屋久島町、労働時間の管理監督責任を認める方針 町営牧場 過重労働死訴訟/屋久島ポスト
町、週40時間の勤務記録「十分信用できる」と過重労働を否定 → 和解案の提示前に一転「町に管理監督の責任があった」
遺族、時間外労働「月100時間超で年中無休の状態だった」

【上左】屋久島町営牧場で公務中に亡くなった田代健さん=遺族提供【上右】職員が過重労働で死亡した町営長峰牧場の衛星写真=Google Earthより【下】屋久島町役場=屋久島ポスト撮影
2019年8月に屋久島町営の長峰牧場で町職員だった田代健さん(当時49)が公務中に死亡し、過重労働で心筋梗塞を発症したことによる公務災害と認定されたことを受けて、田代さんの遺族が屋久島町(荒木耕治町長)を相手取り、約7000万円の損害賠償を求めた民事訴訟――。
この訴訟で被告の町が、田代さんの労働時間を管理監督していなかった責任を認める方針であることが、町総務課への取材でわかった。
これまで町は、町役場内で保管する週40時間の勤務記録は「十分信用できる」として、「過重労働はなかった」と主張。これに対し原告の遺族は、町の勤務記録は実際の労働時間より短く改ざんされたもので、田代さんの時間外労働は「月100時間超で年中無休の状態だった」と反論していた。
鹿児島地裁は10月中に和解案を示す予定で、町に一定の管理監督責任があったと判断するとみられる。これを受けて、町の代理人弁護士は「これまで管理監督の責任は明確な争点ではなかった」と説明しているという。

屋久島町営牧場の過重労働死訴訟が審理されている鹿児島地裁=屋久島ポスト撮影
町代理人「管理監督責任は明確な争点ではなかった」
町総務課によると、町は賠償責任を一貫して否定してきたが、地裁から和解案を示す旨の打診があったことを受けて、一転して提示を受け入れることを決定。10月中に示される和解条件を検討したうえで、和解案に応じるか否かを検討するという。
和解案の提示を受け入れる理由について、町総務課は「労働時間の管理監督の部分については、町に一定の責任があったと判断している」と説明した。これに対し、屋久島ポストが「当初から町は管理監督責任を全面的に否定していたが、方針を転換したのか」と質問。同課は代理人弁護士の話として、「これまでの訴訟審理で、労働時間を管理監督する責任は明確な争点ではなかった」と答えた。
町、公務災害で認定の長時間労働を否定
これまで町が地裁に提出した準備書面によると、田代さんの同僚職員が作成した勤務記録について、町は「確たる資料もない中で約2年経過後に作成されたもの」と指摘。さらに、公務災害の認定を受けるために「潜在的に勤務時間を伸長して記載する心理が働いていた可能性も否定できない」として、「信用性に欠ける」と主張していた。
また、実際の労働時間とは関係なく、町の指示で労働時間が週40時間とされた勤務記録について、町は「正にその当時において作成されたもの」だとして、「その内容は十分信用できる」としていた。
遺族、町の勤務記録は「1日6~7時間に改ざん」
一方で遺族は、同僚職員の証言として「月の時間外労働は100時間超で、週休2日どころか、年中無休の状態」だったと説明。さらに、町の担当係長から「労基法に触れるので、作業日報を雇用契約通り(週40時間)に書き直して欲しい」と指示されたことを受けて、労働時間を「1日6~7時間」に改ざんしていたと反論していた。
加えて遺族は、公務災害を認定した地方公務員災害補償基金の鹿児島県支部(支部長・塩田康一県知事)が「(町が)当時の長峰牧場の勤務実態を正確に把握していたとは考えがたい」としたうえで、日々の業務に従事していた同僚職員が作成した勤務記録の方が「実態に近いものと考えられる」と認定していると指摘。労働時間を週40時間に改ざんした町の勤務記録について、「十分信用できる」とする町の主張は「失当」だと訴えていた。
