寄付金でプレスツアー、取材経費に加えて「メディア露出費」100万円も支出 屋久島町海底清掃事業
メディア3社5人の交通宿泊費+メディア露出費100万円=計150~200万円
屋久島町が南日本新聞やMBC南日本放送など在鹿児島の地元メディアに出した「【取材のご案内】」。だが、自社で経費を負担して取材した地元メディアはなかった
ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報などを伝える冊子や動画の制作費に支出された問題――。
この事業の2年目となる2023年度の実績を広報するために実施したプレスツアーで、町が東京から招いたメディア3社の交通宿泊費に加えて、「メディア露出費」として100万円を支出していたことが、屋久島ポストの取材でわかった。これでプレスツアーの経費は計150~200万円になるとみられ、町は「メディア露出費はプレスツアーの準備や実施の費用として使った」と説明。だが、同事業の総事業費1991万円は、寄付者が使途を「環境保全事業」と指定した寄付金から支出されており、その約1割がメディアでの広報費に使われたことになる。
町、計5人の東京往復交通費とホテル2泊分を負担
町は2024年3月27~29日にプレスツアーを実施して、東京から「OCEANS」(ライトハウスメディア)、「VOGUE JAPAN」(プレジデント社)、「FRaU」(講談社)の3社を招いて取材を依頼した。3社からは計5人の取材者が訪れ、町は東京往復の交通費とホテル2泊分(THE HOTEL YAKUSHIMA、屋久島いわさきホテル)の経費を負担した。
「PRプランニング、メディアアテンド」などに別途100万円
さらに町は、このプレスツアーの準備や実施のために、3社の交通宿泊費に加えて、「メディア露出費」として100万円を支出。町が業務を委託したダイビング業者「オーシャナ」(本社・東京都中央区)に具体的な支出内容を確認したところ、「PRプランニング、PRスケジュール作成、ベースメディアリスト作成、メディアアプローチ、メディアクリッピング、取材案内・当日案内など資料作成、現場帯同・メディアアテンド、稼働にかかる経費」に使ったことがわかった。
屋久島町が「メディア露出費」100万円の使い道などを確認するために送信したメールに対し、委託業者の「オーシャナ」が返信したメール(赤枠は屋久島ポストが加工)
総事業費1991万円、「環境保全」に使途指定の寄付金から支出
事業を担当した観光まちづくり課によると、2023年度の総事業費1991万円は、ふるさと納税の寄付者が使途を「環境保全事業」と指定した寄付金から支出。そのうち、3社から取材に訪れた計5人の交通宿泊費は、「旅費交通費」として計上された232万円のなかから支出されたという。
同課は屋久島ポストの求めに応じて、3社5人の交通宿泊費に支出した金額をオーシャナに確認中だが、その合計は50~100万円とみられる。そして、それに100万円の「メディア露出費」を加えると、プレスツアーに支出した経費は計150~200万円となり、総事業費の1割程度になる見込みだ。
南日本新聞など地元メディアは無関心
一方、町が取材経費を負担するプレスツアーとは別に、町は2024年3月に「【取材のご案内】」を南日本新聞やMBC南日本放送といった在鹿児島のメディアに出した。だが、自社で経費を負担して取材した社はなく、この事業の成果を地元メディアが報じることはなかった。