憲法14条「法の下の平等」に反する屋久島町議会の判断【議会取材の自由を守る訴訟】
石田尾議長「屋久島ポストは報道ではない」→ 補助金不正請求事件、屋久島ポストの報道で国が町に1668万円の返還命令
「屋久島ポストの活動は報道そのもの」

なぜ、フリーランスやネットメディアなどの記者が議会で取材することを拒否するのか?
その一方、なぜ一部のマスコミだけには特別に取材許可を出しているのか?
そんな屋久島町議会(石田尾茂樹議長)が下した判断の違法性を問うために、屋久島ポストは5月17日、町議会を町の意思決定機関として所管する屋久島町(荒木耕治町長)を相手取り、「議会取材の自由を守る訴訟」を提起しました。
屋久島ポストが訴える主張の根幹は憲法違反です。
そのなかから、この記事では「法の下の平等」を保障した憲法14条を踏まえて、私たちが訴状に記した主張を伝えます。
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憲法14条が保障する「法の下の平等」に抵触
地方議会について、地方自治法115条1項は「普通地方公共団体の議会の会議は、これを公開する。」として、原則として各地方自治体の住民が自由に傍聴できると定めている。この規定を踏まえて、屋久島町議会は同議会傍聴規則の9条で、「傍聴人は、傍聴席において写真、映画等を撮影し、又は録音等をしてはならない。ただし、特に議長の許可を得た場合は、この限りでない。」と定めて、議長判断によって撮影と録音を許可するとしている。
一般市民の社会的身分や職業を否定
この傍聴規則に基づき、石田尾茂樹議長は、マスコミ各社には議会での取材(撮影と録音)を許可する一方で、屋久島ポストの共同代表である鹿島幹男と武田剛の取材は禁止している。その理由として、石田尾議長は、屋久島ポストの取材は「報道とは認められない」という趣旨の主張をしているが、これは一般市民の社会的身分や職業を否定するものであり、住民代表が集う町議会の議長としては、あるまじき判断である。
国を動かす屋久島ポストの報道
屋久島ポストの活動が「報道」であるか否かは、その一例として、2021年11月9日に初報を出した国庫補助金不正請求事件の経緯をみれば明らかである。初報があった翌10日には、屋久島ポストの報道を追うかたちで南日本新聞が同様の記事を掲載し、その後に屋久島町は虚偽の工事実績報告をしていたことを国と鹿児島県に報告した。さらに、屋久島ポストが50本以上の続報を配信したのち、厚生労働省は2022年3月15日に約1668万円(補助金と加算金)の返還命令を同町に出す結果となった。
■記事:厚労省が補助金適正化法違反を認定http://blog.livedoor.jp/yakushima_post/archives/28896288.html
これらの経緯と結果を踏まえれば、屋久島ポストの活動は報道そのものであり、その後に続く各種報道の成果からも、屋久島ポストはマスコミの報道機関と同等または、それ以上の取材力を有しているといえる。
それにもかかわらず、石田尾議長は、屋久島ポストは「報道とは認められない」と断じているが、これは屋久島ポスト共同代表の社会的身分や職業を否定し、差別的な扱いをしていることに他ならない。

屋久島町役場
石田尾議長の判断は不当な差別
憲法14条1項は「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と定めている。しかしながら、屋久島ポストに対する石田尾議長の判断は、マスコミを優遇する一方で、屋久島ポストの記者を不当に差別するものであり、憲法14条が保障した「法の下の平等」に反するものである。さらには、石田尾議長によって、屋久島ポストの共同代表は自身の職業を否定されたことにもなり、これが「職業選択の自由」を保障した憲法22条に抵触することも明らかである。
記者クラブに対する取材許可は「例外的に正当化」
なお、全国の地方議会では、マスコミ各社が所属する記者クラブの加盟社に限定して議会取材の許可を出している例もあるが、それは傍聴席の数に限りがあるなどの事情を踏まえて、例外的に正当化されているものである。屋久島町議会には20席ほどの傍聴席があるが、通常は「ガラ空き」の状態であり、屋久島ポストの取材を禁止する合理的な理由はないといえる。
違憲か否かを判断する場合、「厳格な合理性」が審査基準とされているが、屋久島ポストに対する議会取材の禁止には合理的な理由は一つもない。よって、このことからも、石田尾議長の判断が憲法14条に抵触する差別的なものであったことは明らかである。