屋久島町長交際費問題

【取材後記】町民の公費、司法判断がなくても適切に使える町役場に

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寄付者の希望を裏切る海底清掃事業、出張旅費不正精算事件、そして町長交際費の高額贈答

なぜ、町役場は町民の公費を不適切に使うのか?

屋久島町役場

 屋久島町政の取材を始めて10年になるが、つくづく思うのは、町民の公費を大切にしない町役場だということだ。

虚偽の水増し領収書、調査しないまま幕引き
 一連の出張旅費不正精算事件で町長は、普通運賃の航空券を空港で払い戻し、格安の高齢者割引で買い直して、差額の着服を100回近くも繰り返していた。また、副町長や町議会の議長らは、実際より高額な航空券代が書かれた虚偽の水増し領収書で精算し、余分に受け取った旅費を着服していた。さらに、水増し領収書は一般職員にも出回っており、この事件の被害総額は少なくとも約250万円にもなった。

 虚偽の金額が書かれた領収書で、町民のお金が無駄に使われていたのである。本来であれば、水増し領収書が発行された経緯を調査して、再発防止策を講じるべき事態だ。だが、町役場も町議会も、さらには町の監査委員も、水増し領収書が発行された経緯を調べることなく、問題の核心をうやむやにしたまま、この事件に幕を引いてしまった。

屋久島町の一般職員が不正精算に使っていた虚偽の水増し領収書。町は職員名を黒塗りにして屋久島ポストに開示した(※モザイクは屋久島ポストが加工)


町長、国会議員1人に60万円で焼酎180本など贈答

 町長交際費の取材では、国会議員や鹿児島県知事らに高額な贈答が続けられていたことが明らかになった。屋久島町も含まれる鹿児島4区の衆院議員には、5年間で焼酎180本やイセエビなどの魚介類を贈り、その総額は60万円超にもなっていた。だが、町長は「社会通念上妥当と認められる額の贈答だった」と言い張り、交際費に関するルールを見直そうとはしなかった。

 そこで、この問題を追及する町議が住民訴訟を提起し、支出の違法性について町と争う事態になった。裁判の結果は、住民訴訟の前提となる住民監査請求がなされたのが、法的に請求が可能な交際費の支出日から1年を経過しているとして、町議の敗訴だった。だが、住民訴訟が提起されたことで、国会議員らへの贈答はなくなり、最高で年126万円だった交際費の支出は、なんと年16万円にまで減った。

屋久島町長が交際費で国会議員らに贈っていた焼酎やイセエビなどの贈答品

事業費1700万円の海底清掃事業で潜水2時間のみ
 そして今、最も問題となっているのは、町が2022年度に実施した海底清掃事業への支出である。ふるさと納税の寄付金1700万円を使って、海底に溜まったごみを清掃したというのだが、その詳細を取材してみると、実際に海底に潜って活動したのは計2時間だけで、回収したごみの総量も報告されていないことがわかった。

 それでは、全国から寄せられた1700万円の寄付金は、いったい何に使われたのか?

 そんな疑問から事業の実施報告書を見ると、総事業費1700万円の大半は、屋久島の観光情報を伝えるガイド冊子と動画の制作費に使われていたことが明らかになった。この事業に使われた寄付金は、寄付者が使い道を「環境保全事業」と指定したうえで、町に託した浄財だ。それにもかかわらず、総事業費の大半を観光ガイドの冊子や動画の制作費に使ってしまい、事業の主目的である海底清掃を実施したのは2時間のみだったのである。

 これでは、表向きは「環境保全事業」をやるように見せかけて、実際には「観光広報事業」を実施したことになる。そして、この事業に使われた寄付金の使途が「環境保全事業」と指定されていたことを踏まえると、町は寄付者の希望を裏切るかたちで事業費を支出したことになる。

環境保全事業に使途が指定された寄付金を使い、屋久島町が制作した観光ガイド冊子の一部

町役場、公費は「空から降ってくるお金」と思っているか?
 この海底清掃事業についても、町長交際費の問題に続いて住民訴訟が提起され、鹿児島地裁で支出の違法性が審理されているが、どうして町は寄付金を不適切なかたちで使ってしまったのか?

 その答えは、「町役場が町民の公費を大切に使っていない」ということに尽きるだろう。町民の税金、国の交付金、全国からの寄付金など、毎年、町には多額のお金が入ってくるが、町役場はこれらの公費を「空から降ってくるお金」とでも思っているのではないか。

 出張旅費不正精算事件や町長交際費、そして海底清掃事業。どの問題を見ても、自分が一生懸命に働いて得たお金であれば、あれほど不適切な使い方はしなかったはずだ。海底清掃については住民訴訟が続いているが、司法の判断を仰がなくても、適切に公費が使える町役場になってほしいものである。

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