細に比べると、残る1軒についても、同じピザとパスタを違う角度から撮影していることがわかる。
公費制作の冊子で紹介された焼肉店の記事(モザイクは屋久島ポストが加工)
JTBパブリッシング発行の「るるぶ 奄美 屋久島 種子島」で紹介された焼肉店の記事。料理と店内の写真は、公費で制作した冊子の写真と同じものを掲載している(※著作権保護のため、報道目的で冊子と比較する写真と写真説明以外は、モザイク加工をしています)
公費制作の冊子で紹介されたカフェの記事(モザイクは屋久島ポストが加工)
JTBパブリッシング発行の「るるぶ 奄美 屋久島 種子島」で紹介されたカフェの記事。公費制作の冊子で使われた写真とまったく同じものを掲載している(※著作権保護のため、報道目的で冊子と比較する写真と写真説明以外は、モザイク加工をしています)
公費制作の冊子で紹介されたカフェの記事(モザイクは屋久島ポストが加工)
JTBパブリッシング発行の「るるぶ 奄美 屋久島 種子島」で紹介されたカフェの記事。料理とスイーツ、店内の写真は、公費制作の冊子で使われたのと同じものを掲載している(※著作権保護のため、報道目的で冊子と比較する写真と写真説明以外は、モザイク加工をしています)
公費制作の冊子で紹介された和食店の記事(モザイクは屋久島ポストが加工)
JTBパブリッシング発行の「るるぶ 奄美 屋久島 種子島」で紹介された和食店の記事。料理の写真は、公費制作の冊子で使われたのと同じものを掲載している(※著作権保護のため、報道目的で冊子と比較する写真と写真説明以外は、モザイク加工をしています)
公費制作の冊子で紹介されたカフェの記事(モザイクは屋久島ポストが加工)
JTBパブリッシング発行の「るるぶ 奄美 屋久島 種子島」で紹介されたカフェの記事。店外観の写真は公費制作の冊子で使われたのと同じで、料理の写真もほぼ同じカットを掲載している(※著作権保護のため、報道目的で冊子と比較する写真と写真説明以外は、モザイク加工をしています)
公費制作の冊子で紹介されたカフェの記事(モザイクは屋久島ポストが加工)
JTBパブリッシング発行の「るるぶ 奄美 屋久島 種子島」で紹介されたカフェの記事。ドリンクと店内の写真は、公費制作の冊子で使われたのと同じものを掲載している(※著作権保護のため、報道目的で冊子と比較する写真と写真説明以外は、モザイク加工をしています)
「長年のノウハウ」は情報や写真の使いまわし?
公費で制作した冊子について、同社ブランド戦略室は取材に「長年観光ガイドブックを制作してきたノウハウを活かし編集しています」と説明しているが、これでは「るるぶ」で取材した情報や写真を、公費制作の冊子で使いまわしているのと同じだ。さらには、冊子は2万部が印刷されたが、毎年発行されている「るるぶ」とここまで同じグルメ情報となれば、貴重な寄付金を費やしてまで、重複して紹介する必要性はないと言わざるを得ない。
そもそもだが、寄付金1700万円は本来の事業目的である海底清掃に使うべきものだ。それにもかかわらず、その約3割に当たる約536万円を冊子の制作に費やしたとなれば、寄付をした人たちの理解は得られないだろう。
そして最後の見開きページで、ようやく海底清掃の記事が登場するのだが、公費制作の冊子に対する疑念はさらに深まっていく。
(次回に続く)