経理職員に日給5万5000円、町が社会保険料や賞与なども負担 海底清掃事業/屋久島ポスト
オーシャナの労務単価、主任研究員に日給7万7000円などで人件費340万円
町「会社として従業員を雇用するために必要な経費」

屋久島町役場【写真上】ダイビング業者「オーシャナ」のロゴ(オーシャナ・ウェブサイトより)【同左下】屋久島町ふるさと納税のロゴ(町ウェブサイトより)
ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報などを伝える冊子や動画の制作費に支出された問題――。
この事業の2年目となる2023年度の予算で、「主任研究員」や「経理担当職員」などの人件費として計上した約340万円について、荒木耕治町長は3月の町議会一般質問で、事業を委託した業者側の労務単価に従って支出したことを明らかにした。この人件費には会社が支払う基本給や社会保険料、賞与なども含まれているとされ、荒木町長は「会社として従業員を雇用するために必要な経費だ」として、経理担当職員に支払った日給5万5000円についても、支出に問題はなかったとの認識を示した。
オーシャナ、総事業費1991万円で特命随意契約
同事業を請け負ったのはダイビングの専門業者「オーシャナ」(本社・東京都中央区)で、町は複数の業者が参加する競争入札を行わず、総事業費1991万円で同社と特命随意契約を締結。総事業費には、「主任研究員」「研究員」「経理担当職員」の人件費として、次の予算が計上された。
主任研究員:日給7万7000円×20日=154万円
研究員:日給3万3000円×36日=118万8000円
経理担当職員:日給5万5000円×12日=66万円
渡辺町議、特別職の専門家と比べて「極めて高額」
これらの人件費について、一般質問に立った渡辺千護町議は、町が特別職の専門家への報酬として、情報公開・個人情報保護審査会会長に日額1万8000 円、生活保護手当等嘱託医(内科・精神科)に日額1万5000 円を支払っていることなどを踏まえ、「極めて高額と言わざるを得ない」と指摘した。
荒木町長、国交省の専門家に対する労務単価を示す
それに対し荒木町長は、「人件費は受託事業者(オーシャナ)が社内での受託単価規定を定め、(各役職の)名称および金額を使い見積もった」と説明。そのなかには、オーシャナが支払う基本給や社会保険料、賞与なども含まれ、「会社として従業員を雇用するために必要な経費だ」としたうえで、特別職の専門家への報酬と「比較は一概にできるものではない」とした。
また荒木町長は、この人件費の算定基準について、国土交通省が発注する設計や測量、地質調査などの業務の積算に用いる「設計業務委託等技術者単価」が参考になると指摘。業務を統括する「理事、技師長」は日額7万400円、上司の指導で業務に当たる「技術員」は日額3万1600円であるとの例を示した。

海底清掃事業の人件費について答弁する屋久島町の荒木耕治町長=2025年3月11日、屋久島町議会、同町議会YouTubeチャンネルより
担当課長、主任研究員が有する資格や肩書は答えず
国交省が定める設計や測量などの専門家に対する労務単価が示されたことを受けて、渡辺町議は「(オーシャナが雇用した)主任研究員はどのような資格や肩書を持った人なのか」と質問。それに対し、観光まちづくり課の有馬照幸課長は「受託事業者が社内で受託単価を定め、名称および金額を用いているもので、研究の結果を求めているものではない」と述べるに留まり、主任研究員を務めたスタッフが有する資格や肩書については答弁を避けた。
経理に時給7000円は「出納業務を適正に行うため」
さらに渡辺町議は、経理担当職員の日給5万5000円について、「どのように計算をすれば、このような(高額な)金額になるのか、(担当課は)疑問を持たなかったのか。時給にすると7000円にもなる」と指摘し、経理担当職員の高額な人件費を問題視した。
答弁に立った有馬課長は、オーシャナに聴き取りをした結果として、「実務を行う社員の負担を軽減して、業務完了に向け、業務に一生懸命に取り組んでもらうために、出納業務を適正に行うために、(他の業務と)分けて人員の配置をして、会社としては責任ある職という認識で(日給5万5000円の)単価設定をした」と説明した。