海底清掃問題

町、ふるさと納税の拡大を「究極の目的」に特命随意契約 海底清掃事業・住民訴訟/屋久島ポスト

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原告町議、海底清掃の実績ない業者と特命随意契約「合理的な理由なし」

JTBは屋久島町ふるさと納税の中間業者

上左】海底清掃事業を請け負ったJTBパブリッシングが入るJTBグループのロゴとスローガン【上中・上右】「屋久島町ふるさと納税」と屋久島町のロゴ(町ウェブサイトより)【下】屋久島町がJTBパブリッシングに業務委託して制作した観光ガイド冊子「るるぶ特別編集 屋久島」

 ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主目的とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報を紹介するガイド冊子や動画の制作費に支出された問題をめぐる住民訴訟――。

 被告町は9月2日付で準備書面を鹿児島地裁に提出し、町が同事業を業務委託する際に競争入札を実施せず、優先的にJTBパブリッシング(本社・東京都江東区)と特命随意契約を結んだのは、ふるさと納税の寄附金を増やすという「究極の目的達成に合致する業者だった」からだと主張した。

 原告の渡辺千護町議は、同社には海底清掃事業を手掛けた実績がないことから、「町が特命随意契約を結ぶ合理的な理由はなかった」として、事業費1700万円の全額が違法な支出だったと訴えていた。


原告、海底清掃事業委託の理由を「具体的に主張立証すべき」

 これまでの口頭弁論で町は、JTBパブリッシングと特命随意契約を結んだ理由について、「全国的に見て最大手の観光事業者であるJTBの関連会社であるJTBパブリッシングの知名度、組織力事業遂行能力等を利用することは、より合理性の高い判断であった」と主張。これに対し渡辺町議は、この事業の主目的は海底清掃であり、同社には海底清掃事業を請け負った実績がなかったことから、町に対して「海底清掃事業を(同社に)委託した合理的な理由を、具体的に主張立証するべきである」と求めていた。

海底清掃事業をめぐる住民訴訟の審理が続けられている鹿児島地裁=2025年8月、屋久島ポスト撮影

町「JTBと連携してふるさと納税の拡大に繋げることができる」

 9月2日付で提出された準備書面で町は、JTBパブリッシングと特命随意契約を結んだ理由について、JTBが屋久島町ふるさと納税の中間業者であることを踏まえて、次のように説明した。

「JTBパブリッシングは、企画のコーディネーターとしての経験が豊富にあり、 そのための十分なノウハウを有していた」

「確かにJTBパブリッシング自体が海底清掃作業などは行わないが、これまでの実績及び経験から、海底清掃作業に適した外部専門家と繋がりがあり、彼らと共同して海底清掃作業及びその撮影が可能であった」

「JTBパブリッシングはJTBの子会社であり、 JTBと連携してこの企画を被告町のふるさと納税の拡大に繋げることができる立場にあった」


町、海底清掃を再委託した業者の実績は示さず

 以上の主張を踏まえて町は、「『ふるさと納税の拡大』という目的を考えた場合、JTBパブリッシングとの契約のみがその究極の目的達成に合致する業者だったといえる」と主張。その一方で、同社が海底清掃事業を再委託した業者については、「海底清掃作業に適した外部専門家」と説明するに留まり、過去の具体的な業務実績を示すことはなかった。

 この町の準備書面に反論するため、渡辺町議は次回9月30日の第6回口頭弁論までに準備書面を提出する。

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