海底清掃問題

1700万円の大半、寄付者の希望に反して支出の疑い 屋久島町・海底清掃事業

yakushima-post

町広報誌、寄付金の使途は「地域の環境保全」と報告  実際は大半が観光ガイド冊子や動画の制作費 海底清掃の潜水は2時間のみ

条例違反の疑いで住民監査請求

町報メイン写真①
【左】2022年度のふるさと納税に関する「町報やくしま」(2023年8月号)の記事ページ【右】「町報やくしま」(同)の表紙

 ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報などを紹介する冊子や動画の制作費に支出された問題――。

 この環境保全事業に使われた寄付金1700万円について、屋久島町が毎月発行する「町報やくしま」(20238月号)で、町の条例で定められた五つの使い道のうち、一番目の使途である「地域の環境保全」事業に支出したと、寄付者や町民らに報告していたことがわかった。実際の業務では、海底に潜水して清掃したのは計2時間のみで、1700万円の大半が観光ガイド冊子や動画の制作などに使われており、この事業への寄付金の支出が条例違反にあたる疑いが高まってきた。

町、競争入札なしでJTBパブリッシングと契約

 同事業は旅行大手JTBの出版部門を担う関連会社「JTBパブリッシング」(本社・東京)が企画を提案。同社は、競合他社との競争入札をすることなく、総事業費として1700万円を提示し、独占的に町と特命随意契約を結んで事業を実施した。
特別編集グルメ情報
屋久島町がJTBパブリッシングに制作を委託した観光ガイド冊子のグルメ情報ページ。「島のめぐみをいただきます」と題して、特定の飲食店を詳しく紹介している(モザイクは屋久島ポストが加工)

「地域の環境保全」にと希望の14千万円から1700万円を支出

 町が20238月に発行した「町報やくしま」によると、2022年度に全国から町に寄せられた「ふるさと納税」の総額は47313万円だった。そのうち寄付者が使途として「①地域の環境保全」を希望したのは14042万円で、町はそのなかから計3980万円を環境保全に関する事業に支出。JTBパブリッシングが請け負った海底清掃事業には、3980万円のうちから1700万円を振り分けた。

 また、記事本文では、全国から寄せられた寄付金は、一時的に「屋久島町だいすき基金」に積み立てられると説明。続いて、寄付金の使途については「寄附者の皆さんが選択する5種類の『使い道』に沿って、翌年度以降に基金を取り崩して、町の事業に活用しています」としている。
町報③
「町報やくしま」(2023年8月号)に掲載された「ふるさと納税」に関する記事の一部

町条例、寄付金の使い道として五つを規定

 その「だいすき基金」の五つの使い道は「屋久島町だいすき寄附条例」で詳細に規定され、2022年度は各使途に対し、使い道を指定しない寄付金も含めて以下の金額が寄せられた。

地域の環境保全  14042万円

子育てや教育  8555万円

人口減少への対策  680万円

地域の活性化を支援  1854万円

地域の消防・防災対策  489万円

事業を指定しない  21691万円

町報②
寄付者が希望した「使い道」別の寄付金額を紹介する「町報やくしま」(2023年8月号)の記事ページの一部

必要額を下回る使途には「事業を指定しない」寄付金を充当

 これら条例で定められた使途を踏まえ、寄付者は任意の金額を寄付する際に、自身が希望する「使い道」を指定。町は寄付者の希望に従って事業費を支出しているが、寄付金が必要額に達しなかった使途については、「事業を指定しない」寄付金から不足分を充当している。

 2022年度については、「③人口減少への対策」「④地域の活性化を支援」「⑤地域の消防・防災対策」に対する寄付金が必要額を下回ったため、以下のとおり、使途が未指定の寄付金から不足分を補った。

人口減少への対策
寄付680万円事業費8410万円(不足7730万円を補充)

地域の活性化を支援
寄付1854万円事業費4330万円(不足2476万円を補充)

地域の消防・防災対策
寄付489万円事業費800万円(不足311万円を補充)

「地域の環境保全」は1億円超の余剰金

 その一方で、「①地域の環境保全」「②子育てや教育」については、以下のとおり、寄付金が必要額を上回ったため、使途を指定した寄付金を使い切れなかった。

地域の環境保全
寄付1億4042万円事業費3980万円(余剰1億62万円)

子育てや教育
寄付8555万円事業費3710万円(余剰4845万円)

 いま問題となっている海底清掃事業で町は、①地域の環境保全」のために寄付された14042万円のなかから、総事業費の1700万円を支出。だが、実際には寄付者が希望した使途に反する形で、事業費の大半を観光ガイド冊子や動画の制作に使っており、町議会などで条例違反の疑いが指摘されている。
町報①
2022年度に「ふるさと納税」を活用して実施した主な事業を紹介する「町報やくしま」(2023年8月号)の記事ページの一部

屋久島ポスト「寄付者を裏切る支出」 町「条例違反ではない」

 条例違反との指摘について、同事業を担当する観光まちづくり課の有馬照幸・統括係長(2023年度当時・現同課長)は取材に、観光ガイド冊子などの制作は「④地域の活性化を支援」する事業だとして、「条例違反には当たらない」と主張。それに対し、屋久島ポストは「使途として『地域の環境保全』と指定された寄付金から事業費1700万円が充てられおり、寄付者の希望を裏切る支出ではないか」と指摘したが、有馬統括係長は重ねて「条例違反ではない」との認識を示した。

 同事業をめぐっては、総事業費1700万円の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報などを紹介する冊子や動画の制作などに支出されたほか、実際に海底で清掃した潜水時間が合計で2時間だったことなどが判明。その事態を受けて、屋久島町議会の渡辺千護町議は、この事業への寄付金の支出が条例違反に当たるなどとして、42日に住民監査請求を出している。

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