屋久島町、海底清掃の実績がない業者と海底清掃事業で優先契約/屋久島ポスト
渡辺町議、海底清掃の実績なく「特命随意契約を結ぶ合理的な理由はない」→ 鹿児島地裁「JTBパブリッシングに業務委託した理由と必要性を明確に立証せよ」

【上左】海底清掃事業を請け負ったJTBパブリッシングが入るJTBグループのロゴとスローガン【上中・上右】「屋久島町ふるさと納税」と屋久島町のロゴ(町ウェブサイトより)【下】屋久島町がJTBパブリッシングに業務委託して制作した観光ガイド冊子「るるぶ特別編集 屋久島」
ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報を紹介するガイド冊子や動画の制作費に支出された問題をめぐる住民訴訟――。
7月4日に開かれた第5回口頭弁論で原告の渡辺千護町議は、町がこの事業を実施する際に競争入札を行わず、優先的にJTBパブリッシング(本社・東京都江東区)に業務を委託したのは、違法な特命随意契約だったと主張した。同社には海底清掃事業を手掛けた実績がないことから、渡辺町議は「町が特命随意契約を結ぶ合理的な理由はない」として、事業費1700万円の全額が違法な支出だったと訴えた。
この主張を受けて、鹿児島地裁は町に対し、JTBパブリッシングに業務を委託した理由と必要性を明確に立証するように求めた。
渡辺町議の主張は次のとおり。
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海底清掃事業の実績がない業者との契約
これまで原告は、この事業を請け負ったJTBパブリッシングには海底清掃事業を請け負った実績がないことを踏まえ、海底清掃事業を主目的とする本事業について、屋久島町がJTBパブリッシングと特命随意契約を結ぶ合理的な理由はないと主張してきた。
これに対し町は、何ら反論することなく、「本件事業は環境保全事業であると同時に副次的に地域活性化支援事業の一環としても意義を有する事業なのであり、観光産業をはじめ地域社会を活性化させるためには全国的なネームバリューを誇り、多くの顧客、関連会社をもつ JTBパブリッシングによる広報は、 地域活性化に資することは明らかである」と主張するのみである。
しかしながら、町が上記で指摘しているとおり、何よりもまず「本件事業は環境保全事業」である。そして、町がこの事業の目的の一つだと主張する「地域活性化支援事業」については、町も自ら認めているとおり、あくまでも「副次的」なものであり、この事業の主目的が海底清掃事業であることは明らかである。それゆえ町は、なぜ海底清掃事業をJTBパブリッシングに特命随意契約で委託したのか、その明確な理由を説明する必要があるが、これまでに一度も説明していない。
今後の裁判で、この事業で特命随意契約を結んだ理由として、町が「全国的に見て最大手の観光事業者であるJTBの関連会社であるJTBパブリッシングの知名度、組織力事業遂行能力等を利用することは、より合理性の高い判断であったといえる」との主張を続けるのであれば、海底清掃事業を委託した合理的な理由を、具体的に主張立証するべきである。
観光広報事業の特命随意契約について
これまで原告は、町がこの事業の目的の一つだと主張する「地域活性化支援事業」について、観光広報事業を得意とする業者はJTBパブッシングの他にも数多くあり、この事業を特命随意契約で委託する合理的な理由はないと主張してきた。
実際にこの事業とは別に、2020年度から町は、屋久島の魅力を伝える観光ガイド冊子「屋久島。神秘の島でしたい63のコト」の発行を続けているが、初年度については競争入札を実施して、東京の大手出版社「KADOKAWA」と契約したうえで、2021年度以降は同社が特命随意契約で冊子の内容を更新している。それゆえに、観光広報を主眼とした「地域活性化支援事業」を実施するのであれば、本来であれば、複数の業者が参加する競争入札を実施するべきところであった。
今後の裁判で、観光広報を主眼とした地域活性化事業で特命随意契約を結んだ理由として、町が「全国的なネームバリューを誇り、多くの顧客、関連会社をもつJTBパブリッシングによる広報は、地域活性化に資することは明らかである」との主張を続けるのであれば、電通や博報堂などの大手広告会社及びその他の大手出版社ではなく、JTBパブリッシングと独占的に契約を結んだ合理的な理由を、具体的に主張立証するべきである。
