海底清掃問題

【Key Word】事業費1700万円支出の違法性を問う「住民監査請求」 屋久島町・環境保全プロジェクト

yakushima-post

地方自治法で住民に認められた制度
町監査委員、違法判断なら町長らに是正措置を勧告

監査結果に不服なら ➡ 住民訴訟へ
メイン写真

【左】海底清掃で回収されたごみの写真。屋久島町の委託業務として、業者が配信したウェブサイト記事に掲載されている(ocean+α「ふるさと納税で屋久島の海をきれいに! ダイバーたちが世界遺産の海を次世代に繋ぐ」より)【右】ふるさと納税の寄付金で屋久島町が制作した観光パンフレット「るるぶ特別編集 屋久島」の表紙

 ふるさと納税の寄付金1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とした環境保全事業に対する住民監査請求が42日、同町の監査委員事務局に提出された。請求された監査では、総事業費の大半が海底清掃ではなく、屋久島の魅力を伝える動画や観光パンフレットの制作に支出されたことが、ふるさと納税の寄付金の使途を定めた「屋久島町だいすき寄附条例」に違反しているなどとして、事業を進めた荒木耕治町長ら幹部3人に総事業費1700万円の返還を求めている。

財務会計上の行為が監査対象

 それでは、住民監査請求とはどのような制度なのか?

 地方自治体の長や職員による財務会計上の違法ないし不当な行為、または必要な行為を怠る事実があると認められた場合に、住民が請求できるものだ。地方自治法242で定められており、請求した住民は証拠書類を含めた文書を出し、監査委員に対し監査を求め、必要な措置を講じるように請求することができる。

請求から60日以内に監査を実施

 屋久島町には2人の監査委員がおり、提出された文書の内容を精査したうえで、請求が法的な要件を満たしていると判断された場合は、請求から60日以内に監査を行う。そして、請求の理由が認められた場合は、監査委員が荒木町長や町職員に対し、必要な措置を講ずるように勧告することになる。

総務省チャート
住民監査請求や住民訴訟などの手続き上の流れを示したチャート表(総務省ウェブサイトより)

請求可能な期間は「当該行為から1年」

 ただし住民監査請求には、その請求要件として一定の制限が設けられている。地方自治法2422では、「当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは、これをすることができない」と規定。住民が問題とする財務会計上の行為から1年が過ぎてしまうと、違法や不当であるか否かに関係なく、監査を請求することができないのだ。

町長交際費の監査、大半が1年経過で却下

 2022年に出された町長交際費の支出に対する住民監査請求では、この規定に従って、大半の請求が門前払いで却下された。荒木町長は特定の国会議員に対し、1回で数万円から10万円の高額な贈答を続けていた。だが監査の請求日が、それら交際費の支出日から1年を過ぎているとして、一連の贈答が違法かどうかの判断がなされることはなかった。

今回の請求は1年未満で問題なし

 その一方、今回の海底清掃事業に対する住民監査請求では、請求可能な期間となる「1年」は問題にならないとみられる。同事業が終了したのは2023331日だったが、今回の監査請求が出されたのは202442日で、実際に町が業務委託費1700万円を業者に支払った2023421日からは、請求可能な1年を経過していないからだ。
財務会計行為文書-14
屋久島町が総事業費の約1700万円を業者に支払うために作成した支出命令書。支払日は2023(令和5)年4月21日となっている(モザイクは屋久島ポストが加工)

監査結果、6月初旬までに報告へ

 この住民監査請求は近日中に受理される見込みで、遅くても6月初旬までには、監査の結果が報告されることになる。そして、監査結果に不服がある場合は、住民訴訟を鹿児島地裁に提訴することが可能になり、同事業への支出の違法性について司法の判断を仰ぐことができる。

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