海底清掃問題

【視点】記憶と内輪に頼る屋久島町の「ざる監査」 屋久島町・海底清掃事業

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監査結果の決定書、監査過程の記録文書やメモを残さず記憶だけで作成

監査委員、町長や町と近しい弁護士に法的相談
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【上中】
屋久島町「ふるさと納税」のロゴ(町ウェブサイトより)【下】屋久島町役場

 住民監査請求で実施された監査で、町の監査委員が監査の過程を文書やメモで記録することなく、記憶だけを頼りに監査結果の決定書を作成していた――

 ふるさと納税の寄付金で屋久島町が実施した海底清掃事業に対する住民監査請求で、監査委員が事業を担当した観光まちづくり課への聴き取り結果や、法的な判断を仰いだ弁護士事務所からの助言などを文書やメモに残さず、公文書として保管していなかったことがわかった。屋久島ポストが町の情報公開制度を利用して、監査の過程がわかる関係文書の開示を求めたところ、一切の記録が残されていなかったのだ。

 つまり、荒木耕治町長から任命された2人の監査委員は、自分たちの記憶だけに基づいて、監査結果の決定書を作成していたということである。

監査委員「メモも記録も残していない」

 にわかに信じがたいことだが、町議会から選出された相良健一郎委員に確認すると、「メモは何も取らず、記録は残していない」と説明。さらに、監査委員事務局の職員も「記憶を頼りに決定書を作成したのではないか」と言うので、本当に監査の過程で一切の記録を残していないのだろう。

 実にいい加減な監査委員だが、見方を変えれば、「記憶力がいい優秀な人たち」とも言える。
決定書
監査結果の決定書に記載されたJTBパブリッシングの証言など(赤い囲みは屋久島ポストが加工)

業者への聴き取りでも記録なし

 そこで、2024530日付で出された監査結果の決定書を確認してみると、この事業で制作された動画について、こんな記述があった。

〈受注者であるJTBパブリッシングは「撮影した原素材に対して、長編用(通常)と短編用を個別に編集する必要があり、それぞれに所定の編集工数がかかっているから、製作費は2作品となっている。」と主張しており、請求人の主張にこれに反する明確な理由はない。〉

 これは住民監査請求をした渡辺千護町議が、この事業で制作された動画作品について、その支出が「不適切」だったとする主張に対する記述だ。

 動画は長編(10)と短編(4)2作品が制作されたとされ、1165万円の2本分として計330万円(税抜き)の制作費が支払われた。だが、実際に映像を確認してみると、単に長編をそのまま短く編集したものが短編となっており、長編と短編にそれぞれ165万円を支出するのは不適切だというのが、渡辺町議の主張だった。

 それに対し、監査委員は動画を制作したJTBパブリッシングの主張に寄りかかかる形で、渡辺町議の「主張にこれに反する明確な理由はない」と断じている。

 だが、JTBパブリッシングの主張を聴き取りした際に、何もメモや文書を残さずに、どうやって監査結果の決定書を記述したのか。渡辺町議の主張を否定する根拠となる業者側の重要な証言なのに、その内容を裏づける文書やメモなどの記録が残っていなければ、それが事実かどうかを確認することは不可能だ。


屋久島町がJTBパブリッシングに制作を依頼した動画の長編(上)と短編の2作品。町はそれぞれに165万円、2本分として計330万円(税抜き)を支払った

決定書の記載事実を立証する証拠なし

 町に対する監査なので、当然のことだが、監査委員はJTBパブリッシングの担当者に面会か電話をして、町を介することなく直接的に聴き取りをしなくてはならない。だが、その聴き取り調査を「誰が」「いつ」「どのような形」で行い、相手の担当者が「どのような発言」をしたのかが、メモや文書、または録音で残されていなければ、この決定書の内容が事実であると証明することはできない。

 もし仮に裁判所で、このJTBパブリッシング側の証言が事実か否かと問われたら、2人の監査委員は「記憶で書いたので、メモや文書などの証拠はありません」と回答するしかなく、決定書の内容が事実であると立証するのは極めて困難である。

「予定価格」未設定のミスも見落とし

 監査委員は、地方自治体の公金が適切に使われているかどうかをチェックする「監視役」で、首長や議会からは独立して存在する。人口25万人未満の市町村では2人が任命され、屋久島町では「識見を有する者」として朝倉富美雄氏、「議員」の相良健一郎町議が、それぞれ監査委員を務めている。

 その2人が監査の過程を公文書として残さず、記憶だけを頼りに監査結果の決定書を書いていた。

 また、この海底清掃事業に対し、定期監査も含めて2回の監査を実施していたにもかかわらず、町が法的に義務づけられた事業費の「予定価格」の設定を怠り、JTBパブリッシングの「言い値」で業務委託契約を結んでいたミスも見落としていた。

 さらには、今回の監査で法的な助言を求めた弁護士事務所が、実は荒木町長や町役場と近しい関係にあることもわかった。この事務所は、2019年末に発覚した荒木町長の出張旅費着服事件で調査や報道対応などを担当したほか、町営牧場で町職員が過重労働死した問題をめぐる損害賠償請求訴訟でも町の代理人を務めており、町とは「内輪の仲」なのだ。

 町を監視する監査委員が、町の利益を守る弁護士に法的な相談をする。こんな調子では、屋久島町では「ざる監査」が続いていると疑われても仕方がないだろう。

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