【取材後記】尊い命、町長交際費と旅費着服額で救えた 屋久島町営牧場 過重労働死問題

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増員要請に課長「予算がない」
牧場職員、独り作業の間に心筋梗塞で死亡

発症後、7時間以上にわたって放置 医療処置 受けられず

取材後記20230924③
町職員が独り作業中に亡くなった屋久島町営長峰牧場(グーグルアースより)

 町営牧場の職員は「仕事がきついので、職員を増やしてほしい」と頼んだが、しかし。

 町の担当課長は「予算がなくて、すぐには無理だが、考えておく」と答えた。

 それから約4カ月後、その職員の同僚は過重労働が原因で心筋梗塞を発症し、公務中に死亡した。課長と交渉した職員が病欠し、広大な牧場で独り作業をしている最中だった――。

職員、無休50日 時間外労働81時間でも月239000円の固定給

 20198月に屋久島町営の長峰牧場で男性職員(当時49)が過重労働で亡くなってから、すでに4年の歳月が流れた。

 今年2月には公務災害が認められ、町が牧場職員の労働管理を一切していなかったことも判明した。亡くなる3日前までの労働は連続で約50日間もあり、発症前1カ月間の時間外勤務は約81時間。さらに、休暇の取得状況として記録された休日数は、亡くなるまでの半年間でわずか5日だけだった。

 そして、職員と町が結んだ雇用契約書には、時間外労働に関する規定はなく、職員がどんなに長時間の労働をしても、月給は239000円の固定給だった。

荒木町長、年100万円の交際費で高額贈答

 荒木耕治町長が続ける高額贈答をめぐる住民訴訟の取材をしていると、牧場職員の増員要請に対し、課長が「予算がない」と答えたことが信じられない。

 荒木町長は年100万円の町長交際費を自由に使い、国会議員や知人社長らに高額な贈答を繰り返していた。多い時には1件の贈答で約10万円を支出し、焼酎60本や屋久杉万年筆・ボールペンセットなどを贈り、「屋久島産品のPR」をしていたという。

出張旅費不正では着服200万円

 そういえば、職員が亡くなったのと同じ2019年の12月議会では、荒木町長が出張で普通運賃の航空券を払い戻し、高齢者割引で買い直して、その差額を着服していた疑いが指摘された。当初、荒木町長は高齢者割引の利用を完全否定したが、報道などに押される形で、一転して認めたうえで、町議会での虚偽答弁も謝罪した。

 そして、その後の調査で、荒木町長が着服していた総額は約200万円だとわかった。

尊い命を奪った独り作業

 町長交際費の100万円に旅費着服額の200万円を加えると、ちょうど300万円。その一方、亡くなった職員の月給239000円に1年分の12カ月を掛けると、300万円より低額の2868000円になる。

 つまり、町長交際費と旅費着服額の300万円で、もう一人、牧場職員を雇用できたということである。

 職員は心筋梗塞を発症したのち、7時間以上にわたって医療処置を受けられないまま放置され、発見された時には、すでに死後硬直の状態だった。もし、もう一人、一緒に作業する同僚の職員がいれば、すぐに救急搬送をして、尊い命が救われた可能性があったことは、言うまでもない。

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